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5月10日(木) 小沢民主党元代表の党員資格停止解除と東京高裁への控訴をどう見るか
民主党の小沢一郎元代表の無罪判決をめぐって、二つの大きな動きがありました。一つは10日付けでの党員資格停止の解除であり、もう一つは検察官役の指定弁護士による東京高裁への控訴です。
東京高裁での判決は来年2月頃に出ると見られています。その内容がどうなるのか、三つの可能性があります。
一つは、限りなく黒に近い灰色という現在の「無罪」判決がそのまま維持される場合です。もしそうなれば、検察審査会のあり方や小沢裁判そのものが、大きな批判にさらされることになるでしょう。
もう一つは、灰色ではなく真っ白になっての無罪判決です。政治資金収支報告書の虚偽記載について、今回の判決は小沢被告の「関与」を認めましたが「共謀」については証拠不十分だとしました。
この「関与」自体、否定される可能性があります。もしそうなれば、小沢裁判や指定弁護士に対する批判はさらに大きなものとなるでしょう。
第三の可能性は、一審判決が覆されて有罪とされる場合です。もしそうなれば、小沢被告は「真っ黒」だったということが認定され、政治生命を絶たれることになるでしょう。
しかし、その可能性は、それほど多くはありません。もともと有罪の立証が難しいために検察は起訴を諦め、それを起訴すべきだと議決した検察審査会の判断材料には虚偽の証拠が含まれており、裁判でも供述証拠の多くは採用されず、今後、新しい証言など「共謀」を立証するに足る新たな証拠が得られるとは思われないからです。
一審判決には納得できないという指定弁護士の気持ちは十分に理解できますし、小沢金脈に対する疑惑が解明されたわけではありません。しかし、だからといって控訴審の裁判官も同じように判断して事実認定を覆すでしょうか。
今回の二つの動きは、今後の政局に大きな影響を与えることでしょう。
第1に、小沢さんは、これで秋の民主党代表選に立候補できなくなりました。たとえ、民主党内でのイニシアチブを握ることができても表舞台には立てませんから、野田さんを追い落として首相になるという野望はほとんど潰えたことになります。
第2に、小沢さんと民主党の対応に対する世論の批判は強まり、野党の攻勢も厳しいものになるでしょう。当面は、問責決議を挙げられた2閣僚の解任と小沢さんに対する証人喚問をめぐって、与野党の対立が強まるにちがいありません。
第3に、野田首相にとっては、プラスになるかマイナスになるかは微妙なところです。民主党内での小沢さんの力や影響力が強まるのか、それとも弱まるのかが不明確だからです。
少なくとも、秋の代表選での対抗馬として小沢さんが登場する心配がなくなったという点ではプラスかもしれません。しかし、党員資格を回復した小沢さんとそのグループが攻勢を強めることになれば、野田さんにとってのマイナスが大きくなります。
小沢さんへの証人喚問要求などの野党からの攻勢も、直接には野田内閣に対してなされます。このような野党攻勢は小沢さんへの牽制として利用できる面があるとしても、与野党関係は厳しいものになるでしょう。
税と社会保障の一体改革で自民党との協調路線を模索している野田さんにしてみれば、依然として視界不良の状況が続くことになります。北関東は竜巻が吹き荒れる嵐に見舞われましたが、永田町界隈でも、しばらく荒れた天候が続きそうです。
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