http://www.asyura2.com/12/senkyo128/msg/908.html
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岩手県11年。宮城県19年。震災で生じた瓦礫を、県内の処理施設だけで処理する場合に要する年数である。従って、震災1年目に当たる3月11日に、野田首相は被災地を除く全国44都道府県での処理を要請した。だがそれに応じたのは、僅かに東京都や北海道などで、その数は十指にも達していない。そして、3月末までに処理された瓦礫量は、全体の8%強だと報道されている。
では、放射能汚染された福島県下の瓦礫ではなく、岩手県や宮城県の瓦礫が、なぜ受け入れ拒否に遭うのだろうか。神奈川県では、県知事が岩手県宮古市の瓦礫を受け入れ、横浜市や川崎市の焼却施設で処理し、県が管理する横須賀市にある焼却灰処理場に焼却灰を埋め立てる方針を打ち出したが、焼却灰処理場のある地元が反対し頓挫している。これが、受け入れ拒否の典型的なケースではないかと思われる。
既に紹介したが、横須賀市の地元町内会の会長は、「被災者の方たちを援助したいという気持ちはあるが、風評被害を招くような放射性物質の搬入については素直に受け入れられない」と述べている。これを「地域エゴ」とか、野田首相のように「協力しないのは非国民」とか非難している限り、問題は解決しない。なぜ、受け入れを拒否するのか、それが分っていない。「絆」などと言う綺麗ごとでは済まないのである。
横須賀の場合、次の5つの反対理由を挙げている。@震災がれきは放射能汚染されている。A焼却灰の最終処分場は危険な活断層の上にある。B県内のゴミ問題を解決するのが先である。C国からの補助金の流れが不明である。D別の支援方法がある。この5つの理由には、さらに細かな説明が添書されている。おそらく、岩手県と宮城県の瓦礫は放射能汚染されていないのだから、@は地域エゴだと批判されるだろう。
原発事故発生以前は、放射性廃棄物の基準は、100ベクレル/キロ以下であった。確かに岩手県から持ち込まれる瓦礫は、100ベクレル/キロ以下だろう。だが、放射性物質は焼却灰になると濃縮されるのも事実である。神奈川県下のある自治体で発生したゴミ焼却灰が、100ベクレル/キロを超え、他県(静岡県?)で受け入れ拒否されたとの報道もあった(毎日新聞神奈川版)。なぜ、そうなったか。
福島第一原発から排出された大量の放射性物質は、関東以北全域に降下した。東京都下だけで集荷したゴミの中にも100ベクレル/キロを超えるものがあったと、横須賀の地元説明会で報告されている。また横浜市や川崎市などの下水処理場の汚泥が、暫定基準値の8000ベクレル/キロを上回り、その処置に困っているのも事実だ。
従って、焼却灰が100ベクレル/キロを超えることは、充分予想されることだ。処が、原発事故後に、政府は焼却灰や下水処理場から発生する汚泥の放射性セシウムの暫定許容量を、一気に80倍の8000ベクレル/キロに変更した。これには誰もが疑問を持ったはずだ。また、瓦礫処理問題が起こると、地元住民は当然のことながら、政府の原子力安全行政に関心を持ちいろいろと勉強をすることになる。そして、再処理に係わる官僚の隠蔽事件や、大飯原発の安全評価への疑問を抱くことになる。
このような疑問が積み重り、さらに原発事故の責任を取って辞めるべき原子力安全委員長が依然として、安全行政に容喙している事実を知る。当然ながら政府を信用しなくなる。つまり底流にあるのは、政府への不信である。そして、その不信を増幅しているのが、Cの「国からの補助金の流れが不明」なことである。日本新党・田中康夫代表が言うように、無駄であり、その裏に利権の臭いがするからなのだ。
その結果、必然的にDの「別の支援方法がある」になる。しかも今問題になっている木質系瓦礫は、焼却以外に処理方法が無い訳ではない。筆者が知るだけでも、宮脇横浜国大名誉教授が提案した「森の防波堤構想」や、東京農大市川客員教授らが開発した木材の放射性物質を99%除去する「バイオエタノール製造技術」がある。これらを被災地で、雇用確保を兼ねた復興事業として考えない方が不思議なのである。
放射能の暫定許容量とは「直ちに健康に影響は無い」という値に過ぎない。また放射線医学では、放射能の閾値(しきいち)は分っていない。原発事故が収束ではなく、終息した暁には、放射性廃棄物の基準は100ベクレル/キロに復するはずだ。その時、暫定値で受け入れた焼却灰の永久保存地が、100ベクレル/キロ以下である保証は全くない。全国各地に放射性廃棄物により汚染された地域が生じることになる。
もし、焼却灰を5年とか10年の間、暫定的に保管するだけという話なら、瓦礫処理を受け入れる自治体は増えるだろう。つまり、瓦礫処理には長期ビジョンが全く欠けているということだ。今、野田首相が命懸けで遣るべきことは、2年後の消費税増税ではなく、目の前の瓦礫処理問題である。「非国民」だと詰ったそうだが、詰られるべきは、「野田首相、貴方ですよ」と言って、終わりとする。
http://www.olivenews.net/news_30/newsdisp.php?m=0&i=1
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