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■ 序
冒頭から私事で恐縮だが、消費税問題は、気が重くなり筆もなかなか進まないテーマである。
04年に阿修羅から身を引いた遠因が、消費税や財政に関する投稿活動にあったと思っているからである。消費税に関する投稿は、自身の理解力の不足と稚拙な表現力のせいで、共感をあまり得ることができなかったと記憶している。
それでも懲りずに、再び消費税にかかわる投稿を始めようと考えたのは、野田政権が進めている消費税増税政策が、あの「小泉改革」を超える破壊力で日本をとてつもない災厄に陥れると怯えているからである。
薄々なのか明瞭なのかはわからないが、そうなることも承知している財務省の官僚たちは、消費税増税政策にこめた真の目的を隠し、消費税増税は「社会保障の維持」や「財政再建」のためにどうしても必要というマヤカシの説明を主要メディアを使って繰り返すことで国民の歓心や諦めを誘っている。
消費税問題は、60年代から80年代にかけて高度経済成長と破格の国際競争力でその名を高めた日本が、現在のような姿になってしまった要因がなんであるかを解き明かす重要な鍵だと考えている。
一人でも多くの方に消費税問題を考えていただき、誤りの指摘や消費税増税擁護論も含め、実りのあるやり取りができればと願っている。
コメントをいただくのはこのスレッドでけっこうだが、勝手ながら、やり取りの場は「議論板」の補足的説明の投稿とさせていただきたい。
長文の投稿は避けたいと思いながらも、制度そのものが巧妙にカムフラージュされていることや消費税が経済社会のあらゆる問題に絡みついていることなどから、読んでいただく方にできるだけ誤解を生じないよう説明したいと思うと、能力のなさも手伝って、あっという間に長い文章になってしまう。
気は心のレベルでしかないが、長文を五部構成に分け、補足的な説明は「議論板」に投稿予定の『秘匿されている「消費税」の内実』シリーズや、シリーズ(1)の末尾にリストアップした「経済板」アップ済みの関連投稿を参照していただくかたちにさせていただいた。
● 消費税に関する基本
消費税のイメージは国民のあいだである程度共有されており、お読みいただく方と私のあいだで用語法などから齟齬をきたすおそれがあると思っている。
今回の投稿は消費税にかかわる次のような基礎的認識を前提に書かれていることを承知のうえでお読みいただければ幸いである。
消費税は、その名称が醸すイメージとは異なり、消費に課される税ではなく、欧州諸国でVATと同じように付加価値に課される税であり、最終消費者に負担や納税の義務があるわけでもない。
カテゴリー区分にそれほど意味があるとは思っていないが、消費税は、たばこ税などの間接税ではなく、法人税や所得税と同じくフローに課される「直接税」である。
消費税問題を考えるにあたって重要なポイントは、“売上税”や“仕入税”ではなく付加価値税であること、付け回し(転嫁)はあっても、負担や納税の義務は消費者ではなく付加価値を手にする事業者であることという二つである。
政府や主要メディアによる歪んだ広報活動の“成果”だと思っているが、消費税が買い物した金額に課される税だとか、消費税は購入者が負担するものといった“公認の錯誤”にとらわれていると消費税の本質が見えなくなってしまう。
予め釈明させていただくと、私は、経済的自由主義者でも政治的民主主義者でもなく、近代的な国家社会構造の存続を願う立場でもない。
恐慌や大不況に陥ったからといって国家社会構造が変わることはなく、逆に、国民は、ますます疲弊の度を強め、檻の片隅で身を縮めて生きていくことになると考えている。
そのような視点から現状を見たとき、残念ながら、デフレ不況から脱し歴史的現在にふさわしい国民生活の実現と維持に資する経済政策の実行を政府に求める他ないと思っている。
そのような判断から、それが、反自由主義的な経済政策であろうと、いささか不公平な政策であろうと目をつむるつもりでもある。
