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http://www.j-cast.com/2012/03/24126510.html
厚生年金基金の積立金を原因とする企業の「倒産」が現実味を帯びてきた。AIJ投資顧問によって年金資産を失った厚生年金基金に加入している企業だけではない。厚生労働省によると、全国578の年金基金のうち、5割超の314基金で年間の年金支給額が掛け金を上回った(2011年3月期)。つまり、積立金を取り崩して年金の支給に充てていたわけだ。
さらに、全体の約4割を占める212基金が自らの積立金がゼロで、国から預かって運用している「代行部分」まで積み立て不足に陥っていた。
予定利回りは「年金支給額がいくら必要か」で決まる
AIJ投資顧問による年金消失問題を受けて厚労省が行った調査では、基金の86.9%にあたる502基金の予定利回りが「5.5%」と、実現見込みのほとんどない水準だったこともわかった。
過去10年の運用実績は平均で年1.2%。2010年度の実績がマイナス0.17%というのだから、「予定」とはいえ、あまりに大きな乖離だ。
厚労省は、「1997年以降はそれ(5.5%)を下回ってもかまわないようになりました」と説明。「おそらく、(当時からの)延長線上として引きずってきたのでしょう」とみている。
厚生年金基金が予定利回りを引き下げるには、掛け金の追加負担で運用による不足分を穴埋めするか、あるいは年金支給額を減らすしかないない。
「年金の支払額が決まっているところから、いくら必要でそのための利回りや掛け金がどのくらいかが決まるので、方法はそのくらいしかありません」(厚労省)
しかし、年金支給額を減額するには、OBの3分の2以上の同意が必要になるなど、面倒な手続きがいる。加入者に追加負担を求めるのも難しい。企業が補てんする方法もあるが、中小企業が集まっている「総合型」の厚生年金基金の場合には加入する企業の経営状況がからむので見直しなどは、なおさら難しくなる。
年金倒産「可能性はある」
厚生年金基金は、企業独自の企業年金積立金に加えて国の厚生年金の一部を代行して運用している。運用成績が厚生年金の予定利回り(5.5%)を上回れば、その分を企業年金の利益にできるが、バブル崩壊後の景気悪化で予定利回りに届かず、その分が損失(代行割れ)になっている。
その代行割れが、全体の約4割を占める212基金にまで広がり、不足額は6289億円(11年3月末)にものぼっている。このまま運用利回りが低いままだと、行き着く先は基金の解散(代行返上)だ。
しかし、基金が解散すると、国の代行部分に相当する積立金を返還する必要が出てくる。じつはこの返還金が企業の経営を圧迫することとなる。総合型の年金基金の場合、このところ中小企業の業績が芳しくないだけにより深刻だ。
中小企業は損失分を穴埋めする余裕もなく、解散もできず、損失が膨らんで、にっちもさっちも行かない状況にある。
企業情報の帝国データバンクによると、「年金基金の解散が原因となった企業倒産は、兵庫県でタクシー業界の年金基金のケースがあり、13社が倒産しています」という。
兵庫県乗用自動車厚生年金基金が解散を決めたのも、運用利回りが予定どおりにいかなかったことが原因とされる。基金の不足額80億円を、母体企業で分担すると1社あたり約1億6000万円にのぼる。その分割負担に耐えられず、倒産したタクシー会社が相次いだわけだ。
帝国データバンクは、「AIJの件が引き金になることはあり得ますし、(年金基金が原因の倒産の)可能性はあります」と話している。
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