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国会の消費税問答 …田中良紹の「国会探検」
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/04/post_296.html
足の引っ張りに終始するのが野党の務めだと錯覚した自民党のお陰で、最近の国会は極めてレベルが低い。そこにレベルの低い新聞とテレビが加わり、低レベルの質疑を大ニュースであるかのように報道するから、それを意識した政治家がさらにレベルを下げる。あの与野党馴れ合いの「55年体制」時代がまともに思えてくるから困ったものである。
従って最近は国会の議論をあまり期待しないようにしていたのだが、4月4日の参議院予算委員会の議論には面白いものがあった。公明党の草川昭三議員が「消費増税の今国会成立に政治生命を賭ける」と言い張る野田総理の真意を質したのである。
まず草川議員は消費税のこれまでの経緯を説明した。最初に消費税を上げようとしたのは大平総理だが、それによって選挙で大惨敗した。そのため次の鈴木総理は「増税なき財政再建」をやり、その次の中曽根総理は「三公社の民営化」で行政の無駄を省き、さらに所得税、法人税、住民税の引き下げをやった上で竹下総理が消費税を上げた。つまりかつての政権は国民に了解を求める努力を丁寧に行なってきた。しかし野田内閣は今国会で成立させると言っているがさっぱり展望が見えない。
これまで消費税を上げる法案を審議したのはいずれも秋の臨時国会である。通常国会で成立させようとした内閣はない。通常国会には予算を審議するという重大な使命があり、さらに今国会では震災復興やエネルギー問題の解決が急務である。それなのになぜ臨時国会ではなく通常国会で成立を図ろうとするのか。草川議員はその事を問うた。
すると野田総理はいつものように「平成21年の税制改正法付則104条に平成23年度末までに消費税法案を国会に提出すると書かれているから」と答えた。平成21年度の税制改正法を作ったのは民主党ではなく自公政権である。野田内閣は対立する政党が作った法律を頑なに守ろうとしている。これに草川議員は「だから民主党の中で無理な議論を重ねる事になったのでは」と応じた。
麻生内閣がこの法律を成立させたのは平成21年3月末である。政権交代がかかった総選挙の直前であり、当時の情勢では既に自民党が下野する可能性が取り沙汰されていた。見方によっては民主党政権に「消費税」という難問を押し付けようと企んで仕掛けたのが「付則104条」だと見る事も出来る。それを民主党が守れば民主党は選挙に負け、自民党が再び政権を奪い取る事が出来るからである。
逆に民主党が守らなければ自公は民主党を非難し、自公対民主党という対立の構図が強まる。ところが民主党がそれを守って、成立する筈のない法案に自公を巻き込もうとすれば困るのは自公である。自分たちの作った仕掛けに自分たちが引っかけられる。消費税政局の狙いは実は自公の分断と自民党内部の分断ではないかと私には見えるのである。
そのせいかどうか知らないが草川議員はそれ以上の追及をしなかった。「付則104条」問題はうやむやのまま終る。次に草川議員は消費税の値上げの時期を問題にした。野田内閣は値上げを再来年の4月と、さらにその翌年の10月に予定している。しかし今の衆議院議員の任期は来年まで、参議院も半数は来年までの任期しかない。今の議員が次の選挙で選ばれてくる議員の政策を決めてしまって良いのか。しごくもっともな疑問である。
これに安住財務大臣が答弁したが全く意味不明だった。「具体的な制度設計を提案するのである」とか「決まれば値上げの準備に入るが、その前に選挙の洗礼を受ける」としか言わない。すると草川氏も「理解がいかない」、「これはよく議論しないと誤解を受ける」と言いながら意味不明のまま深入りしない。なかなかに意味深長なやり取りであった。
単純なメディアや国民は消費税政局を「小沢抜き大連立」とか「話し合い解散」とか言って、小沢対反小沢の構図ばかりを注目するが、以前から私にはこの政局がそれほど単純には見えていない。野田総理の「不退転の決意」を鵜呑みにするほど単細胞になれない。
この日の質疑でも自民党の宮沢洋一議員が辞表を提出した小沢グループの4人の副大臣と政務官の問題を取り上げ、小沢氏の側近の一人と目される奥村展三文部科学副大臣や中塚一宏内閣府副大臣に消費税法案に対する賛否を問うたが、二人とも「賛成です」とはっきり答えた。そして小沢グループの閣僚は誰一人辞めるとは言っていないのである。
さらに面白かったのはスキャンダル追及で名を上げた自民党の西田昌司議員が、消費税を巡って次のような意見を開陳した事である。西田議員は大事な事はデフレからの脱却だと主張した。デフレと言うのは所得が減る事である。国民の所得が減れば税収は減る。日銀が貸し出しを増やしても誰も金を借りない。民間はバブルの苦い経験があるから借りようとしない。すると投資も増えない。これを解決するには政府が借金して使う事だ。政府が使えば民間も金を借りようかという気になる。政府が借りて使わないと借り手のない金は海外に流れ海外の経済を成長させ、日本は民間も政府も潰れて海外のハゲタカに食われる。
これはリチャード・クー氏が主張する「バランスシート不況」の理論で、「減税日本」の河村たかし名古屋市長と全く同じ考えである。これを自民党議員が主張しているという事は消費税を巡る対立が自民党内部にも出てくるという事だ。このまま消費税法案の審議に入れば、様々な問題や矛盾が浮き彫りにされ、小沢対反小沢の構図など吹き飛ぶ。3年前の「官僚主導と政治主導の戦い」が役者を変えて再び幕開けすると私には見えるのである。
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