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民主党内で消費税引き上げ法案の閣議決定をめぐる議論が続いている。景気次第で増税を先送りする弾力条項や次の増税を担保する再増税条項の書きぶりが焦点だ。ところが、大きな流れでみれば、この議論にたいした意味はない。最終的に増税反対派が妥協を迫られ、政府が閣議決定にこぎつけてみたところで、肝心の法案が成立する見通しがまったく立っていないからだ。
民主党内では小沢一郎元代表のグループが頑強に増税に反対している。閣議決定を容認しても、国会での採決で反対する可能性が高い。加えて野党の自民党もここへきて徹底抗戦姿勢を強めている。石原伸晃幹事長は私も同席した『激論! クロスファイア』(BS朝日)で増税自体の必要性を認めても、増税財源の使途に最低保障年金の創設や後期高齢者医療制度の廃止を盛り込んでいる限り、議論に応じられない考えを明言した。
大連立に乗らなかった自民党
衆院の採決で小沢グループの造反が少数にとどまって可決できたとしても、参院では自民党はじめ野党が反対するので否決される。すると、法案は衆院に戻って再可決する以外に道はなくなる。ところが、現状では再可決に必要な320議席(480議席の3分の2)をとうてい確保できそうにないのだ。さてそうなると、次の焦点は野田政権自体の命運になってくる。そこで野田政権に立ちふさがる3つの壁を整理したい。
1つ目は言うまでもなく、上に述べた消費税問題だ。消費税引き上げ法案を成立させるためには数だけでみると、もっとも望ましいのは自民党を賛成に引き入れる手法である。自民党が賛成に転じてくれれば、小沢グループがいかに抵抗しようと、衆参両院で法案が成立する可能性が高くなってくる。岡田克也幹事長は自民党幹部との秘密会談で大連立をもちかけたと伝えられたが、その核心は「小沢切りによる民主・自民の大連立」だろう。
ところが自民党はこの話に乗らなかった。石原が言うように、最低保障年金などの政策問題もあるが、なにより「いまさら密室談合で野田政権の延命に手を貸すようなマネはできない」という政局判断がある。どうせ来年夏までには必ず総選挙なのだ。選挙となれば、各候補者は小選挙区で民主党候補とガチンコの戦いを繰り広げなければならない。とくに落選中の自民党元議員からみれば、相手の民主党候補をたたき落とすためには、なにがなんでも攻めこむ必要がある。
「ぼくらは消費税増税で一緒です」なんて悠長な台詞を吐いている場合ではないのだ。「民主党の増税案のここが間違っています」と違いを際立たせねばならない。そのためには二人三脚で増税を目指す大連立なんていう話にはとても乗れない。自民党の拒絶感は総選挙が近づくにつれ、強まりこそすれ弱まることはないだろう。自民党が大連立話に乗ってこないと、参院の否決は確実になる。すると小沢グループも勢いづく。法案不成立という結論が見えてくるなら、賛成に転じる造反からの脱落者も少なくなる。
原発再稼働が呼び起こす政治不信
そこで野田はどうするか。ここへきて法案の採決を先送りする選択肢が出てきた。つまり否決が確実で採決し、廃案になってしまうよりは採決せずに継続審議にしたほうが得策という判断である。評論家の田原総一朗によれば、輿石東幹事長が視野に入れているという。
これだと事実上、当面は増税先送りになるので、小沢グループも受け入れられるはずだ。野田は9月の代表選を控えて衆院の解散もしない。「増税せず解散もせず」なら小沢の勝利である。そのまま代表選に流れこんで、いったん政局はリセットという展開になる。
ただ、そこにたどり着く前にもハードルがある。自民党が特例公債法案にあくまで反対した場合だ。赤字国債の発行を裏付ける特例公債法案が成立しなければ、予算案が成立しても執行できない。菅直人前政権は昨年、この特例公債法案の成立と引き替えの形で退陣を余儀なくされた。今回も同じ構図になるかもしれない。9月まで特例公債法案の成立を先延ばしするのは難しい。
野田には増税法案を採決しない一方、解散に打って出るという選択肢も一応、残されている。だが、政権の命運を賭けて不退転の決意で臨んだ増税案の採決を先送りしたまま解散では、大義名分がない。敗北必至だ。党内の大多数が解散に反対するだろう。最重要課題を実現できなかったのだから、むしろ内閣総辞職が筋である。
2番目は原発の再稼働問題だ。脱原発依存に傾いた菅政権が再稼働に「ストレステスト」という厳しい条件をつけたと思ったら、野田はストレステストのハードルを乗り越えるために「政治判断」というはしごをかけてしまった。国民の信頼を失った原子力安全・保安院と原子力安全委員会がてがけたテストは、初めから不合格のない「いかさまテスト」である。
そのうえ野田と官房長官、経済産業相、原発事故担当相の4閣僚が政治判断で再稼働を決めれば、内閣支持率は急降下するだろう。福島の事故以来、多くの国民が東京電力や政府の姿勢に不信感を抱いている。政治判断による原発再稼働はそうした不信感をあらためて呼び起こすに違いない。
AIJの穴埋めを誰がするのか
3つ目はAIJ問題だ。証券取引等監視委員会は23日にも、AIJ投資顧問に対して金融商品取引法違反容疑で強制調査する見通しだ。だが、年金資産消失問題はAIJにとどまらない可能性が出ている。AIJほどでなくても、似たような高利回りを約束していた投資顧問会社があれば、どうなるのか。もしも同じように資産が消失していれば、大問題になるのは確実だ。公的年金である厚生年金の代行部分まで損失が広がっていると、代行していた年金基金は代行返上に際して国に穴埋めを迫られる。
複数の同業者が集まって運用する総合型年金基金の場合、国に穴埋めを約束する一方、仲間の企業が倒産すると、残った企業が肩代わりを迫られ連鎖倒産の危機に直面する。実際に連鎖倒産したタクシー会社も出ている。そうなると最終的に穴埋めをだれが負担するか、という問題が生じる。国が負担する、あるいは別の厚生年金保険料で手当てする案などがとりざたされるが、いずれにしろ国民負担になる。つまりAIJ問題が他の投資顧問会社に拡大するようなら、第2の「消えた年金」問題になる可能性があるのだ。
AIJの周辺には旧社会保険庁のOBが深くかかわっていた。天下りしたOBのネットワークが事実上、AIJの営業拡大に一役買っていた。厚生労働省や金融庁の監督責任も免れないだろう。5000万件の「消えた年金」は安倍晋三政権が倒れる大きな要因になったが、今回のAIJ問題は野田政権に痛撃を浴びせるかもしれない。ほかに沖縄の普天間問題もある。こちらも大問題だが、消費税引き上げだけで手一杯の野田に普天間問題を片付ける余力が残っているとも思えない。野田政権はいよいよ出口がなくなって、袋小路に追い詰められてきた感がする。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32110
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