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川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」
2012年04月13日(金) 川口マーン惠美
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32298
百戦錬磨のドイツ精鋭ジャーナリストすら翻弄し、核不拡散条約の矛盾をついた「凄腕」アハマディネジャド・イラン大統領にとって「友愛」鳩山元首相などやっぱり子供も同然だった
イランの核問題でヨーロッパは緊張している。日本は、北朝鮮の核でひやひやしているのであまりニュースにならないが、ドイツでは毎日トップニュースの一つだ。本当は、イランがくしゃみをしただけで病気になるのは、石油の中東依存度が際立って高い日本のはずなのに、危機感はあまりない。
4月8日の夜もニュースを見ていたら、この問題を協議するため来週末にイスタンブールで始まるはずの会議(国連安保理常任理事国5ヵ国とドイツが参加)が、始まる前からすでに紛糾している様子が報じられていた。オバマ大統領はこの会議で、イランが地下核施設を閉鎖するよう提案するらしいが、イランはそういう要求は出たとしても呑めないと断言。まあ、考えてみれば、当たり前だろう。
イランは、自国の核開発は平和利用のためだと常に主張している。もちろんアメリカとイスラエルは信じず、平和利用ならば、なぜに強固な要塞を作って、その中でこそこそやっているのだと考える。アメリカはすでに、この超堅固な要塞を破壊できる超強力なミサイルを開発したとも報じられ、ニュースでその映像も出ていたが、ちょっと嘘っぽい。戦争になどなれば、中東もヨーロッパも被害甚大だ。
ただ、イスラエルが焦っているのは確かだ。これ以上無為に時間が経過して、イランが本当に核兵器を手にしてしまっては大変なことになる。運がよければ、永代イランに隷属、運が悪ければ、国が無くなる。だから、そうなる前に単独でもイラン攻撃に乗り出すつもりらしいが、アメリカは今のところ、一緒に出撃しようとは言わない。アフガニスタンやイラクから必死の思いで撤退している最中なのに、新たに中東へ兵を進めることは難しいのだろう。
ウィキリークスに暴露された天野事務局長の発言
去年11月、IAEA(国際原子力機関)は、イランが核兵器を製造している証拠をつかんだというレポートを提出した。資料はアメリカが提出した。亡命中のイランの反政府勢力が、イラン政府から盗んできたというパソコンに入っていたデータだそうだ。
それ以来イラン問題は沸騰しているのだが、湾岸戦争の時だってアメリカは、イラクは大量殺人兵器を所有しているという報告を根拠に戦争をはじめ、結局、それはでっち上げだったのだから、今度もあてになるかどうかわからない。ひょっとすると、イランに対する世界の警戒度を高め、制裁を強めるための作戦かもしれない。
しかも、IAEAの現在の事務局長、天野之弥氏は外務官僚で、「高官人事からイランの核兵器開発疑惑まで、あらゆる戦略的な重要決定について、断固として米側に立つ」と言っていたことが「ウィキリークス」により暴露された人物だ。彼のレポートの内容がアメリカの意図に沿っていたとしても、さして不思議はない。
いずれにしても、イスラエルのポーズもアメリカのポーズも、ニュースに出ているものなど100%は信じられない。真実は水面下で進んでいるはずで、ちょっと気味が悪い。
と、そう思いながら、そのきな臭いニュースを見ていたら、突然、晴れやかな笑顔でイランのアハマディネジャド大統領に右手を出しながら近づく鳩山元首相が出てきたので、私は腰を抜かすほどびっくりしてしまった。あまりにも現状にふさわしくない笑顔だ。
いったい何をしに行ったのかと耳を澄ますと、アナウンスは、「日本の代表団に対してアハマディネジャド大統領は、新しく始まる核問題の協議が難しいものになるだろうということを告知した」の一言。要するに、特記に値するべき事柄は、何も話し合われなかったに違いない。
慌てて日本のニュースを検索したら、鳩山氏は自民、民主、アメリカなど各方面の反対を振り切って出発した模様だ。氏のホームページには、「本問題が一朝一夕に解決しがたいことは当然ながら、少なくとも国際社会の声を届け、問題解決に向けた環境整備の一助となればと考えています」と書いてある。ここまで問題がこんがらがっているのに、自分が事態打開を図れると考えているのは立派だが、非現実的。お得意の「友愛」とはいえ、米国とイスラエルとイランの間で友愛の架け橋になろうというアイデアは、あまりにも幼稚だ。
用意周到なインタビュアーすら翻弄
去る3月19日、ZDF(第2ドイツテレビ・全国版の公共放送局)が、イランのアハマディネジャド大統領の単独インタビューに成功した。まず、言っておかなければいけないのは、ドイツにおけるインタビューのシビアさだ。特に政治家が相手となると、インタビュアーは驚くべき辛辣さで切り込む。そして、相手が傷ついたと見ると、今度はそこに塩をなするような残酷な質問。また、相手が答えているあいだは、余計な相槌など打たずにただ静聴し、返答が終わると速やかに次の質問に移る。まるで真剣勝負を見ているようで、私はいつもドキドキする。
今回のインタビュアーは、精鋭ジャーナリスト、クラウス・クレーバーだった。インタビューを申し込んで2年待たされ、ようやく実現したものだ。彼にしてみれば用意周到。世間をあっと言わせるインタビューにするつもりであったろう。
