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「狂った牙〜最強権力特捜検察の盛衰」第1回〜青木理氏〜週刊ポスト2012/05/04・11号 
http://www.asyura2.com/12/senkyo129/msg/330.html
投稿者 赤かぶ 日時 2012 年 4 月 25 日 07:12:51: igsppGRN/E9PQ
 

「狂った牙〜最強権力特捜検察の盛衰」第1回〜青木理氏〜週刊ポスト2012/05/04・11号
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11232570293.html
週刊ポスト 2012/05/04・11号 :平和ボケの産物の大友涼介です。


秋の冷たい霜。夏の烈しい日差し。「秋霜烈日」(しゅうそうれつじつ)とは、刑罰や権威が厳しく厳かであることを表し、日本の検察官記章の呼称でもあった。

だが一昨年9月の大阪地検FD改竄事件に端を発する冤罪捜査の連鎖は、「検察=正義」幻想を霧消させ、記章の輝きは瞬く間に失われた。

54年の造船疑獄、76年のロッキード事件、88年のリクルート事件。戦後検察の存在感は、特捜部によって高められていったといっていい。

時の宰相まで律しようとした彼らは、長らく検察権力の”牙”だった。だが4月26日の小沢裁判で国民に裁かれるのは巨悪政治家ではなく、正義の象徴とされていたその牙だ。

ジャーナリスト青木理氏が、特捜検察の”源流”から”落日”までの半世紀を烈しく抉り取る。


■「何でもできちゃう組織だよ」

ある検察関係者が私に言った。

「病巣は、あんたが思ってるよりずっと深いんだよ」。そう言いながら示されたのは幾通かの文書。いずれも東京地検特捜部の内部で作成された捜査関係資料だった。

資料作成日は2010年(平成22年)の4月末から5月19日にかけて。このうちの一通こそ、特捜部検事が供述を捏造し、虚偽をでっち上げたと指弾されている曰く付きの文書である。

宛先は当時の東京地検特捜部長佐久間達哉。作成者は特捜部の検事だった田代政弘。<捜査報告書>と題された文書は、いかにも厳めしげな調子で次のようのに書き起こされていた。

<捜査報告書

(罪名)政治資金規正法違反
(被疑者)小沢一郎

上記被疑事件につき、平成22年5月17日、石川知裕を取り調べた状況は下記の通りであるので報告する・・・(以下略)>

本来なら検察を再び奈落の底へ突き落とすべき虚偽まみれの捜査報告書。作成者とされる検事・田代は既に総務総合研究所付とされ、検察組織の頂点に立つ検事総長・笠間治雄は「きっちり検証する」と宣言、検察自身による内部調査が進行中と伝えられる一方、最終的には真相をうやむやにしたまま頬被りするだろう、との見方が強い。

だが、この虚偽報告書をめぐっては確かに、いまだほとんど語られていない深刻な病巣が潜んでいる。その中身へと分け入っていく前に、虚偽報告書が作成されるに至った経過について、ごく簡単におさらいしておく。

*** ***

民主党代表だった小沢一郎を標的とする東京地検特捜部の捜査は、今から振り返ってみても、あまりに異様な彩りに満ち満ちていた。小沢の公設第一秘書だった大久保隆規を特捜部が電撃逮捕したのは09年3月。特捜部は以後、衆院議員となっていた元秘書の石川知裕らも次々逮捕し、本丸=小沢に狙いを定めた捜査を一年以上にわたって執拗に繰り広げた。

特捜部が当初描いた筋書きはこうである。小沢は中堅ゼネコンの水谷建設などから違法な裏献金を受け取っており、それはダム建設受注に便宜を図る見返りだった疑いが濃い・・・。

しかし、特捜部がいくら足掻いても、そうした事実の裏付けは取れない。最終的に小沢にかけられたのは政治資金収支報告書への虚偽記載容疑。しかもカネの出入りに関する期日のズレという、あまりにショボイ形式犯的な内容に過ぎなかった。

余計な話であることを承知の上で断っておくが、私自身は小沢という政治家を好まない。ひどく強権的に見える振る舞いや政治手法にせよ、かつて自自公体制下の与党トップとして数々の治安法導入の旗振り役となった経歴にせよ、はっきり言えば嫌悪の対象であり、小沢に過大な期待を寄せているらしき人々の気持ちが理解できない。

