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「増税」「解散」・野田首相はやっぱり「決められない政治家」---財務省を軸に「小沢無罪判決」後のガチンコ政局を読む
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32435
2012年04月26日(木)長谷川 幸洋「ニュースの深層」 :現代ビジネス
政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪に問われた民主党の小沢一郎元代表に無罪判決が言い渡された。これで消費税引き上げ問題や今後の政局はどうなるのか。ざっと整理してみる。
■財務省は「話し合い解散」に持ち込むか
まず政治を動かす全体のプレーヤーを見渡して、もっともスタンスが明確なのはだれか。そこを起点に考える。立ち位置にぶれがないプレーヤーを座標軸の原点に据えれば、全体の構図が見えやすくなる。
それは小沢でも、野田佳彦首相でも谷垣禎一自民党総裁でもない。ずばり財務省である。財務省は今国会で増税法案さえ可決成立できれば、野田佳彦政権がつぶれようと存続しようと、いっこうにかまわない。まして谷垣など増税を実現する手駒にすぎない。消費税政局の真の主役は財務省、とりわけ勝栄二郎事務次官だ。
そんな財務省の立場で考えると、増税法案を成立させるためには、まず衆院の多数で可決する。その後、参院でも可決することが絶対条件になる。衆院はともかく与野党で多数派が逆転した参院でも可決するためには、野党とりわけ自民党の賛成をどうしてもとりつけなければならない。
しかも先に審議する衆院段階で。なぜなら、いったん衆院で自民党に反対票を投じさせてしまうと、後で参院で賛成に転じさせるのは極めて難しくなるからだ。
自民党も増税に賛成だから、政策だけで考えれば、自民党が衆院で賛成するハードルはけっして高くはない。社会保障政策の中身で違いはあるが、これとて先週のコラムで指摘したように、岡田克也副総理は早くも目玉政策である最低保障年金創設の棚上げを示唆している。後期高齢者医療制度の廃止とか年金一元化とか、ほかにも問題は残っているが、これも議論の先送りが可能だ。
問題はただ一つ、野田が衆院解散・総選挙に同意するかどうかにかかっている。自民党内では森喜朗元首相や大島理森副総裁ら長老組が、解散の約束と引き換えに増税に賛成する「話し合い解散」を模索している。これは財務省にとって、頼りになる援軍である。
だから、財務省にとっては自民党の「話し合い解散勢力」と呼吸を合わせて、野田に解散を約束させられるかどうかが最大の獲得目標になる。野田が解散さえ決断すれば、自民党の賛成をとりつけ、民主党内の小沢グループその他が造反しようと、衆院も参院も可決し法案成立を展望できる。逆に言えば、それでも可決できないようなら、初めから増税は無理という話である。
いまの政局の基本構図はここだ。財務省が野田を羽交い絞めして、話し合い解散に同意させられるかどうかである。
■与野党ともに役者が不足
民主党内はどうか。
確かな筋によれば、民主党側で大島のカウンターパートになっている1人は、岡田だそうだ。これを聞いて、私は「この話はまとまらない」と思った。およそ総理の解散権をしばる「話し合い解散」ほど、したたかな政治的手腕を必要とする話はない。正直に表に出していい話といけない話を使い分け、ときには平気で嘘もつく。それくらいでなければ、まとまるはずがない。
岡田はあまりに正直だ。政治家として率直であり、原理原則に基づく考えも大事にする。だが「言っている話は正しいのだが、いまなぜこのタイミングで言うのか」と思う例が多々ある。最新の例は、先のコラムで書いた最低保障年金の棚上げ話である。
外相時代には、沖縄・普天間米軍飛行場の移転をめぐって早々と嘉手納基地への統合案を持ち出し結局、断念に追い込まれた例もある。辺野古移転が難航し、いままた米国側で嘉手納統合案が浮上しているのだから、岡田の先見性が評価されてもいい。だが、いかんせん、話を出すのが早すぎた。
