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小沢控訴で今後の政局はどう動くか〔PHOTO〕gettyimages
小沢控訴は野田政権には追い風。増税の可能性は強まり、解散は遠のいたとみる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32522
2012年05月11日(金)長谷川 幸洋「ニュースの深層」 :現代ビジネス
政治資金規正法違反の罪で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表を無罪にした東京地裁判決に対して、検察官役の指定弁護士が控訴した。この後、政局はどう動くのか。
控訴についての見方を先に明らかにしておきたい。私は、この控訴がどうも納得できないのだ。
小沢は国民から選ばれた検察審査会が「起訴すべきだ」と議決したのを受けて、指定弁護士が強制起訴した。起訴を決めた「主役」は検審であって、指定弁護士はいわば検審の「代理人」である。
小沢は一審の裁判で無罪となった。起訴を決めた検察審査会が無罪判決を不服として「控訴すべきだ」というなら、まだ分かる。しかし、検審の代理人にすぎない指定弁護士が、主役の検審をさしおいて、どうして控訴できるのか。
検審制度は検察官が不起訴と判断した場合について、素人である国民の目で再チェックさせようという趣旨であるはずだ。強制起訴を決めた東京第5検察審査会の議決要旨(2010年9月)も「国民の責任において、公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度であると考えられる」と述べている。
そんな制度の趣旨から考えれば、無罪判決から控訴に至るプロセスで、もう一度「国民の目」が入っているなら理解できるが、いきなり代理人が主役にとって代わって決めてしまうのは乱暴ではないか。
普通の裁判だって検察が控訴するときは、高検や最高検の上級庁に相談する。それを、今回は3人の指定弁護士だけで決めている。主役の国民はどこかに消えてしまった。
こう言うと「もう一度、検審を開いて意見を聞いていたら、控訴期間が過ぎてしまう」とか「3審制や法にのっとった正当な手続き」とか異論が出そうだ。私は法律の素人なので、法制度の詳しい中身とか技術的問題についてはよく分からない。
ここで言いたいのは、そんな細かい技術の話ではない。主役の国民をさておいて代理人たる指定弁護士が控訴するという事態が、そもそも「国民の目でチェックする」という根本の制度の趣旨に沿っていないのでないか、という点である。致命的な制度の欠陥ではないかと思う。
中には「悪法も法だから、これでいいんだ」という立場もあるかもしれない。私はそう思わない。正統性に疑問がある制度に悪のりして、一審で無罪判決が出た人を簡単に控訴すべきではない、と考える。
それでなくても、今回の小沢裁判では検察官によるデタラメ調書が暴露された。これこそ、とんでもない話だ。政治資金報告書に期ずれがあったどころの話ではない。もっと重大な問題になんら決着がついていないのに、控訴とあっては裁判自体がデタラメという印象が広がりかねない。「暗黒裁判」という言葉さえ脳裏に浮かぶ。
以上の趣旨は昨夜のツイッターでもつぶやいた。しっかり記事にしたほうがいいと思ったので、ここに書いた。言うまでもなく、私に小沢を擁護する意図はさらさらない。
■野田が丸飲みすれば、解散しなくてすむ
さて、小沢控訴で政局はどう変わるのか。結論から言えば、消費税引き上げを目指す野田佳彦政権には追い風になる。敵の求心力が衰えれば、味方が勢いづくのは当然だ。
自民党の谷垣禎一総裁は小沢控訴を受けて、消費税引き上げの対案路線を一時棚上げし、野田に「小沢切り」を迫っている。だが、これはいずれ行き詰まるだろう。なぜなら国会は本来的に政策を審議する場であって、他党の党首に所属議員の除名を迫るような場ではないからだ。ひと言で言えば、攻め筋が悪い。
それでなくても自民党は消費税の10%引き上げに賛成している。初めの1回や2回の質疑なら「解散しろ」とか「小沢を切って、けじめをつけろ」とか主張できても、野田に「そもそも増税をどう考えるのか」と切り返されたら、議論に応じないわけにはいかない。国会議員は政策を議論して決めるためにバッジを付けているのだ。
すると、いずれ対案を出すか、野田内閣が提出した法案の修正を求めるしかなくなる。時間の問題である。そこで野田が対案もしくは修正要求を丸飲みすれば、そこで終わり、増税法案成立である。
解散はどうなるか。自民党は解散を要求するだろうが、野田は応じないだろう。なぜか。解散する理由がないからだ。「私たちは自民党の政策を丸飲みして、これから実行するんですよ。なんで途中で辞めなくてはいけないんですか」と言われれば、返す言葉がない。増税実現、解散回避で野田の完勝、谷垣の全面敗北である。
そうと分かっているから、谷垣は小沢控訴を口実に対案作戦を棚上げした。谷垣は対案作戦を最後の瞬間まで懐にしまっておくべきだったのだ。だが、いったん表に出てしまった以上、いまとなっては後の祭りである。舞台裏が見えてしまったから、表で演じられるのは三文芝居のようになってきた。
野田が自民党の対案もしくは修正要求を丸飲みしようとすれば、小沢グループその他の反増税派ないし最低保障年金創設のようなマニフェスト重視派は徹底抗戦するだろう。だが「野田が丸飲みすれば、解散しなくてすむ」という構図がはっきりすれば、どうか。どこまで抵抗するか微妙である。
■増税ありが50%、解散なしが80%
小沢が絶対に譲れない最後の一線は「解散阻止」であって「増税阻止」ではないようにも見える。小沢控訴で9月の代表選立候補が難しくなり、離党して新党旗揚げも難しいとあっては、現状維持以外に選択肢が見当たらない。そもそも小沢は自民党の森喜朗元首相が指摘しているように、もともと増税に絶対反対ではなかった。
一方の自民党。
谷垣は「解散を約束しなければ増税に賛成しない」立場だが、森は解散がなくても増税を容認している。増税法案を審議する衆院特別委員会の自民党筆頭理事に伊吹文明元幹事長を推したのは森、といわれている。森・伊吹ラインは「解散なし増税容認」で動くのではないか。
こうなると、焦点は野田が小沢グループを懐柔しつつ、自民党の要求を適当に飲んで「解散なしの増税」に道を付けられるかどうかに絞られてくる。この「野田完勝」シナリオの可能性は40%とみる。
谷垣が「解散なしの増税容認」に動くのを許さず、自民党内から抵抗運動が盛り上がる。あるいは、小沢グループの造反を恐れた民主党の輿石東幹事長の先送り路線が実って「採決(増税)なし、解散なし」のシナリオが40%。
谷垣が野田の同意を取り付けて「増税あり、解散あり」の話し合い解散は10%。これは谷垣勝利のシナリオだ。野田が結局、自民党の賛成を取り付けられず、逆に内閣不信任案に直面して解散という「増税なし、解散あり」が10%とみる。野田が内閣総辞職を選んだ場合も「増税なし、解散なし」のシナリオに集約される。
以上の4パターンを増税と解散別に分ければ、増税ありが50%、解散なしが80%である。いまの内閣支持率の低迷ぶりを見れば、小沢だけでなく野田だって解散を避けたい。解散すれば政権を失うのは、ほとんど確実である。そこへ自民党内で解散なしの増税容認勢力が勢いを増すとなると、増税の可能性が強まる一方、解散は遠のいたのではないか。
(文中敬称略)
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