ただ、特捜部による小沢捜査は、戦後初の本格的政権交代を目前に控えた時期、政権奪取を窺う野党トップを狙い撃ちするかのように繰り広げられた。いつもながら検察ベッタリの姿勢に終始した新聞やテレビメディアはともかく、戦後政治の分岐点を左右しかねない特捜の強引捜査に疑念と不審の声が渦巻いたのは当然だったろう。

結局のところ特捜部は、小沢立件を断念した。だが、今度は検察審査会(検審)が暴走を始めた。市民団体からの申し立てを受けた東京第五検審は小沢について、収支報告書の虚偽記載で石川との共謀があったと断じ、二度にわたって「起訴相当」と議決し、強制起訴されることとなったのである。

検審とは本来、検察による恣意的な不起訴を監視するため設置された機関である。有権者からくじで選ばれた11人の審査員で構成され、被害者らの申し立てを受けて不起訴処分の妥当性を判断する。従来はその議決に法的拘束力がなかったものの、09年に制度が改められ、2度の起訴議決があれば裁判所指定の弁護士が検察官役となって強制起訴されることとなった。

つまり検審は、検察が何らかの政治的理由や組織的思惑などに基づいて起訴すべきを起訴しないようなケースを想定し、市民目線でこれをチャックすることを本旨としている。この大原則に従うなら、小沢を強制起訴した第五検審の議決は、検審制度の目的とは明らかに相反するものだった。特捜部は恣意的に小沢を不起訴としたのではなく、むしろ小沢を捕らえるべく執拗な捜査を続けたのに、ショボ過ぎる”疑惑”しか掴み出せず、失敗捜査の果てに起訴断念に追い込まれたのが実態だったからである。

だが、ここで検審議決を批判するだけでは問題の本質を見誤る。検審の暴走の背後には、検察にベッタリ寄り添って特捜部の提灯持ちに終始したメディア報道があったし、さらに言うなら、東京地検特捜部が検審の暴走を誘発する仕掛けを巧みに施していた疑いが強いのである。

小沢を狙った捜査の”踏み台”として逮捕・起訴された石川知裕は、特捜部の取り調べを受けた際、担当検事から次のような台詞を言われたと私に教えてくれた。

「石川さん、ここ(検察)は恐ろしい組織だ。何でもできちゃう組織だよ」

そして、こうも告げられたという。

「たとえ今回、(小沢が)不起訴になっても、検察審査会で間違いなく起訴議決になるよ」

結果は、取り調べ検事の言う通りになった。そのカラクリを知るため、冒頭に紹介した虚偽報告書に話を戻す。


■単なる”コピペ”ではないか

問題の虚偽報告書が作成されたのは10年5月17日。このしばらく前、第五検審が小沢について一度目の「起訴相当」議決を出し、東京地検特捜部は再び石川から事情聴取した。これを受けて報告書は作成されたのだが、そこには例えば、石川自身の供述としてこんな一節が刻まれている。

<私が、「収支報告書の記載や定期預金担保貸付については、私自身の判断と責任で行ったことで、小沢先生は一切関係ありません。」などと言い張っていたら、検事から、「貴方は11万人以上の選挙民に支持されて国会議員になったんでしょ。そのほとんどは、貴方が小沢一郎の秘書だったという理由で投票したのではなく、石川知裕という候補者個人に期待して国政に送り出したはずですよ。それなのに、ヤクザの手下が親分を守るために嘘をつくのと同じようなことをしていたら、貴方を支持した選挙民を裏切ることになりますよ」と言われちゃったんですよね。これは結構効いたんですよ。それで堪え切れなくなって、小沢先生に報告しました、了承も得ましたって話したんですよね>

いかにも臨場感に溢れ、小沢の共謀を裏支えする供述と思えるが、実際の取り調べでこのようなやり取りはなかった。石川がこの聴取を密かに録音していたため、後の小沢公判で報告書の供述捏造が証明されたのである。

だが、田代の上司だった当時の特捜部副部長齋藤隆博は、この虚偽報告書を大量に引用して<捜査報告書・・・再捜査の結果を踏まえた証拠の評価等について>と題する文書を作成し、田代の虚偽報告書とともに第五検審へ提出していた。しして第五検審は同年9月に2度目の「起訴相当」を議決した。

驚くべきは、ここからである。特捜部副部長の齋藤が虚偽供述を大量引用して作成した<捜査報告書>と、第五検審が「起訴相当」と判断した議決書の両者を仔細に比較すると、まったく同じ文書が散見されるのである。例えば、小沢と石川が政治資金収支報告書に虚偽記載したとされる4億円の出所について、齋藤の<捜査報告書>はこう書いている。

