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「まやかし」の消費増税政権、官僚の言いなり
(「こちら特報部」3月30日):(東京新聞)
April 01 ,2012 :{日々坦々}
「身を切る覚悟」と大見えを切ったのは誰だったか。野田政権は三十日に消費税増税法案を閣議決定し国会に提出する。だけど、ちょっと待ってほしい。議員歳費は削減していないし、低所得者対策もまだ。有効な歳出削減策はまったく示せていない。これでは国民を欺く「まやかし」といわれても仕方ない。 (佐藤圭、小倉貞俊)
「財務省は、自公政権時代から国会議員をだましてきた」。そう語るのは、消費税増税法案について激論になった民主党の「社会保障と税の一体改革に関する合同会議」で、増税反対の論陣を張った川内博史衆院議員だ。
合同会議では、議論の途中で打ち切りになり、前原誠司政調会長ら執行部側に押し切られた形になったが、川内氏は「(経済成長率を努力目標として盛り込んだ)景気条項ばかりでなく、多岐にわたる問題点が浮き彫りになった」と話す。
合同会議であらわになったのは、官僚に踊らされる野田政権の哀れな姿だった。
法案は消費税率を二〇一四年四月に8%、一五年十月に10%に引き上げる内容。当初は、一六年度をめどに10%超に引き上げることをにじませる「再増税条項」が付けられていた。二月に閣議決定された大綱では、再増税条項は「今後の改革の検討」とぼかした表現だった。ところが、合同会議に示された法案では「さらなる税制の改革に係る措置」と明記されていたのだ。
川内氏らが「検討と措置では大きな違いだ。誰の判断か」と迫ると、財務省側は、自公政権時代に成立した改正所得税法の付則一〇四条「一一年度までに必要な措置を講ずる」を持ち出した。財務省の担当者は「改正所得税法でも、大綱では『検討』だったが、条文では『措置』にした。今回も事務的にやった」と悪びれずに説明した。
所得の少ない人ほど消費税の負担感が増す「逆進性」についても、野田政権は無策だった。財務省がほとんど何も考えていなかったからだ。
大綱では、一七年ごろをめどに、納税額が少なく控除しきれない低所得者に給付金を支給する「給付付き税額控除」を導入するとした。それまでの間は、暫定的に現金を支給する「簡素な給付措置」で対応する方針が盛り込まれた。しかし、財務省は規模や財源などを固めていなかった。追及され、最大で年額四千億円を給付措置に充てる案を示したものの、増税慎重・反対派に制度の内容を詰められると、十分に答えられず、取り下げざるを得なくなった。
川内氏は国会審議について「反対のための反対ではない。政権与党として責任を果たす。党内議論では景気条項などで折り合えなかったが、まだまだ条文を修正するチャンスはある」とする。
政治評論家の森田実氏は「とにかく消費税増税ありき、という野田政権の姿勢は問題だ」と批判する。森田氏は「過去の増税は、景気が上向くことを前提に実施されてきた。今回はいわば『不況下で増税しても構わない』というわけで、国民の理解を得られない」と話す。
増税強行の背景にあるのは、財務省の強い意向だ。
「消費税は景気に左右される法人税などと異なり、安定的な財源だ。財務省はずっと、税収に占める消費税の割合を増やしたかった。与野党のトップが元財務相で増税に前向きな今こそが好機、というわけだ」
評論家の樋口恵子氏は「増税の前にやるべきことがある。野田佳彦首相が増税への理解を得るためにアピールした『身を切る覚悟』はどうなったのか」と憤る。
国会議員の定数削減は、与野党の協議が難航。最高裁で違憲状態とされた衆院の「一票の格差」は是正されないままになっている。仮に衆院比例で八十削減、小選挙区〇増五減が実現すれば、五十六億円の経費が浮くとされる。
月々の歳費と年二回の期末手当を合わせた二千百六万円の議員歳費は、世界でもトップクラス。これに職務手当の「文書通信交通滞在費」が月額百万円支給される。民主党は年間三百万円を削減する案を提示しているが、二年間の期限付きだ。
総額三百二十億円の政党交付金が、共産党を除く各党に配られている。
「人口が減少していく中で、国会議員の定数も徐々に減らしていくことは必然の流れ。浮く金額は微々たるものでも、政治家が率先して取り組むべき象徴的な課題のはず」と指摘。「自分の身を切るより、国民の身を切る方が楽だという野田政権の感性がよく分かった」と皮肉る。
消費税そのものを「致命的な欠陥のある危険な制度」と批判するのは、ジャーナリストの斎藤貴男氏だ。
斎藤氏は、大企業が税込みの小売価格を抑えようと、下請け業者に圧力を加えることを懸念する。「不況下で消費増税に踏み切ると、納税義務者である事業者にしわ寄せがいく。中小零細企業は増税分を値引きしたり、価格に転嫁できずに自腹を切って安売りしたりせざるを得ない」と指摘。つまり「商売の力関係で弱い方が負担する仕組みだ」という。
消費税増税で、ぎりぎりの段階で耐えている中小零細企業の倒産を誘発し、失業者や自殺者の増加につながる可能性を訴える。「その結果、大資本が仕切る社会が到来する。自営業者やこれから商売をやろうという人の存在を否定することになる」
では、どうすればよいのか。斎藤氏が提言するのは、不公平税制の是正だ。「金持ち優遇のため下げ続けられてきた所得税の累進税率を、二十年前の最高税率50%の水準に戻せば、所得税収は倍近くになる」
斎藤氏は「法人税も上げる余地があるはずだ。聖域のように扱うのはおかしい」と指摘し、こう警告する。「政権維持のために財界の顔色をうかがう野田内閣の政策の根底にあるのは、『国益イコール大企業の利益』という思想だ。弱者切り捨ての消費税増税法案は、社会の在り方そのものを変えかねない」
<デスクメモ> 延べ八日間、計四十六時間に及んだ民主党の党内論議。「景気条項」ばかりが注目されたが、これも目くらましのようなものだ。「決める政治」を目指すのであれば、議員歳費削減や議員定数是正も早急に決めればよい。ぐだぐだしているのなら「ムダの削減条項」で縛りをかけたらどうだろうか。 (国)
元記事リンク:http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-1462.html
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