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橋下徹(大阪市長)のツイッター上で、池田信夫(アゴラ社長・経済評論家)が絡み、高橋洋一(元財務官僚・経済学者)がこれを牽制し、中野剛志(経産省官僚・京大準教授)が喧嘩を売られる等、当該ツイッターは、現在いわば「ネット経済論壇」の様相を呈している。
風雲児、橋下は大阪維新を率いて国政進出を狙っており、これらのツイッター上のやり取りが日本経済に大きく影響する可能性が出て来たため、現時点で論点整理した上で筆者の私見を述べる事とした。
各論者の主張を、かなりザックリ纏めると下記の通りである。
●池田信夫:消費税増税賛成、インフレターゲット反対、新自由主義論者、TPP賛成
●高橋洋一:消費税増税反対、インフレターゲット賛成、新自由主義論者、TPP賛成
●中野剛志:消費税増税反対、インフレターゲット賛成、公共事業推進、TPP反対
なお、原発問題・社会保障問題・教育問題、地方分権等、経済政策と密接不可分な問題があるが、論点を絞るため敢えて割愛した。
また、池田には「ネット言論プラットフォーム」アゴラ一派、高橋には元上司の竹中平蔵を始めとして政界官界人脈、中野には京大研究室での上司の藤井聡、経済評論家の三橋貴明、漫画家の小林よしのり等が現在進行形で影響を与え理論武装のバックボーンとなっているが、当然ながら微妙にニュアンスの異なる主張を持っているため、彼らへの言及も強いて避けた。
◆消費税増税◆
池田は、 <「景気がよくなってから増税する」などと言っていては、いつまでも増税できない。その負担は、将来世代に転嫁されるのです。>(【日本経済に「神風」は吹かない】2012年01月30日 http://agora-web.jp/archives/1427208.html より抜粋) と述べ、現下のデフレ・低成長下での消費税増税を推進する立場である。
橋下は高橋と共に、道州制を導入し消費税を地方税化した上で各道州で税率を決める事を主張し、当面の消費税増税には反対している。
中野は、現下の消費税増税に反対しているが、詳細については言及していない。
これについて筆者は、池田と正反対の立場を取り、「官民折半・双方自己責任」の先端技術投資等の政策次第で「実質成長率を2%以上にまで高め、インフレ率を2%程度とし、計4%以上のGDP名目成長率を3年以上継続する」という様な経済基盤を構築する事は可能であり、これと併せて無駄の削減、社会保障の抜本改革を実行し、その上でなお足りなければ消費税増税も有りとする立場だ。
また、橋下・高橋の唱える消費税の地方税化は、一つの選択肢だと思うが、道州で別税率化することは、現行の仕入れ税額控除方式の消費税では恐らくEU諸国間で輸出入手続きのような事が必要となるため、もしその趣旨を実現するなら別途米国各州のような単純売上税の導入(申告書は現行消費税とワンピース)が現実的だろう。
なお、池田は、 <「無理に消費増税を行えば増税による景気下落効果により税収も落ち込んでしまう[・・・]これは、97年の橋本龍太郎首相による消費税率の3%→5%アップの時に実証されている」という話はよくあるが、間違いです。増税の直前には駆け込み需要で消費が増えるので、成長率は上がります。1997年の増税後の落ち込みは、そのリバウンドに過ぎない。これは一時的なもので、長期的には増収になります(1998年の落ち込みは信用不安によるもの)。>(前掲) と述べているが、筆者はどう見ても事実に反すると考える。
◆インフレターゲット◆
池田は、インフレターゲット導入は実効性が無く、もし無理にインフレにしようとするとハイパーインフレになってしまうとし、導入に反対している。
一方、高橋は、導入論の急先鋒である。
中野は、財政政策に比べ金融政策には関心が薄い印象だが、デフレ退治論者であるので導入には賛成であろう。
これについて筆者も、消費と投資を促進する適度なインフレは、経済成長に不可欠であり、2%程度のインフレターゲットを導入すべしという立場だ。
なお、池田も言うように、単に日銀の国債買い入れだけでは市中に金が流れないのでインフレにならないというのは、市場心理の綾の部分を除けば、理論的には概ね正しく、併せて財政政策が必要となるだろう。
◆新自由主義◆
話を簡単にすると、「新自由主義 ≒ 規制緩和」である。
池田・高橋は、小泉改革の行ったような規制緩和に賛成であり、経済成長のエンジンと捉えている。