<小沢が本件4億円の出所について明らかにしようとしないことは、小沢に本件不記載・虚偽記入に係わる動機があったことを示している>

一方、第五検審の議決書はこうだ。

<被疑者が本件4億円の出所について明らかにしようとしないことは、被疑者に収支報告書の不記載、虚偽記入に係わる動機があったことを示している>

「小沢」を「被疑者」と置き換えた程度の差異しかなく、まったく同一の文章といってもよいだろう。同じような部分は他にもある。

*** ***

<年間約450万円もの金利負担を伴う4億円もの債務負担行為の趣旨・目的を理解しないまま、その融資申込書や約束手形に署名したとの点については、極めて不合理・不自然である>(斉藤の捜査報告書)

<年間約450億円もの金利負担を伴う4億円もの債務負担行為の趣旨・目的を理解しないまま、その融資申込書や約束手形に署名・押印したとの点については、極めて不合理・不自然である>(第五検審の議決書)

*** ***

<このような銀行借入を行うことを了承して自ら融資申込書等に署名している以上、当然に不記載についても了承したものと認められる>(捜査報告書)

<このような銀行借入を行うことを了承して自ら融資申込書等に署名・押印している以上、当然に不記載・虚偽記入についても了承していたものと認められる>(議決書)

*** ***

もう十分だろう。どうみても、捜査報告書の丸写しである。一部にごく微細な差異があっても、単なる”コピペ”ではないかと疑いたくもなる。

一般市民で構成される検審には通常、審査補助員としてベテラン弁護士がつく。議決書を起案したのがこの弁護士かどうか判然としないが、「起訴議決」の根底には、特捜部副部長が作成した<捜査報告書>の誤導が埋め込まれている。それも、捏造供述がちりばめられた虚偽報告を土台とする極めて重大な誤導、である。


■特捜にあらずんば人にあらず

当然の話ではあるが、田代報告書の虚偽が発覚したことを受け、小沢公判では検察官調書が軒並み却下された。注目の判決は4月26日に言い渡されるが、こうした実態を踏まえれば、無罪を言い渡すよりもむしろ、強制起訴自体が誤っていた・・・つまり「公訴棄却」の判断を下すのが理に適っているというべきだろう。

しかし、なぜ特捜部は虚偽供述を弄してまで検審の暴走を誘発しようと謀ったのだろうか。冒頭の検察関係者は、こんなふうに語っている。

「おそらく小沢捜査を主導した(東京)地検幹部の歪んだプライドだろう。日本の検察は基本的に『有罪判決が得られる高度な見込みがある場合』に限って起訴するという原則を維持してきた。これに従えば、小沢案件はとても起訴できる代物じゃない。しかし、それでは小沢捜査を執拗に繰り広げてきた地検幹部の面子が潰れる。ただ、検審が強制起訴してくれれば、世論や社会は特捜の側に立っているじゃないかという強烈なアピールになる。虚偽報告書の作成は、田代の一存でやったことじゃないはずだ・・・」

真相は分からない。だが、次々と発覚する特捜検察の出鱈目かつ乱暴極まりない所業に背筋が薄ら寒くなるのは私だけではないだろう。大阪地検特捜部では証拠の改竄という絶対禁忌を平気で突き破り、その直後には東京地検特捜部が虚偽報告書で検審の強制起訴を誘発する・・・しかもそれは、検察をチェックするため存在する検審制度の根幹すら蔑ろにするものだった。

それにしても、いったいどうして特捜検察はここまで根腐れたのか。この疑問をぶつけるため、私は幾人もの大物検察OB=ヤメ検のもとを訪ねた。最初に会ったのは宗像紀夫。今年で70歳となる宗像は、68年から04年まで約36年間の検察在任中、その3分の1にあたる12年以上もの時を東京地検特捜部で過ごし、主任検事としてリクルート事件などを、特捜部長としてはゼネコン汚職や下水道事業団談合事件などを指揮している。いわば、近年における「ミスター特捜」の代表的人物と言っても差し支えないだろう。