おかしな言い方だが、悪魔と呼ぶほど憎悪している消費税の増税が、ぎくしゃくしながらでも、そのような目的を達成するのに効果的な政策と判断したら、その理由を説明して消費税増税政策を擁護してもいいと思うくらいの“実利主義者”である。
経済問題に関するこれまでの投稿をお読みいただいた方ならご存じだと思うが、近代経済社会が活力を維持するためには、輸出額の緩やかな増加が不可欠だと考えている。それゆえ、政府が「国際競争力の回復や強化」に注力することに異論はない。
念のために補足すると、必要なのは、輸出額の緩やかな増大であって、貿易収支や経常収支の黒字幅増大ではなく、輸出量の増大でもない。輸出額の緩やかな増大のために緩やかな輸入の増大が必要なら、輸入の増加を忌避すべきではないとも考えている。
何はともあれ、経済成長そのものはたんなる手段でしかなく、経済政策の目的は、国民生活の底上げと安寧にあると考えている。
それゆえ、政府の政策が、国民全体に恩恵を行き渡らせるものではなく、特定事業者+αという限られた層にのみ恩恵を与えるものであれば受け容れられない。その結果が、経済社会の在り様をひどく歪ませてしまうものならなおさらのことである。
個々の企業が自ら努力して育てた果実を自分のものにすることは当然だが、政府の努力で実った果実を手にできるのは特定の企業に限られ、多くの国民は、逆に、そのあおりをくらって疲弊していくような政策はとうてい認めることができない。
また、官僚・国会議員・学者・大手メディア幹部などが、事実や意図を隠蔽し、ウソやマヤカシの言動を駆使し、根拠を示すことなく人々が惹かれるような美辞麗句を並べるといった手法で、特定の政策を受け容れるよう国民を誘導する動きも放置できない。
事実を開示し、様々な視点からの議論を尽くしたあとで多数から同意を得るのなら受け容れるが、原発と同じように、反発や反対を抑え込むことのみ考え、ウソ・ゴマカシ・お為ごかし・オドシ・隠蔽といった策謀を弄して押し切る手法は、「大東亜戦争」時代と同じで、それ自体が日本の将来を危うくするものと断じる。
● 消費税増税法案をめぐる政局
野田政権は、3月末に消費税増税関連法案を閣議決定し、国会に上程した。
野田政権から秋波を送られている自民党は、消費税増税法案成立への協力条件の一つとして解散総選挙をぶつけ、政権奪還の機会が早まることを期待しているように見える。
消費税増税をめぐる政局のポイントは、民主党に先行して消費税増税を公約にした自民党はともかく、小沢一郎代議士から橋下大阪市長まで、野田政権の消費税増税政策には反対でも、消費税そのものに反対というわけではなく、タイミング(経済状況との兼ね合い)や手順(歳出削減先行など)が反対の主な理由になっていることだ。
今回の消費税増税政策に強硬な反対姿勢を見せ、ごたごたのなかで国民新党から抜けた亀井前代表が新党構想で担ごうとしている石原東京都知事も、「財政再建」を消費税増税で進めることを望んでいる。亀井氏自身が、今回はともかく、先々の消費税増税までを否定しているわけではない。
小沢氏は、出演したテレビ東京の番組で(3月10日)、消費税10%を17年以上も前から主張していたと誇らしげに語り、先々は消費税増税が必要になるとも語っている。それはともかく、今回の消費税増税策には反対の意思表示をしている小沢氏には、政治力学的な観点から、最後まで反対を貫き通してもらいたいと思っている。
橋下大阪市長も、消費税そのものに反対ではなく、みんなの党の渡辺代表と同じように、消費税を丸ごと地方消費税にすることを主張している。
多段階で付加価値に課税される消費税が、最終小売り段階で課税される米国の売上税と同じように、地方の財源として機能するかと問われれば、難しいと答えざるをえない。
さらに「消費税還付制度」を考えると、豊田市(愛知県)や門真市(大阪府)など、人口規模はそれほどではないのに輸出有力企業の本社を抱える地方自治体は、消費税の税収がマイナス(持ち出し)になる可能性さえある。
そのような異様な現実に直面することで、消費税の存廃や“制度変更”が俎上にのぼる可能性もあるが・・・。
そうであっても、脱原発の旗幟を鮮明にしている橋下氏には期待を寄せている。
小沢氏や橋下氏の考え方とは相容れないものも多いが、原発と消費税の廃止が最重要課題と思っているがゆえの判断と理解いただければ幸いである。
