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2012.05.07 「原発ゼロの日」と橋下市長の“豹変”、(ハシズムの分析、その20)
〜関西から(63)〜
広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
2012年5月5日、私たちはついに「原発ゼロの日」を迎えた。後年、この日がわが国のエネルギー政策を転換させた“歴史的記念日”になるかもしれない。福島第1原発事故以来、たゆまなく続けられてきた国民の脱原発運動がようやく「一里塚」に到達したということだ。
原発再稼働に向かってひた走りに走ってきた野田政権にとって、「原発ゼロの日」を迎えたダメージは計り知れない。枝野経産相は原発事故対策の注意書きを並べた即席の「安全判断基準」(4月6日)を提示し、関係閣僚会議が「大飯原発再稼働の妥当性」(4月13日)を結論づけたものの、国民は全く信用しなかった。防潮堤嵩上げ、常設非常用発電機の設置、免震重要棟の建設、放射性物質フィルター付きベント(排気装置)設置などなど、事故が起こったときの対応策はすべて「これから」のことで、絵に描いた餅だったからだ。
こんな子ども騙しの「安全判断基準」で原発再稼働ができるとでも踏んでいたのなら、この政権の先行きはそれほど長くない。どの世論調査を見ても野田政権と国民世論との間には天と地ほどのギャップが広がっており、もはや野田政権への国民の信頼は地に落ちている。大飯原発が立地する福井県に隣接する滋賀県や京都府においても、批判世論の格段の高まりを背景に、両知事が原発再稼働以前に政府がとるべき「政策7提言」(4月17日)を申し入れた。地元の福井県や大飯町に「イエス」とさえ言わせれば何とかなる、といった政府の甘い目論見はもはや完全に吹っ飛んだのだ。
しかし滋賀・京都に先立ち、国と関電に対して「大飯原発再稼働への8条件(提案)」(4月10日)を発表した以降の大阪の対応は、当初はマスメディアから「原発再稼働反対」の動きとして大きく喧伝されたものの、その後は時間を追うごとに変化してきている。橋下市長の言葉を借りれば、これまでは「今のところ反対。まったく無理だ」(4月1日)、「再稼働を阻止するためには、国民が総選挙で民主党政権を倒すしかない」(4月13日)、「科学的には誰も安全とは言えないのに、再稼働に向かえば国家の危機だ」(4月24日)などと激しい言葉を並べで国や関電を批判していた。
ところが、4月26日を境にして橋下市長の発言が一変する。橋下氏は、当日の関西広域連合の会議において次のような発言をして周囲を驚かせた。その趣旨は、「大飯原発の再稼働を認めなければ、関西の住民には応分の負担が発生する(ことを覚悟しなければならない)」、「節電に取り組む企業への奨励金の財源として、関西の住民に1カ月1千円程度の新税を課すことを提案する」というものだ。
また会議後の記者説明では、大飯原発が再稼働しない場合の夏の電力需給について、「ピーク時にみんなで我慢できるかどうか。府県民に厳しいライフスタイルの変更をお願いする。それが無理なら原発を再稼働するしかない」と述べ、「理想論ばかり掲げてはだめ。生活に負担があることをしっかり示して府県民に判断してもらう」と強調した。要するに「安全はそこそこでも(原発再稼働で)快適な生活を望むのか、節電をして不便な生活を受け入れるのか、二つに一つ」というわけだ。
上記の「大飯原発再稼働への8条件(提案)」をまとめた大阪府市の「エネルギー戦略会議」のなかには旧知のメンバーもいるが、「住民が節電を我慢できなければ再稼働を認める」といった荒唐無稽な条件(提案)はどこにも入っていない。独立性の高い原子力規制庁の設立、事故発生を前提とした防災計画と危機管理体制の構築、原発から100キロ程度の広域の住民の同意にもとづき自治体との安全協定の締結など、いずれの条件(提案)も藤村官房長官が橋下氏との会談で「将来的には考えるべき課題だ」(4月24日)として応じなかったものばかりだ。
ところが、この藤村発言を「政治家が安全宣言したことは絶対におかしい」(4月24日)と激しく非難したばかりの僅か2日後に、今度は橋下氏自身が「原発か節電か」の二者択一を住民に迫り、国や関電に対して要求した「8条件(提案)」をあっさり反故にするのだから、いったいこの人物は何を考えているのかと呆れてしまう。「エネルギー戦略会議」の面々からは目下のところ抗議の声が上がっていないが、こんな調子では橋下氏が彼らを捨てるか、彼らが橋下氏を捨てるか、近い将来に一波乱が起きることは必至だろう。
私は前々回(ハシズムの分析、その18)に、橋下氏が「脱原発・大飯原発再稼働反対」を旗印にして国政選挙に打って出る気配が濃厚だと書いた。また民主党主流派(野田・仙石一派)と橋下新党が事実上の気脈を通じ、総選挙による「小沢切り」を画策しているのではないかとも論じた。この見通しが崩れたことについては不明を詫びなければならないが、橋下氏が原発政策で“豹変“したことで、少なくとも「脱原発(依存)」あるいは「大飯原発再稼働反対」をシングルイッシュ―にして選挙戦が戦われる可能性はなくなったといえる。
となると、橋下新党は一体何を争点にして選挙戦を戦うというのか。竹中平蔵氏をはじめ小泉構造改革を推進した面々をブレインにして政策を詰めるというが、すでに維新八策の中身は「手垢にまみれたものばかり」と酷評されていて新味が少ない。豹変するのは君子ではなくて、“トリックスター”橋下氏の本領だとはいえ、それにしても国民の最大関心事である原発再稼働問題をかくも簡単に足蹴にする政治家が信頼されるはずがない。橋下新党もまた野田政権の轍(わだち)を忠実にたどっているのである。
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