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Nothing Ventured, Nothing Gained
05/02/2012
小沢判決の解説・評価(最後)
数日にわたり、小沢無罪判決の解説・評価と題して記事を書いてきました。
○ 「小沢判決の解説・評価と往生際の悪いマスメディア」 − ブロゴス転載版
○ 「小沢判決の解説・評価(補足)」 − ブロゴス転載版
○ 「小沢判決の解説・評価(それでも「小沢は黒」という人たちへ)」 − ブロゴス転載版
このブログがライブドアが運営するブロゴスというサイトに記事が転載されることになっているのはご存じだと思います。
そのブロゴスのコメント欄を読むと、私の記事の趣旨を理解され、判決の正確な理解をしてくれている方々が多く、メディアに踊らされないしっかりした人が結構いることに嬉しく思います。
しかしながら、メディアや小沢嫌いの政治家、メディアに踊らされている人たちや陰謀論を主張して判決内容を批判する人たちは、判決を独解する日本語能力がないことをさらけ出しているという自覚がないままに、「小沢は無罪だったが黒だ。」とか、「判決は裁判所と検察を守るために仕組まれた」とか声高らかに主張しているのですから、滑稽なものです。
そこで、今日は、そういう主張がいかに荒唐無稽かをさらに分かってもらうために、取り上げてみようと思います。
ただ、あまり長々と判決を引用しても、横着な「真っ黒論者」や「陰謀論者」は読解できないでしょうから、なるべく端的に書くように努力しますが、正確な判決の理解をするうえで必要な限度での引用はご容赦ください。
1.小沢は無罪だが黒だと判決が言っているという根拠
まず、一般的に、「小沢は無罪だったが黒」という判決だといわれている根拠をいくつか挙げてみます。
(1)判決は、小沢が秘書から報告を受け了承をしたと認定した。
(2)判決は、小沢の供述は信用できないと指摘した。
(3)判決は、指定弁護士の共謀の主張に相応の根拠があると言っている。
大方、「小沢は無罪判決だが、判決は真っ黒と認定している」という荒唐無稽な主張をする人々はこのようなことを言っているのではないでしょうか。
2.判決要旨に基づく反論
そこで、判決要旨からこれらの理解が間違いであることを説明します。
<(1)の主張について>
4月29日付ブログ記事「小沢判決の解説・評価(補足)」(ブロゴス版記事へ)でも説明していますので、そちらを参照してください。
判決が「報告・了承があった」認定しているとされているのは、2か所あります。
1つ目は、要旨80ページにあるとおり、
@本件土地の取得や取得費の支出を平成16年分の収支報告書には計上せず、平成17年分の収支報告書に計上することとし、
Aそのために、本件売買契約の内容を変更する等の本件土地公表の先送りをする方針についても、報告を受けて了承したものと認められる。
という部分です。
しかしながら、これのみでは、何ら違法性を構成しません。
ここで判決が言っているのは、小沢氏が秘書から、@取引については平成17年分の収支報告書に計上するということと、A契約内容を変えて、公表を16年中ではなく17年中に先送りするという方針について、報告を受け、了承したという事実です。
つまり、この報告のとおり、契約内容が変更できていれば、秘書の行為すら虚偽記入には当たらなかったといえます。
判決は、この事実を重視して、要旨86ページにおいて、
以上のとおり、被告人は、本件土地公表の先送りのための交渉は不成功に終わり、所有権移転登記手続の時期のみを先送りする旨の本件合意書が作成され、本件土地の取得費が平成16年10月5日及び同月29日に支出され、同日、本件土地の所有権を陸山会が取得したこと等については、報告を受けず、これを認識していなかった可能性があり、かえって、本件売買契約の決済全体を先送りしようとしていた当初の方針どおり、本件土地の取得や取得費の支出が、実際にも平成17年に先送りされたと認識していた可能性がある。
したがって、被告人は、本件土地取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に計上する必要があり、平成17年分の収支報告書には計上すべきでないことを、認識していなかった可能性がある。
と指摘し、この可能性が排除できていない以上、共謀なんて成立しえないと判断しています。
2つ目の「報告・了承」は、同じく要旨80ページにある
りそな4億円は、陸山会の被告人に対する借入金となること、本件4億円は本件預金担保貸し付けの担保として本件定期預金の原資にすることについて、認識し、了承した上で、本件預金担保貸付の目的が、本件4億円を収支報告書等で対外的には公表しない簿外処理にあることも承知していたものと認められる。
という部分です。
簿外処理という表現があるので、一見すると、それだけで違法との印象を持つ人がいると思いますが、それは間違いで、本件においては、簿外処理自体が違法性を構成するわけではありません。
ここで、判決が重視しているのは、当初、本件4億円は、担保目的で、本件定期預金の原資とする認識と了承があったということです。
つまり、担保目的で定期預金の原資としたということであれば、いわば保証人となったようなものですから、陸山会に貸し付けたという行為ではありません。当然、これを記載しなくても、良いということになります。
そこで、判決は、要旨91ページで、
被告人には、本件4億円の簿外処理の方針を了承する動機があると認められるが、他方で、被告人は、本件4億円の公表を望まないにせよ、政治資金規正法に抵触する収支報告書の虚偽記入ないしは記載すべき事項の不記載をすることまでは想定しておらず、本件4億円の簿外処理を適法に実現することを前提として了承していたという可能性もある。
と指摘し、91ページないし92ページでは、