かつては消費税の廃止を強く訴えていた共産党や社民党も、消費税がすっかり定着し税収規模も大きくなった現実を追認したのか、税率アップ反対レベルにトーンダウンしている。
(※ 社民党は、前身の社会党時代、自民党との連立で誕生した村山政権が97年消費税増税の地ならしをした“実績”がある)
政局に絡めて言うと、今回の消費税増税政策は、政党内でごたごたはあっても、有権者の選択や判断という民主的フィルタは通らないでことが進むよう、立法と実施のタイミングが調整されている。
消費税増税の予定スケジュールと現職衆議院議員の任期を考え合わせれば、消費税増税ができるだけ総選挙に影響を与えないよう配慮されていることがわかる。野田首相をはじめ民主党幹部は、そのような配慮を活かした国会対策に徹するだろう。
消費税増税の第一段階(3%アップ)は再来年14年4月に実施されることになっているから、次の総選挙のタイムリミット(任期満了)である来年(13年)9月の時点では、消費税増税はまだ実施されていない。
総選挙時点ですでに増税が実施されていれば、国民の多くが経済的負担の増加を痛感しながら投票所に向かうことになるが、実施の半年前なら、主要メディアが大騒ぎでもしない限り、痛みといってもぼんやりしたものであろう。
次の総選挙後の14年と15年の2段階で消費税税率が10%までアップされ、経済的苦境に追い込まれた国民のあいだから怨嗟の声が湧き上がっても、その次の総選挙は17年9月までなら先送りできる。
主要メディアも、今でこそ消費税増税問題を大きく取り上げているが、関連法案が成立してしまえば、消費税増税問題は“終わり”と決め込み取り上げなくなる。そういう主要メディアだから、来年9月の総選挙で、消費税増税問題を選挙の争点から外しても不思議ではない。
政党レベルはともかく、統治機構の官僚たちが何より避けたいと思っているのは、政権交代ではなく、明日にも実施したい消費税増税政策がお蔵入りになる事態である。
解散総選挙が増税法案成立前に消費税増税の是非を問うかたちで行われれば、解散総選挙を仕掛けた民主党の敗北は、主権者である国民が消費税増税法案を否決したことに他ならない。そうなると、別の政党が政権を継いでも、消費税増税を再びすぐに政策として取り上げるのは困難である。
自民党が民主党を超えるレベルで官僚機構の政治代行者であっても、民主党が消費税増税を争点に仕掛けた総選挙で、有権者にとって現在のところは有力な代替政党である自民党までが消費税増税を公約に掲げて戦うといった“茶番劇”は、有権者にとうてい受け容れられるものではない。
仮にそういった政治情況になれば、消費税増税反対派を一気に勢いづかせ、その動き次第では民主党多数派と自民党が共倒れになり、政界再編の大きなうねりが湧き起こるだろう。そうなって欲しいとも思うが・・・。
歴史的直観と経済論理の両方でスジが悪い「消費税増税」を争点として総選挙を仕掛けても、既得権益の象徴と見られた古めかしい「郵政」を民営化で刷新するというムードをつくれた05年の「郵政選挙」とは違い、メディアがいくら唆したとしても熱狂が再来する目はなく、野田民主党もしくは消費税増税派が勝利する可能性は低い。
早期の権力奪還を渇望している自民党は衆議院解散を期待しているようだが、このような見方から、消費税増税法案の成立前に衆議院が解散されることはないと考えている。
消費税増税法案の成立と引き替えの“話し合い解散”も、そのあとすぐに実施される総選挙で、民主党と自民党が揃って袋叩きに遭う危険性がある。有権者に大きな反発が生じると、やや有利と思われる自民党も民主党も過半数を獲得できないという結果になり、悪いこととは言えないが、先が見えにくい政界再編に進んでいく可能性もある。
次回の総選挙は、解散しなければ、任期満了の来年9月まで先送りできる。
野田首相や民主党幹部は、消費税増税問題のみならず、原発事故問題も抱えていることから、総選挙はできるだけ先送りしたいと思っているはずだ。
