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今や飛ぶ鳥を落とす勢いの地域政党「大阪維新の会」。その関係者が、記者の取材に声を潜める。「いつなんどき、議員の不祥事で足をすくわれないか心配なんや」。
政党助成金をもらえない大阪のローカルパーティーながら、代表を務める橋下徹大阪市長は中央政界にとって目の離せない存在になり、与野党幹部や全国の首長からラブコールが引きも切らない。橋下市長や幹事長の松井一郎大阪府知事は、次期衆院選での国政進出をうかがう言動を続けるが、足元ではその人気に水を差しかねない“不祥事”が相次いでいる。
■チェック機能欠く
「提案された条例はずさんきわまりない」。昨年12月15日の堺市議会本会議。無所属の長谷川俊英市議は、維新の堺市議団が提出した教育基本条例案にかみついた。維新が大阪府議会、大阪市議会にも提出した同条例案は学校長の権限を強くする内容。だが、堺市議会の条例案では対象となる学校が「市内の市町村立学校」となっていた。もちろん堺市内に「町村立学校」はない。条例案の誤りを長谷川市議が指摘すると、本会議場には議員らのあきれ顔が広がった。
条例案の作成に携わった維新堺市議団の水ノ上成彰市議は「府議団が作った文案を参照する過程で、修正するのを忘れてしまった」と釈明する。しかし、長谷川市議は「府議団が作った条例案のチェックすら十分にできないということ。自分たちでは何も考えられない」と手厳しい。堺市の12月議会では維新を除く全会派が条例案に反対し、否決された。
堺市議団をめぐっては今年1月、所属していた西井勝被告(69)が飲酒後のひき逃げ事件を起こして自動車運転過失傷害などの罪に問われ、大阪地裁堺支部は11日、懲役10月、執行猶予3年(求刑懲役10月)を言い渡した。西井市議は事件後、市議団を離脱。堺市議会が3月、市議の辞職勧告決議案を可決しており、橋下代表は「日常の行動について厳しく意識を高めないといけない」と引き締めにかかった。
維新の大阪市議団も揺れた。4月3日、各議員団の部屋が並ぶ大阪市役所8階の一室に、市議団のメンバー全員が急きょ招集された。そこで話し合われたのは、大阪市交通局の労働組合名義の職員リストを基に、杉村幸太郎市議が市議会の委員会で、労組の政治活動や労使の癒着を追及した問題への対応だ。
杉村市議は2月の委員会で、ある筋から情報提供を受けたというリストを根拠に「交通局と組合が組織ぐるみで大阪市長選に関与していたことを裏付けるもの」と指摘した。橋下代表は自身が勝利した昨年11月の市長選で、市と労組が一体となって対抗馬の前市長を後押ししたとの認識を持っており、とりわけ労組の政治活動の“撲滅”に注力する。杉村市議の追及は本来であれば大金星になるはずだった。
■「シンパ」が情報提供者
しかし、3月末になり、リストは30代の交通局の元嘱託職員が捏造(ねつぞう)していたことが、市の内部調査で判明した。並行してこの問題の調査に当たった野村修也弁護士によると、元嘱託職員は労組に入ることができずに日ごろから労組に反感を持っていたとみられ、杉村市議に労組の政治活動を暴く名目の様々な協力をするうちに「高揚感を持つようになり」(野村弁護士)、捏造に手を染めた可能性があるという。
元嘱託職員は、維新の政治塾にも応募(選考過程で落選)するほどの「維新シンパ」の一人。情報提供者の信頼性に疑問符がついたことや、未確認情報を市議会の委員会で華々しく取り上げた手法などに、他会派や労組から一斉に「おかしいのではないか」と声が上がった。そこで3月30日、33歳の杉村市議は、66歳の坂井良和団長と50歳の美延映夫幹事長の重鎮に両脇を挟まれ、記者会見を開いた。
杉村市議がリストを委員会で取り上げることについては、事前に美延幹事長が把握し、ゴーサインを出していた。内部では「偽物ではないか」と懸念する声もあったというが、具体的な検討はなされず、ストップはかからなかった。この点について維新の会幹事長の松井知事は「勇み足だった」と追及の拙速さを認め、質疑内容を把握していなかった市議団の坂井団長も「相談してくれていれば……」と対応の不備を悔やむ。
しかし、橋下代表は「強制捜査権のない議員が疑惑の真偽の裏付けなしに質疑ができないのであれば、職責を果たせない」と正当性を主張し、「杉村君のような元気のある議員が追及できなくなることのほうが損失だ」と擁護。「組合がぬれぎぬを着せられたのは報道したメディアの責任」と責任転嫁まで図った。だが、他会派の幹部は「問題の本質は、質疑の前に会派内のチェック機能が働かなかったことだろう」と冷静に指摘する。
■「自分に甘い」
地方自治に詳しい法政大の広瀬克哉教授は、「維新の会は市議会で多数を占めるれっきとした『権力者』。権力者には、いろんな思惑を持った人がいろんな形ですり寄ってくる。捏造されたリストを安易に信じてしまったのは、アプローチされる側という自覚や危機意識が維新の市議に足りなかったからでは」と話す。また、「追及自体は非難されるべきではないが、判断ミスで事実でないことを批判してしまった組合に対してはきちんと結果責任を負い、陳謝すべきだ。でなければ、他人に厳しくて自分に甘いというダブルスタンダードを平気で使う政治集団だということを有権者にアピールしていることになる」と批判した。
維新の市議を巡っては、2月に市職員から「維新の議員からの(職員への)接触が一番程度が低く露骨になっています。与党だからむげに断れません」「内容を言わずに呼びつけ、その議員の支持者を連れてきており、我々をいきなり訪問するなど、民間ではこんなことあり得るのでしょうか。特に若い議員、社会人としてのマナーから再教育すべきです」と匿名のメールが橋下市長に寄せられたこともあった。市議団が内部調査と実態把握のため、市幹部を対象にアンケートを実施したところ、職員の約46%が「心理的・物理的負担を感じた」と回答。「議員の社会的モラルが低いと感じた」との回答も約33%に上った。
坂井団長は「若手への指導が行き届いていなかった部分はある。この機会にもう一度、力を入れ直したい」と再発防止を誓う。維新の会は昨年4月の統一地方選で当選したばかりのいわゆる「1年生議員」が多数を占める若い集団。橋下市長への匿名メールを機に、先輩議員が新人議員を指導する「チューター制度」の導入を決めたほか、11日に開いた議員団総会では、これまでなかった団則を定め、質疑内容のチェック体制を見直す方針も固めた。だが、場当たり的な対応だけでは不祥事の芽を根本から摘むことはできない。
維新の会は次期衆院選の候補者を養成すべく、3月に約2000人の受講生を集めて「維新政治塾」を開講した。300人程度の候補者擁立を狙っており、所帯はさらに大きくなる見通しだ。組織が膨らめば膨らむほど、内部統制を維持するのは難しくなる。組織の引き締め方が不十分なままなら、国政進出をもくろむ執行部にとって思わぬ足かせとなる可能性もある。
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