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小沢抹殺で法務官僚が謀った大司法省計画 / 捜査資料流出の裏に「検察の暗闘」 『サンデー毎日』5.27号
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2012-05-16 来栖宥子★午後のアダージォ
小沢抹殺で法務官僚が謀った「大司法省計画」 スクープ 捜査資料流出のウラに「検察の暗闘」 『サンデー毎日』5.27号
「黒に近いグレー」とさえ評された無罪判決から2週間---。大方の予想を覆して“剛腕”は控訴された。この事態を予見して牽制するかのように、連休中には捜査報告資料が流出。見えてきたのは内ゲバに励み、法務省の権限強化に突き進む司法官僚たちの正体だ。
▼官邸周辺が流していた「控訴確定」情報の不可解
〈序段 略=来栖〉
大室俊三弁護士らは記者会見で「当日の朝まで悩んで決めた。政治的圧力はなかった」と説明したが、前日の夕方には「控訴確定」との情報が永田町を駆けめぐった。
「官邸側から流れたとみられます。ある民主党幹部が最高裁側に『小沢裁判が続くのでよろしく』と伝えたというのが根拠でした。このため、民主党関係者が控訴決定に影響を与えた可能性が浮上したのです。もっとも指定弁護士は判決後から控訴に前向きな考えを周囲に語っていたので、それを聞きつけて観測気球を打ち上げたのかもしれませんが、何とも不可解なリークでした」(政府関係者)
圧力は本当になかったのか。真相は闇の中だが、いずれにしろ小沢氏の法廷闘争は続くことになる。ネットに流出した陸山会事件の資料は石川氏の反訳書だけではなく、捜査報告書が恵通あった。精査すると、指定弁護士の執念さながら、小沢氏を法廷に引きずり出すため検審を必死に誘導した東京地検特捜部の姿が浮かび上がる。
■暴かれるか! 司法の暗躍
捜査報告書は、検審が2010年4月に1回目の「起訴相当」を議決した後の再捜査をまとめたもの。チャートや表も駆使している。反訳書を読むと、石川氏を再聴取した田代政弘・元特捜検事による捜査報告書にある「検事から『11万人の選挙民の支持で議員になったのに、嘘をつけば選挙民を裏切ることになる』と言われたのが効いたという証言はウソ--つまり、実際にはなかったことが分かる。
石川氏ら元秘書との共犯について、再捜査を踏まえた証拠を評価した計21枚の捜査報告書は、当時の斉藤隆博副部長が作成して佐久間達哉部長に提出された。小沢氏や石川氏の供述部分などにアンダーラインが引いてあり、ポイントが分かりやすく示されている。
ほかには▽検審議決の分析▽想定される小沢氏の弁解の検討▽不合理で不自然な小沢氏の供述▽土地の購入に充てた4億円の出所---という内容。おしなべて小沢氏に風当たりが強い。6通とも検審に提出され、10年9月の2回目の「起訴相当」議決で一部が引用されている。
ただし捜査報告書は検審だけでなく、指定弁護士から小沢氏の弁護団に公判の過程で渡っている。流出前から1部の国会議員やマスコミも入手しており、必ずしも機密性が高いとはいえない代物だ。では今回、誰が何の目的で流したのか。
本誌が掴んだ出所は、東京地検より上級庁の某幹部だ。背景には小沢氏の捜査報告書を巡るカラクリがあるという。検察関係者が声を潜める。
「実は捜査報告書が、同じテーマでも提出先に分けて2種類作られていたのです。上級庁の判断を仰ぐための検察内部向けには、小沢氏に関して共犯という見方を弱めたトーンで作成されました。これで特捜部は再捜査でも不起訴と結論づけられた。しかし、検審に渡った分は小沢氏にとって厳しく、強制起訴の判断が出やすく仕上げられていました」
耳を疑うような、“情報操作”がまかり通っているというのだ。さらに、
「最高検上層部は検審向けの捜査報告書をほとんど見ていません。笠間治雄検事総長は、流出後に見て仰天したとされています」
捜査報告書の使い分けで浮上しているのは、検察内部での暗闘だ。法務省幹部が打ち明ける。
