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野田佳彦首相と原発関係3閣僚は、4月9日4度目の会合を開き、大飯原発の安全対策の実施計画などに対し、安全性に関する判断基準に「おおむね適合している」ことを確認した。この数日、大飯原発を再稼働させる流れが急速に進んでいる。一体、野田首相はこのまま大飯原発を再稼働させるつもりなのか。そうであれば、将来に向けて歴史的な過ちを犯すことになる。
私は、年限を明確にして脱原発を実現すべきだと考えるが、全原発を直ちに廃炉にせよと言うつもりはない。それができればそうするに越したことはないが、原発依存を縮小していくことが現実的だと考えている。ただ、再稼働については、当然のことながら厳しい前提条件がある。
(1)まず、政府、国会、民間の事故調の最終報告を踏まえて、専門家による新しい安全 基準を策定する。
(2)早急に原子力規制庁を発足させ、新しい安全基準を法制化する。
(3)並行して今回の原発事故に対する原子力ムラの各組織の責任と政治家、官僚、学者 の責任を追及すること。
原発事故が“人災”であるからには当然である。だが、現在の大飯原発の再稼働決定過程はこれらの手順が省略、あるいは先送りされて進んでいる。そっくりな消費税増税と原発再稼働へのプロセス消費税増税に前のめりになっている野田政権は、初めに「消費増税ありき」と言われている。景気も行革も二の次にして突進しているからである。そして今また「再稼働ありき」と批判されている。安全性より経済性を優先していると見られているからだ。
実際、野田政権の再稼働への対応は、消費税増税に対する対応とそっくりで「野田流ありき政権」と言われても仕方がない。肝心なことが横に置かれて、カレーライスの福神漬けのようになっている。先送りされた課題が実現する保証は全くない。
現在稼働中の原発は北海道の泊原発3号機だけ。これも5月5日に定期検査に入る。経産省は「それまでに大飯を再稼働できなければ原発がゼロになり、再稼働のハードルがさらに高くなる」と危機感を強めているのだそうだ(4月7日毎日新聞)。
これでは「再稼働ありき」と言われても反論の余地がない。
もし再び原発事故が起これば政治家の辞職で済む問題ではない
枝野幸男経産相は、5月2日の参議院予算委員会で、「現時点では(再稼働に)反対だ」明言したが、翌3日から大きく変わってきた。そもそも、法的根拠がなく“政治判断”で決めた安全基準で再稼働を決めることは許されることではない。
しかも原発事故に一義的責任がある安全・保安院や電力会社の提案でまとめた安全基準では、ほとんどの人が納得しないだろう。いくら電力不足を叫んでも、相当の節電努力を覚悟している消費者を動かすことは難しい。
大飯原発を再稼働させても、それが原発事故につながる可能性はほとんどないかもしれない。問題は、事故後1年しか経たないうちに、原発の安全性に対する安易な対応をするなら、今後のモラルハザードは際限なく進むということだ。喉元過ぎれば熱さ忘れる。5年後、10年後には、いつかどこかで事故を再発させることにもなりかねない。
最初の対応が方向を決めるのである。枝野経産相は、再稼働容認の決断が事故につながれば、自分や政治の責任であることを強調している。しかし、ことは政治家の辞職などで済む話ではないのだ。原発事故対応や規制庁発足、あるいは再稼働問題が遅れてきたのは、首相や民主党政権が消費税増税という次元の違う課題に夢中になってきたからである。 これでは大事故から何も学ばなかったことにもなりかねない。
http://diamond.jp/articles/-/17091
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