その宗像は、東京・新宿区内の繁華街近くにある自身の事務所でインタビューに応じ、こちらが驚くほど率直な話を聞かせてくれた。

青木 特捜の小沢捜査をどう見ますか。

宗像 「あんなことをやっていいのか、って私なんかは思います。その捜査はまあ、失敗捜査でしょう」

青木 やはり失敗捜査ですか。

宗像 「政治資金規正法違反みたいなもので引っ掛けて、政治家をやるべきじゃないと私は思う。政治資金収支報告書への虚偽記載なんていうのは、形式犯だっていうのが私の見解です」

青木 では、最近の検察不祥事、たとえば証拠改竄や捜査報告書の捏造はどう見てますか。

宗像 「驕りでしょうか。外から見るとわかるかもしれませんが、検察の中にいると、特捜にあらずんば人にあらずというようなところがありますから、驕りのようなものが出てしまっているように思います。だって、検察の力の強さは、すごいものですから。恐いものがないんですから」

青木 恐いものがない?

宗像 「国税だって、警察だって、何だって(恐くない)。いいですか、すべての刑事事件は全部、検察を通って処理されるんです。刑事事件について起訴できるのは検察だけですから」

宗像のこの発言については、若干の補足説明が必要だろう。


■牙が消えれば「張り子の虎」

日本の刑事司法は、刑事事件に関して裁判所に審判を求める権限、すなわち「公訴権」を、原則的に検察が独占している。これを「起訴独占主義」と呼ぶが、つまりは警察だろうが国税だろうが、あるいは公正取引委員会や証券取引等監視委員会といった準捜査機関だろうが、地検にそっぽを向かれてしまえば被疑者を裁判にかけるこおtができない。

加えて検察は、刑事訴訟法が百九十一条で<検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる>と定めるところにより、独自の捜査権限まで付与されている。これを踏まえたうえで、再び宗像との対話に戻ろう。

青木 国税も警察も恐くない上、メディアも検察を批判できませんね。

宗像 「特捜がいろいろな事件を(独自捜査で)やりますね。社会的に(影響の)大きな事件をやる。この情報っていうのは、(把握しているのが)特捜検事の一握りに限られるわけです。警察みたいに末端まで回って情報を集められるならいいけれど、(特捜事件の場合は)10人ぐらいの人しか情報を持っていない。だから、特捜は情報価値がものすごく高い。情報の価値がものすごく高いっていうこおてゃ、マスコミとの関係で優位に立てるんです」

青木 つまりメディアも恐くない

宗像 「恐くない」

青木 そして警察も、国税も、その他の機関も・・・。

宗像 「恐くない」

青木 では、立法府はそうですか。つまり政治ですが。

宗像 「政治なんて恐くないですよ。政治権力を持っている人は強そうに見えるけど、対検察との関係でいったら・・・」

青木 まったく恐くないと

宗像 「だって、こっち(検察)は一つの大きな事件をやれば、例えばリクルート事件のような捜査をやったら、どの党のどの政治家にどのくらいのカネがいってるかって、全部分かってしまうんですよ、全部。ものすごいですよ、これは・・・。だから、権力の濫用に気をつけなければならない」

宗像の極めて率直な話に耳を傾けながら、私の頭の中にはぼんやりとひとつの言葉が明滅していた。

最強権力。そう、日本の検察組織とは、まさに最強権力ではなかったか。

警察も国税も政治も、メディアも恐くない。裁判だって、検察が起訴すれば99%超が有罪だ。この現状を逆に捉えるなら、国家の権力装置である検察は外部からのチェック機能がほとんど存在しないことを意味する。

その力を生み出す最大の源泉は、宗像も語る通り、特捜検察にある。特捜を擁しているからこそ、検察組織は文字通りの「最強権力」たり得てきた。日本の検察組織における特捜部の意味と役割について、天皇の認証官である高検検事長まで上り詰めた大物の検察OBの一人が、本連載のための取材を始めた私にこう明かしてくれたことがある。

「検察組織において特捜部は、いわば『最強の武器』なんです。ちょっと文学的に言えば、特捜は検察にとっての”牙”といえばわかりやすいでしょうか。特捜という”牙”があるからこそ、検察は強大な権限を維持できるんです」

これと同じ比喩を使った男がもう一人いる。部下の証拠改竄を知りながら隠蔽したとして逮捕・起訴された大阪地検特捜部の元部長・大坪弘道である。大坪は最近、『サンデー毎日』のインタビューでこう述べている。

「『特捜部は検察の牙』。これが私の持論です。(略)これが巨悪への抑止力になっていた。牙が消えれば、検察は『張り子の虎』になっていく」(12年4月15日号)