「法務・検察の主流は、東大法学部卒で法務省経験が長い“東大赤レンガ派“”です。一方で笠間氏は中央大卒で、戦後初の私立大出身の総長。法務省に在籍した経験もないため、あくまでも傍流です。2種類の捜査報告書を作らせたのは、赤レンガ派。“笠間は外し”と並行しながら小沢氏の強制起訴を主導したことになります。でっち上げの報告書を作った田代元検事は“トカゲのしっぽ切り”で、人事上の処分で済まされる見通しです。対して、組織の自浄作用を働かせようとする笠間氏周辺の検察幹部は納得していない。主流はの行動を含めたすべてを白日の下にさらそうと資料を持ち出した形跡があります」
ただ、今回の流出はロシアのサーバーを経由していたことが判明している。上級庁の検察幹部が単独で敢行できるほど知識があるとは考えづらい。ネットセキュリティーの専門家が解説する。
「資料ファイルはハッカー用のツールを使って流出元の痕跡が消されています。日本の捜査機関ではとても特定できないでしょう。明らかにプロの仕事であり、間違いなく外部に協力者がいるはずです」
捜査報告書を書き分けてまで、小沢氏を強引に公判に引っ張り込んだ法務・検察の主流派。中心にいたのが、次期検事総長と目される小津博司・東京高検検事長と、黒川弘務・法務省官房長だったと囁かれている。
「小津氏は、退任が近い笠間氏を尻目に検察組織の防衛を進めています。黒川氏は小津氏の側近で、最高裁側に小沢氏や小沢グループ議員の悪評を吹き込んでいるようです」
■弁護士を監督して法務省の権力拡大
2人が恣意的に小沢氏の排除を図ったのなら、動機は何か。解明の鍵を握るのは「日本司法支援センター」、通称「法テラス」だという。法テラスは、法務省が所管する独法に準じる組織で、政府が全額出資する。(略)
「理念自体は市民にとって聞こえが良いですが、法務省が弁護士を監督することで事実上の傘下に収める制度です。まるで戦前の旧司法省のように強大な権限を持つことに繋がるため、業務が始まった当時から根強い批判を浴びています」
大司法省計画---。法テラスを推進した法務省の中枢には、小津氏と黒川氏も官房長や大臣官房参事官、司法法制度課長などで入っていた。民主党が09年衆院選で政権交代を果たした頃、小津氏は事務次官、黒川氏は官房審議官だった。
「官僚の統治構造刷新を訴えていた小沢氏が実権を握れば、司法改革にメスを入れる事態は容易に想像できます。官僚には何事も先手を打って対応したがる習性があります。危機感を共有した二人が、小沢氏を政治的に抹殺すれば大司法省への道を邪魔されずに済むと考えても不思議ではありません」(前出・法務省OB)
▼流出第2弾「捜査メモ」に登場する「大物国会議員」
小沢捜査から見えてきた司法・検察の暗闘と思惑。今後も陸山会事件に関係する資料は表に出てくるのか。最高検関係者が重要な証言をする。
「別の検事の報告書や捜査メモなど、流出した文書はもっと多かったようです。今後も暴露が続くようなら、政界も揺らいで大混乱に陥るでしょうね」
本誌は検察内部から出たとみられるメモの一部を入手した。ネット流出の第2弾になる可能性が高まっているのは、西松建設の偽装献金事件に絡んだ自民党と民主党の「議員リスト」だ。既に引退した議員も含まれているので、11人の現職大物議員だけをイニシャルで列挙しよう。
〈西松関係者から適法ではない形でカネを渡したとの証言があった自民党議員〉――N、M、K、H
〈自民党以外で捜査メモに名前がある議員〉――Y、J
〈事件性は薄いが政治団体に寄付があった議員〉――K、Y、Y、K、F
カネを受けた4人のうちH議員は「捜査報告書が存在する」と記入されているが、M議員とK議員については「捜査せず」とある。小沢氏の側近議員が言う。
「小沢氏潰しのためにしつこく捜査しても立件できないと見るや、今度は検審を都合よく使って公判に持ち込んだわけです。他の政治家には疑惑があるのに何の捜査もされていないのであれば典型的な国策捜査、つまり政治家、“抹殺捜査”ではないでしょうか」
捜査資料の流出で法務・検察の内ゲバと深謀遠慮が同時に暴かれた。もっとも迷惑しているのは、小沢氏ほか永田町の面々かもしれない。
本誌・鳴海 崇
◇
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サンデー毎日のスクープ記事!「捜査資料流出のウラに検察の暗闘」&「捜査メモ」が流出第2弾になるか?
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