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「やることが多すぎて仕事が進まない」と言ったら、能力がないからだと怒られそうだが、東日本大震災以降の日本はまさにそういう状況と言ってよさそうだ。
本来ならば、震災の教訓を生かして、被災地および日本の復興・再生に向けたプロセスの大詰め段階に差しかかっていていい頃だろうが、あらゆるペースが遅いことは皆さんもご存じの通りである。
■「民間と米軍の輸送力活用」が中長期的課題
しかし、防衛省・自衛隊だけを見ても、その後、南スーダンPKOや北朝鮮のミサイル事案など、ひっきりなしに大きな出来事があり、それらに対処するだけで目が回るような日々だった。
とりわけ、どんな時も真正面の仕事として取り組むことになるのが「輸送」、つまり人員や装備の移動手段である。
新たな「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の実施に向けて、2011年に防衛省がまとめた「防衛力の実効性向上のための構造改革推進に向けたロードマップ」では、輸送力について「民間と米軍の輸送力活用」を中長期的課題としている。
これは、「統合運用」と言われながらも、現状の予算縮小傾向では陸海空自衛隊の輸送力の大幅な増強は望めないことからの発想だ。
事実、東日本大震災において陸上自衛隊の隊員は被災地まで九州から陸路で向かい、北海道からは民間フェリーや米軍艦艇などにより赴いた。
こうした経験から、今後、いざという時にスムーズに連携がとれる体制の構築を急がなければならないのだが、取り組みはまだ手探りだ。
■厳しい経営状況に置かれている民間フェリー会社
4月27日に、長距離フェリー協会主催の「大規模災害時の交通手段の役割分担を考える。東日本大震災救援輸送を経験して」と題するシンポジウムが行われ、私もパネラーとして出席した。
私は自衛隊を知る立場として出席し、海運や危機管理の専門家などの方々と討議させていただいたが、大変意義深い試みだったと思う。
なぜならば、お互いにできること、できないことが、まだまだ多いからだ。
俯瞰すると、陸自が民間フェリーの活用に乗り出そうとしているのは、予算縮小により自衛隊だけで自己完結できないためである。一方、フェリー業界が自衛隊への協力に大きな力を注ごうとしているのは、高速料金の値下げなどの影響で厳しい経営状況に置かれているということも1つの要因とも言える。
そう考えると、フェリー会社に自助努力で設備投資を求めることも、フェリー活用にかかる経費を防衛省・自衛隊が捻出することも、そもそも困難だ。
その大前提を念頭に、いくつかの問題点について考えていかねばならないだろう。
第1に、「民間フェリーを活用」と言っても、その隻数は年々先細り傾向にある。業界自体の経営が安定することがまず必要だ。
次に、そもそも地震などが発生した後は、津波の危険性があるために制限がかかり、フェリーを動かせなくなってしまう。平素から国土交通省との意思疎通を図り、災害時には柔軟に対応してもらわなくてはならない。
そして、ランプ(岸壁に渡す通路)を備えていない船も多いなど、設備の不足もある。また、港にはどこでも入っていいわけではないので、有事に際しては許可申請などを包括的に行うことも求められる。
■国の主導で柔軟な輸送体制を
今のところ、自衛隊が民間フェリーを利用する際は、防衛省・自衛隊とフェリー会社が個別に調整することになっている。だが、本来は政府によりなすべきことは多い。
先般の北朝鮮ミサイル事案において、陸上自衛隊員は沖縄の石垣・宮古・与那国島に民間フェリーで移動した。この時、「営業の邪魔をしない」ことが条件とされ、自衛隊は民間人と同じように必要な日に「予約」をした。強制力はないので、もし先に他のお客さんが入っていたら運航できなかったわけだ。
ちなみに、北朝鮮がミサイルを打ち上げたのは4月13日だったが、陸自隊員がフェリーで帰路に就いたのは4日後の17日であった。これは発射予告が12〜15日の間であったことを踏まえ、それより後の17日にチャーターしてあったからである。
いつでも帰れるようにフェリーを何日も押さえたりすれば、キャンセル料が発生してしまう。そんなお金はとても払えないというわけだ。
現状では、フェリー各社の厚意により大きな問題もなく利用できているが、今後起こり得る様々な状況に鑑み、国が主導してもっと柔軟に自衛隊が使用できるようにしなければならないだろう。
そのためには、「官と民の協力のもとで・・・」などという決まり切った文言だけにとどまらない踏み込んだ施策を期待したい。
端的に言えば、国としてフェリー業界への補助を促進することではないだろうか。有事対応のためのコスト負担など、現在はフェリー会社がそれぞれの判断で行っている。
政府は、フェリー政策も含めた全体的な輸送対策を構築すべきである。これは大規模災害のみならず、想定される有事に備えるための喫緊の課題ではないだろうか。
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