■最強の捜査機関を作った2人の男

煎じ詰めてしまえば、いかに検察といっても、所詮は行政組織の一部に過ぎない。ただし検察は、極めて特殊な準司法機関とも位置付けられ、他省庁とは異なる独自の組織形態を取り、国家の刑事訴追機能である公訴権を独占することで警察や国税といった権力機関よりも圧倒的な優位に立っている。しかも、特捜という「牙」を持つことで、本来はチェック役を果たすべき立法府=政治はもちろんのこと、ジャーナリズム=メディアまでをもひれ伏せさせることができる。

結果、検察組織は誰一人として反旗を翻すことができない最強権力と化し、その状態が長く放置されてきた。だとするならば、イギリスの思想家アクトンの名言「権力は腐敗する。絶対的権力は、絶対的に腐敗する」を引き合いに出すまでもなく、最強権力たる検察が堕落し、腐敗臭を発するのは必然だろう。おそらくその腐臭は、相当に早い時期から内部に漂っていたはずである。

私は心底から知りたいと思った。この最強権力はいつ、誰が、どのようにして築き上げてきたのか。そして最強権力と化した検察はいつから堕落し、耐え難い腐臭を放ち始めたのか。

戦後検察の源流を辿りつつ幾人もの検察OBへの取材を積み重ねてみると、見えてきたのは2人の男の影だった。いや、もっと正確に記すなら、特捜検察を軸とする戦後検察の骨格を作り上げた一人の強烈な男と、その男の”牙”として暴れ回ったもう一人の男の姿、というべきだろう。

馬場義続と河井信太郎。戦後間もない時期に「経済検察」の雄として急速に頭角を現した馬場は、任官以来一度も東京を離れることなく出世を重ね、検事総長にまで上り詰めるという異例の栄達を遂げた戦後検察の大立者である。総長在任は64年から67年まで。それ以前は東京地検や東京高検の幹部を長く務め、47年に「隠退蔵物資事件捜査部」として発足した現在の特捜部を”最強の捜査機関”へと育て上げるのに決定的役目を果たした。

その場場の信任を一身に受け、特捜の現場で豪腕を振るったのが河井である。44年に検事任官した河井は、発足長後の特捜部に配置され瞬く間に頭角を現し、昭電事件や造船疑獄といった超大型事件の捜査を最前線で主導した。検察内部でもさまざまな評価はあるが、多くの特捜検事の間では「特捜の鬼」などという枕詞とともに今なお”神格化”されている。それはマスメディアでも例外ではなく、検察絡みの不祥事案が起こるたび、新聞などには「特捜の鬼=河井」を懐かしみ、賛美する記事が登場する。

たとえば大阪地検特捜部での証拠改竄事件が発覚した直後の一昨年秋、『朝日新聞』の名物コラム『天声人語』はこう書いた。

<「指揮官の心構えによって、事件は生きもすれば、死にもする」。特捜の鬼、河井信太郎の言葉だ。戦後出来立ての東京地検特捜部に30代半ばで加わり、多くの疑獄や汚職事件を手がけた。巨悪をえぐる組織の土台を築いた、特捜部育ての親である/河井は「部下には十分意見を述べさせよ」「無理な譲歩や妥協は求めるな」「信ずるより確かめよ」と、上司の心得も残している。あの世で太い眉をひそめているに違いない>(10年10月3日付、一部略)

あるいは、刑事司法改革が叫ばれて裁判員裁判が導入された時期、『読売新聞』は夕刊一面のコラム『よみうり寸評』でこう書いている。

<「人に聞くより者を見よ」特捜の鬼といわれた河井信太郎検事の著書「検察読本」にある。捜査は自白を求めるのではなく証拠の収集と検討が第一という捜査官への戒めだ/「取り調べは真剣勝負」「自白は取調官の人格の反映」「誠を相手の腹中におく」「相手に言いがかりをつけられる言葉を残すな」「先駆けの功名心はさもしい」・・・が取調官の心得(検察読本)/だが「鬼面仏心」の取り調べは一朝一夕にはできない>(06年5月12日付夕刊、前同)

馬場と河井。この二人が牽引し、すべての骨格が築き上げられた特捜検察。だが、その深層を源流にまで遡りつつ追っていくと、「巨悪を抉る正義の組織」などという評価が虚像に過ぎず、ハリポテの神話ですらあったことが浮かび上がってくる。現在の特捜検察から噴出した腐臭の根は、すべて源流の中に潜んでいた。