ほとんどの政治家は、消費税増税に積極的に動いた政党は来る国政選挙で手痛い洗礼を受けると読んでいるから、消費税増税法案への賛否は違っても、(どうせいつかはやらなければならない)消費税増税のスケジュールを確定させてしまう法案は、野田政権の手で成立させてもらったほうが都合がいいと思っているだろう。
野田首相が泥をかぶることで、どの政党の誰かはわからないがあとを襲う首相は、成立した法律に従って増税を実施に移すだけで済み、消費税増税に踏み切った責任からは逃れられるからである。
既にシナリオは出来上がっていると思っているが、実際にありそうな結末は、内実は財務省官僚の仲介に頼るものだが、かたちとしては自民党の要求を呑むことで“話し合い可決”の合意に至るという政局ではないかと考えている
野田政権は、主要メディアとのタイアップで消費税増税容認の世論をできるだけ高めるよう務め、世論の動向にかかわらず頃合いを見て、“国家の大計”を盾に自民党・公明党とのあいだで“話し合い可決”の合意を得るという流れである。
民主党内反対派が小規模であれば、連立も視野に公明党と手を結ぶことで参議院を乗り切るという選択肢もあるが、現状で消費税増税法案を確実に成立させるためには、自民党多数派を巻き込まなければならない。
次の総選挙は来年9月までなら先送りできるので、“話し合い可決”というふざけた政局のほとぼりもゆっくり冷ますことができる。
時間による忘却のおかげで民主党も自民党も深手を負わずに済めば、来る総選挙でも、小沢氏を含む民主党と自民党がともに望む“どちらかが政権の主力”に就くという二大政党制的政治状況を維持することもできるだろう。
そのためにも、任期満了総選挙まで1年ほど猶予がある今年9月までに消費税増税法案を成立させようと動くはずだ。
“話し合い可決”は、09年総選挙での公約とのズレや歳出削減策の先行はともかく、小沢一郎代議士の処遇が大きなネックになるかもしれない。
政治生命を賭けると大見得を切った消費税増税法案成立のためとはいえ、自民党からの申し出に従って小沢氏を排除するというのでは、大義名分が立たないだけでなく、多数派自身が党の分裂を煽るという間抜けな構図を生み出してしまう。
こんなことを考えると、4月26日に予定されている東京地裁の判決は、消費税増税政局にも重大な影響を与えるものであることがわかる。
消費税増税派が、小沢裁判にどのような判決を期待しているか言うまでもないだろう。
元々が悪意に基づく“国策捜査”として始まり、強制起訴もその流れのなかから生まれたものであり、主要メディアから発信される内容も“小沢悪人”説で満たされてきた。そう考えると、最終の確定判決はともかく、一審で有罪判決を出すことにそれほどの障害があるとは思えない。
東京地裁で有罪の判決が出れば、以降の消費税増税政局で小沢氏の出番は限られる。そうなると、民主党多数派幹部は、小沢グループの分断や切り崩しなど嵩にかかった対応に走るだろう。
小沢氏が前回総選挙の前に首相になる可能性がある地位を捨てざるを得ない状況まで追い詰められ、09年総選挙で民主党の勝利を領導した鳩山・小沢の両氏がほどなく権力のメインストリームから放逐されるに至った背景の一つに、彼らの“反(非)消費税増税”があったと考えるのは穿ちすぎだろうか。
鳩山氏が母親からもらった裏献金は小沢事件と異なり明確に犯罪を構成するものだが、その種の話は民主党結成時から広く知られている“常識”であり、それが総理大臣就任から半年ほど経った10年の春になって大問題になったのはなぜかというのが問題なのである。
4月26日の東京地裁判決で無罪となり、控訴はあろうとも、小沢氏が消費税増税反対を旗印として表舞台で活躍できることを願っている。
政府と主要メディアが消費税増税法案成立に向け肩を組んで行う最後のキャンペーンは、低所得者とりわけ低額年金受給者をできるだけ多く増税容認派に変えるために、消費税増税の目的が社会保障の充実であることを必死に訴えるプロパガンダであろう。
消費税は、常々、所得が少ない人ほど負担(率)が大きくなる「逆進性」が問題視されている。共産党や社民党が消費税増税に反対する第一の理由も、より低所得の世帯ほどより生活が脅かされるという「逆進性」の問題であろう。