中野は、規制緩和はデフレ促進策であるとして、現下での導入に強く反対している。
ここで、一般的に使われる「デフレ」という言葉を分解して考える必要がある。
「文字通りのデフレ = 物価下落」と「実質GDPの下落」であるが、現下の日本経済ではバブル崩壊後、長い間両者がほぼ続いていたため、総称して「デフレ」と呼ばれるようになっている。
規制緩和には、例えばタクシー台数制限・料金規制の緩和のように、主に価格下落をもたらし、余り需要を創造しないものもあるが、一方で例えばカジノの解禁のような新規分野では顕著なように大きく需要創造が期待出来るものがある。(ただし、貧困者のギャンブル付け等の問題は別途対策が必要)
これについて筆者は、見極めが必要であり、デフレ下に於いては下記の条件が成り立つ分野については、規制緩和を行うべきと考える。(ただし、安全等の社会的規制は別途考慮)
【 物価の下落で失われるGDP < 需要の創造で得られるGDP 】
◆公共事業等◆
この公共事業等の財政支出は、いわば上記の新自由主義の陰画でもあるので、新自由主義者の池田・高橋は否定的であり、中野は促進論者だ。
公共事業は、建設時の経済効果は大きいが、完成後稼動時の経済効果は少ないか、直接的でないため測定困難なものが殆どである。
建設時の経済効果だけでは、財政支出に対して、なかなか税金としてのリターンだけではペイしない。
そのため、例えば橋梁の流通機能等の稼動時の経済効果を、今まで以上に中立的に測定する主体が必要となってくるだろう。
また、昨年3.11の東日本大震災を受け、堤防等の国土強靭化のための公共事業が唱えられるようになり、自民党の公約案にも採用されるようになったが、それによる物的・人的被害の回避効果もドライに金額換算する客観的な物差しが必要だ。
筆者は、上記を踏まえた上で、ペイ出来る事業については優先して促進すべしという立場だ。
なお、例えば、介護保険による介護ビジネスへの補填も、いわば公共事業である。
介護ビジネスについては、寝たきりの方が増えたほうがビジネス的には拡大するという皮肉な現実がある。
しかし、寝たきりの方が増えると、本来なら元気な老年労働力として生産に回り、また介護費用以外の消費の担い手になったかも知れず、介護ビジネスの乗数効果の低さも勘案すると、必要以上の介護ビジネス拡大は本質的にはGDPに対してマイナスであり、また税金支出分は財政に対してマイナスであろう。
実質的に産業経済省作成の民主党政権の「新成長戦略」では暈されていたが、介護ビジネスから予防的ヘルスケア産業やサプリメント産業促進への政策シフトが望まれる。
また、教育分野は、いわば将来のビジネス生産力のへの投資だから、経済効果は大きいだろう。(ただし、適切な内容という条件は付く)
◆TPP◆
このTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)も、上述の新自由主義の一環であり、橋下・池田・高橋は促進論者であり、中野は反対論者だ。
中野の言うようにTPPは実質的に日米二国間協定であり、国力から言って双子の赤字と高失業率に喘ぐ米国に日本の市場がこじ開けられるだけに終わるというのは容易に想像出来る所だ。
いわゆる「非関税障壁」は、文化や社会構造に根差したものもあるため、時間を掛けて交渉すべきものであり、ISDS(投資家対国家の紛争解決)条項で一方の意向だけでいきなり国際機関に提訴・決着させるのは乱暴過ぎる。
また、基礎的食糧は特に有事の戦略物資であり、食糧安保の確保の観点から、国際的にこれを定義し、自由貿易の枠外とすべきである。
とはいえ、筆者は基本的に自由貿易促進論者であり、上記について措置した上で関税撤廃を中心に、TPPという形でなくとも進めるべきだと考える。
米国務省・国防総省系は、商務省・経済界と比べ、戦略的に中国包囲網としてTPPを利用しようとする気味が強く、条件交渉は十分可能と考える。
ただし、これは当然ながら現状とは一線を画し、政治・事務方の双方に人を得なければ叶わない。
以上、有名政治家のネット上での議論という新しい流れは歓迎すべきだが、それが実効的な結論へ収斂する必要があり、拙文が、その一助となれば幸いである。
ときに橋下には、三国志の梟雄、曹操猛徳の様に敵の将兵を味方に組み入れる独特の才能がある。
組み入れるべき者の見極めが、今後一層重要となるだろう。
(以上、敬称略)
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