(文中敬称略 以下次号)


 

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コメント
 
01. SOBA 2012年4月25日 07:48:07 : LVbi13XrOLj/s : zxOAE6W46g
 
 
最後から二段落目、

>「人に聞くより者を見よ」特捜の鬼といわれた河井信太郎検事の著書「検察読本」にある。捜査は自白を求めるのではなく証拠の収集と検討が第一という捜査官への戒めだ

証拠についてなら、
「人に聞くより者を見よ」ではなく
「人に聞くより物を見よ」では?

週刊誌を見ながら手入力して、漢字変換のミスを見逃したのかな。それとも週刊誌自体が違ってる?あるいは、引用元のコラム『よみうり寸評』で間違ってる?あるいは河井信太郎検事の著書「検察読本」自体が間違ってる?って、そんな訳ないか(笑)
 
 


02. 2012年4月25日 07:56:11 : rTO4JCUfKk
>>01

引用した元ネタに明らかな誤字があれば「ママ(原文のまま)」とか表記するでしょ、普通。
それ以前に苦労して文字化した人に対して何の感謝もないどころか、
こんな揚げ足取りのコメントしか付けられないのは酷いです。


03. 2012年4月25日 08:24:22 : Q4gvQPHVYE
勉強になりました。
投稿に感謝します。

04. SOBA 2012年4月25日 08:30:17 : LVbi13XrOLj/s : zxOAE6W46g
 
 
>>02

お前は馬鹿か。

揚げ足取りではない、以下は最後の箇所で重要な意味を含む見逃せない文節だ。

俺が、

証拠についてなら、
「人に聞くより者を見よ」ではなく
「人に聞くより物を見よ」では?

と、疑問を持つのは当然だろう。

ここの所を見逃して赤かぶが元エントリーをコピペ投稿した事自体が最大の問題。
赤かぶが内容もよく読まずメクラ滅法コピペ投稿しているのが分かる。

この投稿の、↓元ブログ大友涼介氏に対しても失礼だ。

http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11232570293.html
週刊ポスト 2012/05/04・11号 :平和ボケの産物の大友涼介です。
 
 


05. 2012年4月25日 08:58:20 : VwMpY9l7I2

 検察、司法、はたまた、法務省本省は、ネットに止まらず、タブロイド紙や週刊誌等々に事実関係を暴露されても、なお、汚れ果てた体面を保つことを最優先し足掻き続けるのか? 誰のために、なんのために、どうして?

 竹崎博允最高裁判所長官と笠間治雄検事総長は、法の番人としての良心を発揮して、小沢裁判の公訴棄却、3人の元秘書の一審判決の破棄を即刻決断すべきではないか。それによって、地に墜ちた国民の信頼を辛うじてつなぎ止め、わが国の司法・検察の再建に向かって一歩を踏み出すことが貴殿たちに課せられた歴史的使命ではないか。それとも奈落の底にまで堕ちることを選ばれるか。

 後世にまで恥をさらし続けるかどうかの分岐点だ。ラストチャンスだと思う。最終列車に乗り遅れることは避けられたい。ブルートレインはエンジン全開状態で発車のベルを待っている。


06. 2012年4月25日 09:22:43 : JjSQKQLkmo
青木理さん??

07. 2012年4月25日 09:53:09 : WRcvzABPLo
いよいよ明日ですね。

冤罪事件の報告は。

これを読むと、司法に正義が残って居ると
期待出来ますが・・・

売国奴粛清チームなど作りたく無いですよね。


08. 2012年4月25日 10:25:48 : Ejc5Yj4gjo
特捜組織は解体。

解体しないと、日本は針路を誤る。
アメリカの影を突破らなくてはいけない。
それが大切なのだ。


09. 2012年4月25日 10:25:59 : rWmc8odQao
青木理氏は相変わらず検察犬であることは間違いないけれど、少し反省しているようすで、その点は高く評価できますね。
今後もこの調子でお願いします。

10. 2012年4月25日 12:35:04 : rWmc8odQao
こちらのコメントが青木理氏の今後の活動方針の参考になると思います。

山口一臣氏
「明日の判決で有罪か無罪かは政局的には大きな問題かもしれないけれど、事件としては小沢さん個人が政治資金収支報告の虚偽記載を指示したかどうかという話にすぎない。しかし、一連の検察の謀略的行為は国家の犯罪で、本来、ジャーナリズムが追及すべきはこっちだと思うんだけど、そうなってないね。」
https://twitter.com/#!/kazu1961omi/status/194961322960617472

