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2012.04.02
橋下新党は「脱原発」を旗印に劇場型選挙を演出できるか、(ハシズムの分析、その16)
〜関西から(59)〜
広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
前回、「橋下新党」は国政選挙に不可欠な独自の政策をつくれない、既成保守政党との政策差別化ができないと書いた。消費税増税、TPP参加、沖縄米軍基地存続、憲法改悪など「維新八策」のどれひとつをとってみても、橋下新党と民主・自民両党との違いを見出すことができないからだ。
この主張に対して、別の場所(私のブログ)に対照的なコメントが寄せられた。1つは、「脱原発=電力自由化」が民主・自民両党に対する橋下新党の有力な対抗軸になるかもしれず、その場合の「ワンフレーズ選挙」に警戒すべしとの意見だ。「脱原発=電力自由化」を掲げれば、既得権にしがみつく電力会社と原子力ムラを解体する“改革派”のイメージを打ち出せるし、原子力ムラを守旧派・抵抗勢力に仕立てることもできる。単純な図式で「対立の構図」をつくれるというのである。
もう1つは、橋下新党の掲げる「脱原発」は選挙民を釣るための単なる“疑似餌”に過ぎず、橋下氏自身がそのうちに180度方向転換するにちがいないので「恐るに足らない」というものだ。2つのコメントは、橋下新党が「脱原発」を政策に掲げる可能性については概ね一致しているが、それが総選挙に与える影響については正反対の意見のように思える。
私は次期総選挙の争点として、「脱原発」は橋下新党の目玉政策になりにくいと考えている。理由の第1は、橋下氏が「脱原発」を旗印にして総選挙を戦うことは、これまでの自分自身の言動とも真っ向から矛盾することにもなるからだ。というのは、大阪の市民グループが関電原発の再稼働に際してその是非を問う住民投票条例制定を直接請求したのに対して、橋下市長は反対意見を添えて条例案を市議会に付託しており、3月27日の本会議で否決される見通しになっている。つまり彼は、住民投票で「脱原発」の方向を決めることにはあくまでも反対なのである。
選挙は“究極の住民投票”であって、橋下氏がことあるごとに強調する「民意の源泉」でもある。したがって、橋下市長が一方で大阪市民の「民意の発露」である原発住民投票条例案を否決しておきながら、他方、総選挙においては「脱原発」の国民意思を問うというのでは筋が通らない。
第2の理由は、「脱原発」が総選挙のシングル・イッシュ―として浮かび上がるためには、マスメディアの一致した協力がなければ不可能だということだ。橋下新党が如何に仕掛けようにも、新聞やテレビが”翼賛選挙“としてこれに加担してくれなければ、「ワンフレーズ選挙」は成立しない。この点、原発再稼働の急先鋒である読売・サンケイ・日経など各紙や系列テレビが、「脱原発」を掲げた橋下新党に挙って肩入れするとは到底思えない。
周知のごとく、劇場型選挙の中核をなす「ワンフレーズ選挙」は小泉郵政選挙に始まるといってよい。「ワンフレーズ選挙」とは、国政の基本に関する重要政策を体系的に掲げて争うのではなく、そのなかの一部の政策を殊更にセンセーショナルに取り上げ、それに対する賛否があたかも国政を左右するかのような空気(幻想)をつくりだす「フレームアップ選挙」(謀略選挙)のことだ。
小泉郵政選挙の時は、郵政民営化に反対する者はマスメディアから全て「抵抗勢力」とのレッテルを貼られ、それを抹殺する「刺客」(小泉チルドレン)が天まで持ち上げられた。大阪ダブル選挙では、大阪都構想を批判する者はテレビ等から「既得権勢力」と名指しして攻撃され、橋下氏はこの既得権体制を打破する「改革者」として一躍クローズアップされた。
これらの手法は、デマゴギーを得意とする政治集団・政党の常套手段ともいうべきもので、国政の基本政策をごく一部の政策に矮小化して国民を思考停止状態に追い込み、扇動的な言辞で世論を誘導して民意を掠め取ろうとする謀略そのものに他ならない。橋下氏が大阪ダブル選挙で仕掛けた「大阪都構想」などはその最たるもので、有権者の多くはその内容を理解することなしに「ガラガラポン!」と橋下氏に投票したのである。
私見に対しては、もうひとつ強力な反論が寄せられた。ベテランのジャーナリストらしいそのコメントは、「脱原発」が総選挙のシングル・イッシュ―になれば、読売のナベツネ氏といえどもこれに逆らうことは難しい。橋下新党はこのあたりを十分考えているらしいから“要注意”というものだ。
そういわれると、再稼働候補の先頭を走っている関電大飯原発の場合においても、オポチュニスト・橋下氏はこの機を逃さず「民主党政権が再稼働で来るなら、大阪市は反対というオプションを示す」と表明し、おまけに「最後は総選挙で決着すればいいんじゃないか」(朝日3月24日)とまで踏み込んで発言している。政策の体系性やこれまでの発言との整合性などを一向に気にしない「何でもあり」の橋下氏のことだから、例によって「大阪市民の原発住民投票条例案と国政選挙とは別物だ」といった詭弁を弄するかもしれない。これまでにも増して、「変幻自在」する橋下新党の動向に関しては「予断は禁物」ということだろう。
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