そんな岡田が最高難度の政治的アクロバットである「話し合い解散」をまとめられるかどうか。岡田に代わって自民党との交渉相手が務まる人材がいるかといえば、それも見当たらない。前原誠司政調会長? あるいは仙谷由人政調会長代行? 野田がもっとも信頼する岡田を外してだれかが話をまとめようとしても、野田が話を信用するかという問題もある。
自民党側にも似たような問題がある。谷垣がもっとも信頼する相手は川崎二郎元厚生労働相や田野瀬良太郎幹事長代行といわれている。大島とは若干の距離があるようだ。
つまり「話し合い解散」は財務省と自民党の長老組が望み、野田がその気になれば、不可能な話ではないのだが、いざ実際に舞台回しとなると、双方とも役者がそろわない。これが第1点だ。
■腰がふらつきだした野田内閣
次に、そもそも野田自身が決断できるかどうか。
自民党の増税賛成をあてにして「話し合い解散」に乗るなら、小沢グループの造反は避けられない。小沢はすでに政府や党の役職辞任というカードを切ったが、今回の無罪判決で政治的求心力を取り戻し、代表交代を求める署名運動とか第2、第3のカードを切ってくるだろう。
野田があくまで自民党の賛成による法案成立をめざすなら、場合によっては造反離党したうえ内閣不信任案の提出も考えられる。そうなれば自民党にもハレーションが広がって、増税賛成による「話し合い解散」より、造反組と連携して不信任案賛成による倒閣という選択肢も出てくるかもしれない。
野田が小沢復権の下で「話し合い解散」という路線を選択するのは、まさに内閣の命運に直結する話になるのだ。野田にそんな政治的決断ができるだろうか。
4月6日付けコラムにも書いたように「どうあるべきか」論で言えば、野田は小沢がどうであろうと「増税実現が大義」と信じるなら、谷垣自民党と手を結んで増税法案成立をめざすべきだ。それしか増税を実現する手がないからだ。
それで事実上の政界再編、増税大連立が成立し解散・総選挙になれば、あとは国民が次の望ましい政権と政策を選択する。そんなプロセスを通じて、ねじれにねじれた日本の政治が基本政策を軸に再編され正常化していく。
しかし「どうなるか」論で言えば、野田は残念ながら、そんなだいそれた決断はできないとみる。なぜか。野田は自ら大きな政治的決断をした試しがないからだ。消費税引き上げ、原発再稼働、環太平洋連携協定(TPP)問題と重要課題への対応は、すべて霞が関の判断に基づいている。野田は官僚のみこしに乗ってきただけだ。
このうち正しいのはTPP参加くらいだが、それさえ腰がふらついてきた。
野田が今回も霞が関=財務省の指示にしたがって、「話し合い解散」による増税実現を目指すなら、野田は最後まで財務省に忠実だったという話になる。歴史に「財務省に忠誠を尽くして、民主党を壊した総理」という名を残すだろう。
「民主党を壊す」という決断は、これまでのような政策レベルで霞が関に従うという次元を超えている。のるかそるかの政治決断である。そういう決断する野田の姿を見たことはない。
■今後の政局は「一寸先は闇」
野田がそこまで腹をくくれないなら、自民党は解散なき増税賛成はできないから、法案成立の見通しは立たない。その場合は衆院で可決しても参院の否決が見えているから、衆院の採決自体をせず、法案は継続審議という展開になる可能性が高い。
そうなれば9月に民主党は代表選、自民党は総裁選で政局はいったんリセットである。財務省の敗北は明白で、勝次官も交代するだろう。小沢無罪判決は野田が直面している政局のガチンコ度合いを強めた。ここから「一寸先は闇」だ。
野田は1月の施政方針演説で「『日本再生元年』となるべき本年、私は、何よりも、国政の重要課題を先送りしてきた『決められない政治』を脱却することを目指します」と述べた。まさに、そうしてほしい。野田自身が「決められない」のでは、せっかくの大見得も単なる漫画になってしまう。
もしかしたら、このセリフも財務省があらかじめ、こういう展開を読んで野田を型はめしたのかもしれないが…。
(文中敬称略)
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