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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120502-00000302-wedge-pol
野田佳彦総理大臣は、米国東部夏時間4月29日(日)にワシントンDCに到着した。30日朝にアーリントン国立墓地で献花した後、午前から昼食にかけてバラク・オバマ大統領と首脳会談を行った。翌5月1日には帰国の途につく、という慌しい日程となった。
■ヒット数18件 野田総理への関心は…
全体的には、ワシントンでの野田総理の訪米の注目度は非常に低かった。本稿を書くにあたり、事前の報道振りを調べようと思い、29日夜にワシントン・ポスト紙の過去2カ月の記事を「Noda」で検索してみた。ヒットしたのはわずか18件。訪米そのものについて扱った記事は1つだけで、それも「愚かさの度合いは少ない(Less Loopiness)」というタイトルのポジティブとは言いがたい記事。そのほかは原発再稼動を巡る議論や、消費税引き上げを巡る国内の厳しい政治情勢、あるいは小沢一郎元民主党代表の無罪判決に関するものばかりであった。
なぜか。そもそも今回の訪米に対する期待値は非常に低かった。野田政権の寿命は短いというのがワシントンの日本専門家では概ね共通の認識で、このため、ただでさえ消費税引き上げに自らの政治力を使い果たしている野田総理の訪米が日米関係上の大きな懸案の決定的打開に結びつくようなものになるとは誰も思っていなかったようだ。
また、当初期待されていた、野田総理による日本のTPP参加表明が叶わないことが確実になってからは、安全保障の分野で、鳩山政権以降、迷走を続けてきた沖縄の米海兵隊普天間飛行場の移設問題について一定の結論を出すことができるか否かに焦点が移った。
しかし、これも、4月25日に発表予定だった安全保障協議会(2プラス2)共同声明が米議会の有力な上院議員3名がパネッタ国防長官に対して連名で3抗議文書を送っただけで、一時は発表そのものが危ぶまれる事態に陥った。沖縄に駐留する米海兵隊のグアム移転の規模や、海外で初の日米共同演習場建設などについて触れたこの声明は、最終的には日本時間の4月27日(米国東部夏時間の26日夕方)に発表され、最悪の事態は免れたが、直前の二転三転があったため、発表そのもののインパクトは弱くなってしまった。
■よく分からなかった訪米目的
今回の総理訪米・日米首脳会談についての評価は難しい。首脳会談後の共同記者会見で発表された共同声明には、(1)同盟の深化、(2)経済・通商での関係強化、(3)地球規模問題(サイバー、宇宙、エネルギー、核の安全保障など)でのパートナーシップ、(4)共通の価値観に基づく日米関係のビジョンの確認、といった前向きなアジェンダが盛り込まれ、一応の結果は残った。特に、鳩山政権以降迷走を続け、「日米中は正三角形」という発言で物議を醸した議員もいる民主党政権が米政府との間でこのような共同声明を発表し、日米同盟はアジア太平洋の礎であり、日米関係は日本の外交・安保政策の要諦であることを確認したこと自体は、非常に大きな価値がある。
それでも、今回の訪米で野田総理が達成したかった目的は何だったのかが、結局のところよく分からない。共同宣言の内容は、包括的で未来志向のものではあるが、実際の内容は、既に担当閣僚レベルで全体的な方針が打ち出された政策(すでに実施に向けて日米両政府が動いているものもある)を追認したに過ぎないものも多い。
また、ホワイトハウスから発表された日程によれば、野田総理のオバマ大統領との会談時間は昼食を交えての議論を入れても午前11時40分から午後2時まで。逐語通訳が間に入ることを考えれば、会談時間は正味1時間半もない。さらに、ワシントン到着が4月29日、出発が5月1日、と余裕のない日程。野田総理はオバマ大統領に会うために「だけ」ワシントンにやってきた、というのが率直な印象だ。
■日本の存在感を示す機会を棒に振った
それでも良いではないか、という意見もあるかもしれない。確かに、首脳同士が顔を合わせて諸問題について率直に議論するのは、そのこと自体に意義がある。しかし、今回の野田総理による訪米は、アメリカで低下しがちな日本の存在感を示す絶好の機会だった。特に、今年はワシントンに日本から寄贈された桜が植樹されてから100年を迎える記念すべき年であると共に、東日本大震災から1年が経過し、日本の復興をアピールする格好のチャンスだった。
オバマ大統領その他の主要閣僚と会談するだけでなく、例えば、米日商工会議所や日米協会などで日本の震災後の復興について演説する、日本人選手が在籍する野球チームの試合を観戦に行く、大学で米国人学生とアジア太平洋地域における日米同盟の将来のビジョンについて議論する、など日本の総理自らが日本という国のPRマンとなるチャンスはいくらでもあった。訪米の際に、自らが持つ日本の将来に向けたビジョンについてのメッセージをしっかりと発信することで「外交に強い総理」というイメージを作る、あるいは総理自身の人となりを米国で知ってもらうという選択肢もあった。しかし、2泊4日というゆとりのない日程を組んだことで、せっかくの訪米という機会を棒に振ってしまった。
■訪米時に1週間滞在した習近平
今年の2月に中国の習近平・国家副主席が訪米した際には、米国に1週間近く滞在し、ワシントンのほかにカリフォルニア州、アイオワ州などを訪問した。ワシントン滞在中もバイデン副大統領、クリントン国務長官、パネッタ国防長官など主要閣僚との会談に加えて、議会の主要議員との懇談を行い、米中経済評議会(米中の経済人が集う会合)で米中関係についてスピーチも行った。習氏の米国訪問は、政策面では実りあるものではなかったが、今年秋の指導部交代に向けて「習近平という人物を米国にアピールする」という目的はとりあえず果たしている。単純に比較はできないが、考えさせられる。
また、野田総理がオバマ大統領と過ごす時間が、会談の時間だけなのも気になった。習氏訪米時はカウンターパートのバイデン副大統領がアイオワ州やカリフォルニア州訪問を含めた全日程に同行した。
米国の「特別なパートナー」である英国のキャメロン首相夫妻が3月に米国を訪れた際には、オバマ大統領はキャメロン首相とは首脳会談のほか、大統領専用機で共にオハイオに赴き、バスケットボールを観戦、加えてホワイトハウスで晩餐会も主催している。この晩餐会にはジョージ・クルーニーをはじめとする有名人が出席し、事後のワシントン・ポストの社交欄である「Style」欄の1面は「イギリス人が来た!イギリス人のためならジョージ・クルーニーだって連れてくるさ!」という書き出しの記事が占めていたのが印象に残っている。ところが、今回、野田総理がオバマ大統領と会うのは会談時のみで、総理の夕食会はクリントン国務長官が主催するという。
極東の地政学的に見れば、日本は米国にとって重要な国であり続ける。従って、「日本国総理大臣」との会談はアメリカ大統領にとっても重要なものだ。しかし、そのことと2006年以降、総理がほぼ毎年交代する状況の下で、今、総理大臣の職にある「野田佳彦」という人物とオバマ大統領が十分な時間を過ごして個人的な関係を構築しようと思うかは別問題だ。今回の野田総理の訪米ではそのことを強く感じた。
筆者:辰巳由紀(スティムソン・センター主任研究員)
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