消費税は消費者が負担する税ではないが、付け回し(転嫁)による値上げで実質の購買力が低下し実質の可処分所得が減少するという“負担”は生じる。
一般的に、消費支出額の多寡は所得レベルの差で生じる。所得レベルが高ければ消費支出も増えるが、貯蓄や投資に回す割合や海外で消費に支出される割合が低所得者より大きいから、消費税増税で減少する額が元の可処分所得に占める割合は、所得の多くを国内消費に回さなければ生活できない低所得者層のほうが高くなる。
これが消費税の「逆進性」である。
このような現実を踏まえ、悪しき消費税増税法案への風当たりを減らす方策は、それが低所得者の生活を悪化させる政策ではなく、逆に、低所得者の生活を改善する政策であるように思わせるキャンペーンである。
消費税増税の金看板である「社会保障の充実」の目玉と言える唯一の政策は、「低所得者向け年金一律加算」であろう。
年金とその他の所得合計が77万円以下の人に、一律で月6千円(年間7万2千円)の年金加算を行い、年金保険料納付の免除手続きをしていた人には、免除期間に応じて、最大1万円強までの追加加算を行うという政策で、対象者はおよそ500万人と言われている。
この政策は、確かに、低い年金受給額のために生活が困難な人たちには一つの朗報である。
消費税が10%まで増税された段階で実施される政策だから、年間3万円ほどは消費税増税に伴い減少する可処分所得の補填でしかないが、年間4万円ほどは実質的に生活費が増える。
(※ 金額は加算対象者のなかで所得が最上位の人での推定。家賃は消費税非課税とされているが、消費税が増税されれば家屋などの維持に必要な経費が膨らむので、家賃引き上げか、家主が身を削るかの選択が生じる)
厚労省は、「逆進性」対策がもっと必要という民主党内の増税慎重派の主張に反論するかたちで、「年収300万円以下の高齢者夫婦世帯の場合、消費増税による負担増は年間2.4万円。だが一体改革で打ち出した低所得者への年金加算で、夫婦の所得は年14.4万円増える。低所得者に対する介護保険料の負担軽減が実現すれば、夫婦の負担はさらに年2.6万円程度軽くなる。可処分所得は差し引きで年間14.6万円増える」(日経新聞記事)という計算内容を提示している。
低額の年金受給者だけが低所得者というわけではないが、とりあえず厚労省が取り上げた年金受給者について考えてみる。
年金の一律加算の対象になる最高の年間所得は77万円だが、国民年金は満額給付額(保険料納付期間40年)でも年間76万8千円(月6万4千円)である。
国民年金満額受給者でも、年金以外の収入がなれば、38万円の基礎控除などを考慮しなくても、所得税上の公的年金に関する規定で所得額はゼロになる。
それ以前に、他に収入のない国民年金満額受給者(年間約77万円)でも、東京都の高齢者単身世帯向け生活保護給付額の年間合計およそ97万円よりずっと少ない可処分所得しかないのである。
さらに一律に加算される6千円(年間7万2千円)を考慮しても、生活保護給付額に到達しない。就労が難しいとの理由で申請すれば、不足分は生活保護として受給できる。
損得勘定だけで言えば、たとえ年金に6千円の加算があっても、国民年金満額受給者より生活保護受給者のほうが得なのである。
年金の一律加算で生活に余裕ができるのは、厚労省が例示したように、給与所得や不動産所得など他の収入を加えることで300万円近い収入があり、様々な控除で所得が77万円以下になるような年金受給夫婦世帯に限定される。
厚労省は、「逆進性」対策がもっと必要という主張に反論するためなら、例示した世帯の数と低所得者に占める割合をきちんと示すべきであろう。
よくよく考えれば、低所得者向け年金一律加算は、生活保護給付の一部肩代わりであることがわかる。
低所得者向け年金の加算は、生活が苦しくても、矜持が許さないとか恥だと思って生活保護を申請しない人にとっては恩恵でも、「社会保障の充実」と政府が胸を張れるような政策ではない。
ましてや、その財源が消費税増税で得る税収となればなおのことである。消費税と社会保障に関する説明はこのシリーズの投稿Cで行う。
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