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ようやく消費税増税法案の国会審議が始まった。しかし、それを成立させることは至難の業であり、審議が順調に進むかどうかも予断を許さない。また、国会内の動き以上に、国民世論は消費税増税に一段と厳しさを増している。国民世論には、消費税増税に突進する野田佳彦政権にさまざまな異議がある。なかでも次に挙げる6つの異議は、野田首相の進撃に大きく立ちはだかっている。
(1)日本経済、現状の景気は、5%の消費税率アップに耐えられない。
それどころか個人消費を冷え込ませ景気を一層悪化させる恐れがあり、価格に転嫁できない中小零細事業者に致命的な打撃を与えかねない。そうなれば、消費税増税によって、逆に税収減をもたらす可能性も高くなる。
民主党政権が打ち出した“新成長戦略”はちょうど2年を経て「9割は成果なし」の厳しい自己評価をせざるを得なくなっている。これでは、成長には無関心、少なくとも二の次になっていると言われても仕方あるまい。野田政権、とりわけ財務省は、97年の消費税増税の2匹目のどじょうを狙っているのではないか。すなわち、大震災復興特需と駆け込み需要の2つの特殊要因による景気の一時的浮揚である。
確かにこの2つの特殊要因の景気浮揚効果は、大震災(阪神・淡路と東日本)の規模の違いや、税率アップの大きさ(97年は3%から5%)によって、97年を上回るかもしれない。しかし、「山高ければ谷深し」の例え通り増税後の落ち込みは、97年4月以降とは比較できないほど激しくなることも予想される。
今回の法案には、増税の条件として「経済状況の好転」が明記されている。また、名目成長率3%、実質成長率2%の数値目標も書き込まれた。だが、この数字は“努力目標”と明記されているから、政府は法的制約を受けない。「努力したが達成できなかった」と言えば許されることになっている。
(2)行政改革、「税金の無駄使いの排除」が後回しにされている。
この際の行政改革は、機構改革ではなく、公務員総人件費の削除や天下りの根絶などによる「官のリストラ」である。増税という給油を求めるなら、その前におびただしいガソリン漏れを直すのが当然ではないか。行革の成果を増税の決定に先行させなければ国民的理解は決して得られない。世論調査で多くの人が増税の必要性を認めつつも、今回の法案に賛成しない理由はそこにある。
世論に押されてか。岡田克也副総理は5月1日、私的懇談会として「行政改革に関する懇談会」を立ち上げ、「土光臨調」を目指すと意気込んでいる。「土光臨調」は法律により設置され、会長の土光敏夫は、首相に厳しく答申の完全実行を迫った。今回の懇談会では、まず「行革の必要性」を議論するという。これでは誰でも本気を疑うだろう。
(3)何のための増税なのかが明確でない。
野田政権は「税・社会保障の一体改革」の一環としての消費税増税だと言うが、その具体的な全体像は示されていない。これは家の設計図を示さないで建築費を求めるに等しい。特に、民主党が公約した「最低保障年金」はどうなるのか。この点に関して自民党は協力の条件として野田政権に「最低保障年金制度など社会保障改革案の撤回」を迫っているが当然だ。土壇場まで待って撤回する気でいるなら、それこそ両党が仕組んだ猿芝居と言われるだろう。
(4)今回の消費税増税は明らかに民主党の公約違反。しかも最重要公約の違反である。
5月8日の衆議院本会議で自民党の大島理森副総裁は「公約違反の増税」と断じたが、それが国民の声である。09年の総選挙で民主党に投票した人の大半は「消費税増税の前に徹底した行革を断行する」ことを信じた。それが政権交代の決め手になったと言ってもよい。特にその公約を強調したのは他ならぬ野田首相であった。総選挙の際の野田演説は既に明らかになっている。
「鳩山さんが4年間消費税を引き上げないと言ったのは、そこなんです。シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです。徹底して税金のムダ使いをなくしていく。それが民主党の考えであります」首相は、自ら公約に反していることを必死に弁明している。しかし、約束の一方の当事者である有権者が公約違反と認めているから、いかなる弁明も成り立たない。
(5)先に総選挙で民意を問うべきではないか。
しかも、@公約違反の法案、A「政治生命を賭ける」ほどの重要課題、B参議院選で拒否された政策、などを考えるとなおさらである。首相は財務相就任(10年)直後の毎日新聞のインタビューでこう断言している。
「国民に負担を求める時には、総選挙の前に示すことが望ましい」こんな場当たりの発言が政治への不信を募らせている。「民意を問うてから決める」のではなく、「決めてから民意を問う」不誠実は、首相や財務省が世論を信じていないからだろう。
しかし、今の世論は自民党や民主党のバラマキと疑われる政策に8割に及ぶ人たちが同調しない。最近の世論調査では、「原発がなくなっても電力の使用制限にがまんできる」と答える人が4分の3にも達している。世論は政治家や官僚よりも賢明になっているのだ。多くの人は既に行革など前提条件が満たされ、政策決定手続きに納得できれば、消費税増税を受け入れる覚悟もできている。万が一、消費税増税法を成立させることができたとしても、怒り心頭の有権者は、総選挙でその法律の凍結を主張する勢力に加担して振り出しに戻させるに違いない。
(6)なぜ大震災対応に総力で取り組まなければならない今、消費税増税を最優先の課題としているのか。この際、政治生命を賭けるべきは消費税増税ではない。大震災と原発事故への対応である。復旧、復興、被災者への支援の迅速化。原発災害の拡大阻止。新しい原発の安全基準、エネルギー基本計画の策定。この夏の電力需給はどうなるか。
復興庁の行政も軌道に乗らないし、規制庁は発足すらしていない。このような事態は昨年から懸念されていたことだ。こんな国家的危機の真っ只中にあって、政権が消費税増税に血眼になることが許されるのか。諸外国の人たちからすると理解に苦しむだろうし、何よりも後世の人たちからは強い怒りを買うことになる。
野田首相は、自己実現、功名心、政局などの余計なことを度外視して、歴史の大局に立つべきである。これら世論の6つの異議は小手先では片付けられないほど強く激しい。
http://diamond.jp/articles/-/18
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