以上のとおり、被告人は、本件預金担保貸付についての石川の説明により、本件4億円の代わりに、りそな4億円が本件取りの購入資金等として借入金になり、本件4億円を原資として設定された本件定期預金は、本件4億円の返済原資として被告人のために確保されるものと認識した可能性があり、逆に、本件4億円が陸山会の一般財産に混入し、本件売買契約の決済等で費消されたことや、本件定期預金が実際には陸山会に帰属する資産であり、被告人のために確保されるとは限らず、いずれ解約されて陸山会の資金繰りに費消される可能性があることについては、石川から説明されず、これを認識しなかった可能性がある。
と判示しています。
そして、判決は、要旨92ページで、
被告人において、本件4億円を借入金として収入計上する必要性を認識するためには、これらの事情の認識は、重要な契機となるはずのものであり、これらの事情の認識を欠いた結果、被告人は、平成16年分の収支報告書において、借入金収入として、りそな4億円が計上される代わりに、本件4億円は計上される必要がないと認識した可能性があり、したがって、本件4億円を借入金収入として計上する必要性を認識しなかった可能性がある。
と述べています。
以上から明らかなとおり、マスメディアのいう「報告・了承」は、何ら違法性を構成するような話の類ではないのであり、その「報告・了承」があったからといって、何が「黒」となるのか全く判然としませんから、メディアの批判は失当であること著しいといえるでしょう。
<(2)の主張について>
確かに、裁判所が小沢氏の供述につき、信用できないと判示した部分は存在しますが、重要なのは、どういう内容につき、どういう趣旨で、「信用できない」と評価したかです。
まず、裁判所が問題にした点ですが、要旨92ページで、判決は、
被告人は、本件売買契約の締結、本件売買の決済、本件土地の所有権移転登記手続といった取引や、本件土地公表の先送り、本件4億円の簿外処理といった方針について、秘書との間で、指示したことも、報告を受けたこともなく、虚偽の記入ないし記載すべき事項の不記載がされた平成16年分及び平成17年分の収支報告書の提出について、報告を受けたこともない旨公判で供述している。
としています。
つまり、小沢氏のいわば「すべては秘書任せにしていて自分は何も知らない」といった趣旨の供述について、検討しているわけです。
これにつき、裁判所は、要旨93ページにおいて、
このように、被告人の供述には、変遷や不自然な点が認められ、特に、本件が問題になった後も、「収支報告書は一度も見ていない」とする点などは、およそ措信できるものではない。
被告人が、石川や池田ら秘書から、本件各取引等や収支報告書の作成提出に際して報告を受けたことは一切ない旨の供述については、一般的に信用性が乏しいといわなければならない。
と指摘した上で、続けて、
しかしながら、被告人は、公職や政党の役職を歴任した国会議員として、多忙であることに加え、平成16年10月当時から7年余りを経て被告人質問に及んでいることをも考慮すると、本件土地の取引に関する事柄や秘書からの報告内容についても、現段階において、具体的な記憶が薄れ、実際に確かな記憶がないこともあり得るといえる。
と判示しています。
つまり、裁判所は、小沢氏の供述は信用性が乏しいけれども、それは7年余りも経過している話だから、記憶が薄れて不正確になっていることもあり得るでしょうと述べているのであって、この後半部分の裁判所の評価を省略したマスメディアによる批判は失当です。
<(3)の主張について>
これについては、4月29日付ブログ記事「小沢判決の解説・評価(補足)」(ブロゴス版記事へ)で説明したとおりです。
「小沢は黒と判決は言った」と主張する人は、意図的かそうでないかは不明ですが、裁判所は、指定弁護士の共謀の主張につき、「相応の根拠がある」と言ったと主張します。
しかしながら、これは不正確です。
正確には、裁判所は、「相応の根拠があると考えられなくはない。」と要旨81ページで述べています。
裁判所が、「相当の根拠がある」と言ったのではなく、「考えられなくはない」という否定することを前提とする表現を用いていることに注意しなければなりません。
「考えられなくはない」という表現は、一応、その主張は検討するに値するが、採用はできないという場合によく使います。
したがって、マスメディアがこの表現のニュアンスを書き換えて報道することは極めて悪質です。
以上のとおり、メディアの「判決は小沢は黒だが無罪とせざるを得なかった」という類の報道は、誤報ともいうべきものであって、事実の歪曲です。このような報道は、事実に基づいていませんから、場合によっては名誉毀損すら成立するのではないかと思います。謝罪広告ものですね。
3.陰謀論
さて、マスメディアの報道の対局にある看過できないものとして、いわゆる陰謀論があります。
この判決は検察を守るために行われたとか、登石郁朗裁判長を守る判決だとか、最高裁が陰謀を仕組んだとかいう類のものです。ツイッターやコメントを見ているとどうしても目に入ってくるので、気になります。
陰謀論というのは、ハッキリ言って、思考停止を招くだけです。百害あって一利ありません。現に、これまで見てきたように、今回の判決は極めてまっとうなものであり、私は練りに練られた質の良い判決だと思います。
また、4月30日付ブログ記事「小沢判決の解説・評価(それでも「小沢は黒」という人たちへ)」(ブロゴス版記事へ)で説明したとおり、今回の東京地裁刑事第11部の判決は、東京地裁刑事第17部(当時登石郁朗裁判長)が下した秘書の有罪判決において認定された本件4億円の原資の一部が水谷からの1億円の献金であるという部分には全く触れず、違法な原資を前提とした偽装工作の主張を排斥しているのであり、これだけ見ても、検察を守るとか、登石郁朗裁判長を守っているとの批判は失当ではないでしょうか。
いずれにしても、この判決は私は非常に優れた判決であったと思います。
以上、数日にわたった判決解説と評価はいかがでしたか。少しでも読者の方の理解の助けになっていれば嬉しい限りです。
投稿者コメント:上記のブログ主は小沢支持でも反体制でも何でもない。これを読んでまだ小沢一郎の責任を云々する人は、「精神障害のために自身を傷つけ、または他人を害するおそれがある」(精神保健福祉法29条)ため、措置入院が適当である。
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