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2012.04.27
「青天白日」と「暗雲」と――小沢元代表への無罪判決
暴論珍説メモ(112)
田畑光永 (ジャーナリスト)
5月26日、東京地裁は政治資金規正法違反容疑で検察審査会によって強制起訴された民主党の小沢一郎元代表に無罪判決を言い渡した。検察官役の指定弁護士がこの判決を不服として控訴するかどうかまだ明かでないので、裁判は完全に終ったとはいえない段階であるが、社会一般および政界ではこれによって小沢氏は「青天白日の身」になって、これから大手を振って活動する条件が整ったと受け取るであろう。
この裁判は検察が描いた「小沢氏へのゼネコンからの不正献金→それを資金とする土地購入→資金の出所を隠蔽するための報告書への虚偽記載」という小沢事務所ぐるみの犯罪の想定からスターとしたものであった。ところが検察は第一段階の不正献金が立証できず、さらに事実として存在する虚偽記載への小沢氏の関与をも立証不可能と判断して、結局、小沢氏を不起訴処分とせざるを得なかったのだが、その後、検察審査会による決定で強制起訴された案件であった。
そして裁判の過程でも、虚偽記載への小沢氏の関与を証明する証拠とされた石川知祐衆院議員の供述調書が「利益誘導や圧力など違法な取調べ手法があった」として、証拠採用されず、検察の独善、横暴が大きくクローズアップされたのであった。
しかし、今回、大善文男裁判長が下した判断は、自身の政治資金収支報告書を「一度も見たことがない」という小沢氏の供述は「およそ信頼できるものではない」、つまり虚偽記載を「知っていて、了承した」はずだが、正しく書かねばならないと認識していなかった可能性があるから「故意を欠く」、つまり「悪いと知ってやったわけではない」かも知れないから、「罪に問わない」というものであった。
これは「青天白日」ではない。ぎりぎり処罰を免れたというだけである。大善裁判長もすでに一審で有罪判決を受けている小沢氏の3人の秘書の「虚偽記載」を認定しているから、小沢事務所が収支報告書にウソを書いた事実は再度認定され、小沢氏もそれを知っていたというのが、司法の判断ということになる。
したがって、今、小沢氏がするべきことは事務所ぐるみの政治資金規正法違反を有権者に謝罪することである。言うまでもなく、小沢氏の政治資金には国民の税金たる政党助成金からの何千万円かが入っている以上、それを含む政治資金全体の動きはきちんと誤りなく公開されなくてはならない。そのための政治資金規正法である。前述の検察の想定の前段が否定されたからと言って、後段までが消えてなくなるわけではない。小沢氏はこれまで「裁判中」を口実に政治倫理審査会などに出席して、事実を説明することを拒んできたが、今や「無罪」判決を手にした以上、それを拒む理由はないはずだ。そうした場に進んで出席して、法律違反を謝罪し、疑問にすべて答えるべきである。
しかし、小沢氏にはそんな真っ当な考え方はありそうに見えない。今は検察の「横暴」で失われた自分の地位と時間を取りもどすことだけが頭を占拠していることであろう。
小沢氏にしてみれば、自分を追い落とそうなどというよこしまな考えを検察が持たなければ、09年総選挙の後、自分は民主党政権で首相の座に座ったはずなのであり、それが果せなかった恨みがその後の氏の政治行動をすべて規定していると言っていい。
鳩山氏が首相となり、自分は幹事長に回ったところまではまだ許せるとしても、「政治と金」を騒がれて半年余りでその椅子も失い、その後の「脱小沢」から「党員資格停止」までを甘んじて受けなければならなかった屈辱を一気に晴らすためには、野田首相を追い落として、自らが首相にならなければならない。
それには民主党が衆議院で多数を占めていられるあと1年半が勝負である。その間に野田首相に衆院解散の宝刀を抜かせないまま、首相の座から追い落とさなければならない。どんな戦略戦術を立てるか、今のところ予測はできない。しかし、宮沢内閣不信任案に自民党内から賛成して細川内閣を作ったのに始まって、いくつも政党を作っては壊して子分を取り替え、その間、小渕内閣との連立と突如の離脱、独断での福田首相との連立話など、これまでの小沢氏の政治経歴を考えるとどんなことでもやりそうである。
そこでわれわれがもっとも警戒しなければならないのはどういう事態か。
小沢氏はとりあえずは野田首相が「政治生命を懸ける」と公言している消費税引上げを含む税と社会保障一体改革法案の成立を極力妨害して、野田首相の「政治生命」を絶つことを目標とするはずだ。与党にいながら野党提出の不信任案に賛成1回(宮沢内閣)と賛成未遂1回(菅内閣)の前歴が物語るように、この人には禁じ手というものがない。
小沢氏が恐れるのは、野田首相が税・社会保障法案の成立と引きかえに野党(自民党)に解散を約束する話合い解散であろう。そこでそれを防ぐ手として考えられるのは、大阪維新の会の橋下大阪市長との連携である。判決前日の25日、愛知県の大村知事は小沢氏を訪ねている。同知事を仲立ちにしての小沢・橋下ラインが「反民主党政権」を軸に成立して、「原発再開反対」と「消費税引上げ反対」という、いかにも一般受けしそうな旗印を掲げて解散を牽制するという局面が出現しそうである。
原発再開にしても消費税引上げにしても、重要な政策課題であるから、国民的論議を巻き起こすことには異存はないが、小沢、橋下両氏に共通するのは政策に対するいい加減さ、政策をたんに票に換算する体質である。その結果は政治から実質が抜け落ち、空騒ぎだけがうつろに響く事態である。そして「なにも決まらない政治」が延々と続く。日本の空を暗雲が覆う、そんな明日は見たくない。
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