ジャーナリストが真っ先に追わなければいけないのが国家による犯罪ですね。それから弁護士もそうだと思います。


11. 2012年4月25日 13:18:24 : snMUK84FIE
青木理もっともらしい投稿をよくするね
検察だけじゃないだろう裁判所もグルなのはアンタが一番理解してるだろう
其のグルの末端にいるのがアンタ達です。
所詮TVにでて偉そうなこと言ってる奴はロクな奴がいない。

12. 2012年4月25日 14:26:16 : encvnEx2OI
9、11  どこが検察の犬ですか?小沢さんが好きか嫌いかは別にして、善か悪かを判断して伝えるのが真のジャーナリストです。
 青木さんは、小沢さんの周囲の一部を除く、だらしない取り巻きよりも、我々に真実を訴えていましたよ。国会議員は国民の代弁者なのに何をしましたか?
 私はずっとこの「ニュース解説・眼」をリアルタイムで観ていました。

http://www.youtube.com/watch?v=o028cWQOdwU
[ニュース解説・眼 10/3推定無罪の限界]
http://www.youtube.com/watch?v=0kvHj0VP8pI
[10/10 異様な「小沢秘書」判決]
http://www.youtube.com/watch?v=WUUVZbQHXv8
[小沢氏強制起訴]
http://www.youtube.com/watch?v=n7M6agsL3PE&feature=BFa&list=PLF9D1D77111419890
[2/3検察誘導調書の発覚]
  
 朝日ニュースター「ニュースの眼」で、ジャーナリストの青山 理さんが小沢さんの強制起訴について解説しました。
 今回の検察審査会の市民の目線は【「市民」の暴走】として非常に危険。
起訴する権利があるのは検察だけ→起訴独占主義
起訴するか、しないかを判断する権利を持つのも検察→起訴便宜主義
検察が、有罪であっても情状酌量の余地があるとして不起訴にしたり、政治的な圧力から恣意的に不起訴にしたものを市民の目で検察をチェックするのが本来の検察審査会の役割。
 今回は、恣意的に不起訴にしたものではないのに、市民が検察役になってしまった稀有な強制起訴である。
 小沢さんを好きか嫌いか、良いか悪いかは別にして、政権交代が起ころうとしている時期に、突然その代表の秘書を逮捕して、一年をかけて徹底的に調べても起訴できなかったものを、しかも、告発内容を途中で変えて検察審査会が起訴した。
 しかし、今回の裁判では、秘書の調書は取り下げられて、証拠さえ揺らいで最初から起訴するに値しなかったのが、更に悪化している。
 こんなもので有罪にできるはずがないし、検察役の弁護士も頭を抱えているのではないか。
 今後の裁判員裁判でも、市民が刑事事件に参加する意味をもっと考える必要がある。


13. 2012年4月25日 16:20:25 : 8xRegRv4xk
元はと言えば「推認判決」を下した裁判官だ。

秘書の裁判で「法と証拠」を重視していれば無罪になっている。

小沢さんの裁判は、この推認裁判長のひとことでここまで来た。

秘書の裁判でも、そもそもまともな裁判官なら検察を責めるべき、この裁判官登石とかいったか、こ奴は何さまなのだ!

日本の裁判を貶めたの男「歴史に残る最低の裁判長」として世界に発信すべきだ!

「だろう、だろう」で牢屋に入れていたら、国民全員犯罪者だ、裁判官は2チャンネルのレベルか!


14. 2012年4月25日 19:21:11 : RsreIIQ23Y
花田と松田
蚊臭関係者は
機密費でもお金をもらえるなら
何でも書く卑しい売文屋だ
週刊蚊臭は立ち読みで済ませましょう
決して買ってはいけません

15. 2012年11月10日 00:18:08 : 3KdMzG5XfI
江戸川区医師、堀内利信受刑者も元、妻も 東京地検の刑事部検事 大友亮平の犠牲者です。 警察の員面調書をすべて隠して大友の作文の検面調書のみで事実誤認を作りあげたやつ。

詳細は yamada-san-san で検索ください、 検察の隠ぺい、などの証拠が
音声付で隠し撮りして公開していますよ。


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