しかし、その試みは、最初から行き詰る。まずクレーバーは、「なぜ、2年間拒否していたインタビューを、今、突然受け入れたか」という質問で始めたが、アハマディネジャドは、「今、沸騰している問題に対して、我が国の見解を申し上げたいので」などとは答えてくれない。まず、おもむろに、「神の名において」と彼は言い、インタビューを聴くすべての人に丁寧なご挨拶を述べた。そして、「ただ、あなたもご存じのように、時間を作ることは難しい。今日は、ようやくその願いがかなってとてもうれしい」と言った。
クレーバーは仕切り直す。「今、世界中がこの地域に注目している。当地に戦争の可能性が出てきたからだ。それについて、今日、メッセージはおありか?」 半分目を閉じたアハマディネジャドは静かに言った。「どの国から戦争の可能性が出てきたのか? なぜだ?」
クレーバーは、不意を突かれたように、「あなたも知ってのとおり、イスラエルが貴国を威嚇している。核問題を解決する方法が他になかった時の選択肢として」と説明。そんなことは世界の誰もが知っているとクレーバーは思っていたはずだ。しかし、アハマディネジャドにとっては、それは敵の見解であり、周知の事実などではない。
「イスラエルはなぜ我々を威嚇しなければいけない?」とアハマディネジャド。再び不意を突かれ、「貴国が今日まで核プログラムの詳細を公開することを拒否しているからだ」と答えるクレーバー。これではもう、どちらがインタビューしているのかわからない。
核不拡散条約の根本的な問題
アハマディネジャドの質問は続く。「では、シオニストたちは、彼らの核プログラムを公開しているのだろうか? 彼らは核弾頭を250発持っているらしい。違うか?」
インタビュー始まって5分も経たずして、すでに主導権を握るアハマディネジャド。「イスラエルは、核不拡散条約の締結国ではない。だから、すべてを明らかにする必要はない。しかし、イランにはその義務がある」と答えた時点で、クレーバーは罠にはまったと感じたはずだ。そこへ、アハマディネジャドはすかさず切り込む。「ということは、イスラエルは核不拡散条約に加盟していないから好きなことができるということか?」
「その通りだ」と答えるクレーバー。この一瞬、彼の頭で、そして、この会話を聞いていたすべての人の頭で、核不拡散条約の根本的な矛盾が明確に浮き彫りになった。
核不拡散条約は、1968年、核軍縮を目的に国連で調印された。これにより、世界の国々は、核兵器国と非核兵器国の2種類に分けられた。核兵器国とはすでに核を持っていたアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5国。この5国は核を他国へ譲渡してはならず、また、「誠実に核軍縮交渉を行う義務」がある。一方、非核兵器国は、核兵器の製造、取得が永久に禁止され、IAEAによる保障措置を受け入れることが義務付けられている。
インドとパキスタンは、条約が不平等であるとして加盟しなかった。したがって、両国とも今では核保有国だ。イスラエルはというと、核を持っていることを肯定も否定もしないが、やはり未加盟国であるので、アハマディネジャドの言うとおり、好きに核兵器を持てる。
北朝鮮は加盟国であったが、IAEAの査察が鬱陶しくなり、脱退してしまった。一方、核兵器国5国は、今まで誠実に核軍縮など行ってはいない。つまり、事は簡単。新たに核兵器を持ちたい国は、この条約を破棄してしまえばいい。クレーバーは「その通りだ」という言葉で、まさにその矛盾を肯定したのである。
すでに被害が出始めた鳩山元首相のイラン訪問
結論から言うと、クレーバーはアハマディネジャド大統領から、何一つ引き出すことはできなかった。いや、違う。アハマディネジャドの力を、ドイツ国民に十分知らしめたというべきだろう。アハマディネジャドの目は、いつしかしっかりと見開かれ、滔々と演説している。詭弁と片づけることは簡単だが、その論理は決して破たんしていない。そして、話しながら、その目がいつも少し笑っているのが不気味だ。彼によれば、現在の緊張状態の真の原因は不平等で、いくつかの特定の国が世界全体を治めようとしているからだという。それは、はたして間違っているだろうか?
「イランは1万年の歴史と文明を誇る平和な独立国だ。いったい誰がイラクを占領した? アフガニスタンは? ガザで争っているのは誰だ? この緊張状態を作ったのはイランではない。なのに、なぜシオニストたちは我々を脅すことができるのだ? なぜ、ヨーロッパはイランを敵視する? 世界には、シオニストは他の国を脅してもよいという不文律でもあるのか?」
45分の全インタビューを紹介できないのがとても残念だ。
さて、鳩山氏のイラン訪問は、翌日すでに被害が出始めた模様。共同通信によると、イランの大統領府は、鳩山氏が会談の中で、「IAEAがイランを含む特定の国にダブルスタンダード的な対応をとっていることは不公平だ」と語ったと発表した。9日に帰国した鳩山氏はびっくりして否定しているが、私の想像では、日本流の相槌を打ちまくって誤解されたか、故意に利用されたかのどちらかだ。脇が甘いとしか言えない。
いずれにしても、クラウス・クレーバーほどのベテラン猛者でさえ完敗を喫したアハマディネジャド大統領を相手に、外交音痴の鳩山氏が太刀打ちできたとは思えない。沖縄の前科もあるし、被害が拡大しないことを祈るばかりだ。
それにしても、いったい誰が鳩山氏をイランへ送り込んだのだ? 石油がほしい商社? あるいは、鳩山氏に日イ関係を悪化させて、撤退した日本企業の後釜を狙う中国? 鳩山氏は現在、外交担当の最高顧問だそうだが、民主党はいったい何を考えているのだろう。
コメント:これが中東の政治家。平和な島国・日本との歴史の違いを痛感。
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