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http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2012/03/68668.php
「大阪から日本を変えたい」。大阪府市統合本部の特別顧問を務める元経済産業省官僚の古賀茂明氏は、成長戦略、地方分権、エネルギー戦略の3分野で従来とは抜本的に異なる政策アプローチをとる必要があると説く。
ロイターの「日本再生への提言」特集に寄せられた同氏の提言は以下の通り。
<今こそ「既得権と闘う成長戦略」が必要>
野田佳彦首相は1月24日に召集された通常国会での施政方針演説で、日本再生戦略を年央までに策定すると表明した。その際、成長産業となる大きな可能性を秘めている分野として、農業、エネルギー・環境、医療・介護などに言及したこと自体は適切だと思う。
しかし、これらの分野への期待は実は過去の成長戦略の中でも語られていた。期待を述べるだけでは、何も変わらない。具体的にどうやって伸ばしていくのか、問われるのはそのアクションプランである。
過去の成長戦略が絵に描いた餅に終わった理由は明白だ。伸ばすための政策支援は「補助金」「融資」「税制上の優遇措置」といったお決まりの三点セットにとどまり、しかも厳しい財政事情を反映して支援規模はこぢんまりとしていた。その結果、借金を増やすだけでいずれの分野でも競争力は高まらないという悪循環の繰り返しだった。
本来、こうした分野を本気で伸ばそうとするならば、必要なことは成長機会を阻んでいる既得権を突き崩すことであり、そのための競争原理の積極的な導入である。
改めて指摘するまでもないが、農業には農協、医療には医師会、エネルギーには電気事業連合会といった強力な「利益団体」が存在する。これらの既得権にメスを入れずして、真の成長戦略を語ることはできないはずだ。
具体的には、農業では減反廃止と株式会社による農業参入の全面解禁、医療では混合診療の解禁や株式会社の医療経営参入、エネルギーでは発送電分離などの競争メカニズムの導入によって既得権を突き崩し、成長機会を増やす必要がある。
ただ、率直に言って、今の野田政権にそこまで踏み込む覚悟があるのか疑問だ。本当ならば、民主党の方が各種利益団体に支えられてきた自民党に比べて、こうした改革を断行しやすかったはずだが、権力の座についてからはすっかり自民党と同じになってしまった。それどころか震災以降は自信を喪失し、既得権にいいように利用されている気がする。このような政治が続くことは、日本にとって悲劇だ。
どうやら政治家は改革の時間的余裕はまだ20年程度あると考えているようだ。しかし、欧州債務危機の例を見るまでもなく、それでは悠長すぎる。野田政権に言わせれば、だからこそ消費増税の必要性を訴えているということなのだろうが、消費増税だけで日本が救われるわけではない。欧米のエコノミストたちは、日本が消費増税だけで財政再建を果たそうとするならば、その税率は30%以上に引き上げる必要があると口をそろえている。
むろん、財政再建に向けて歳入面や歳出面でさまざまな手を打つ必要性は私も理解しているが、政府与党は既得権に挑み成長機会を増やすという議論から逃げてはいないか。デフレ脱却だけでも税収は相当増える。小泉・安倍政権下の2006年度には一般会計税収が6年ぶりに50兆円台を回復したことがある。日本をどう成長させるのかという議論を諦めていては、既得権を守るための増税路線をひた走るだけになってしまう。
<道州制は基礎自治体拡充と霞が関解体が前提>
最近、道州制を視野に入れた地方分権論がふたたび盛り上がっている。私が特別顧問を務める大阪府市統合本部も、道州制を推進する立場を明確化している。しかし、どうも狙いが正しく理解されていないようなので、ここできちんと説明したい。
よくありがちな誤解は、いくつもの県を束ねる道州制では、住民との距離が遠くなるのではないかというものだ。確かに行政の合理化は狙いの一つだが、道州制は基礎自治体の拡充とセットであり、むしろ行政と住民とのあいだの距離を縮め、地域ごとのニーズや実情により則した地方自治の実現を容易にするものである。
基礎自治体とは、多少の組み換えはあるだろうが基本的には今の市町村のことだ。大きな政令市などは、さらにいくつかに分けることになろう。道路や水道といった広域インフラ整備は道州が担当するが、子どものための予算であれば、基礎自治体が子ども手当に充てるか、塾代の補助金として使うか、待機児童を減らすために保育所を整備するか、地域の実情に応じて決めればよい。
もうひとつ道州制において大事なことは、霞が関の解体とセットで行わなければならないということだ。外交や安全保障、国家財政などは中央官庁が引き続き担う必要があるが、地域の産業政策や国土交通戦略などは道州が担えばよい。
経済産業局など地方にある中央の出先機関は解体し、人員は整理することだ。また、国の出向者は係長以下に限定する。これをやらないと中央からの出向者に支配された似非(えせ)道州政府が補助金をばらまくといった事態に陥りかねない。中央から地方、その地方内でもさらに住民に近いところへの権限移譲が道州制成功のカギだ。
<関西発のエネルギー革命を目指せ>
大阪府市統合本部は、2月に「エネルギー戦略会議」を発足させた。関西地区の住民の安全・健康を守る観点から施策をまとめるとともに、エネルギー分野において既得権と闘う成長戦略を示すことになる。
まずは、大阪市が8.9%の株式を保有する関西電力に対して株主提案をする。今後の日本の電力・エネルギー市場をリードするのは、現実問題、東京電力<9501.T>ではなく関西電力<9503.T>だ。しかし、地域独占の上にあぐらをかいた今のような状態では、背中を強く押さなければ、新しいことには挑戦しないだろう。
欧州では、スマートグリッドの普及が急ピッチで進み、洋上風力発電の普及に伴い海底送電インフラ事業も積極化している。日本にはたくさんの良い技術があるのだから、関西電力にはそうした技術を生かして、スマートグリッドや再生可能エネルギーの普及を牽引してもらいたい。新しいスマートグリッドのシステムを実用化して、そのシステムを海外に輸出することも検討すべきだし、関西電力が他の電力会社を買収してもよいだろう。
法律上、制度上のハードルが多く浮上するだろうが、政府や中央官庁にも積極的に協力を求めていくつもりだ。大阪から日本を変えていきたい。
(3月19日 ロイター)
*古賀茂明氏は、元通産・経産官僚。現在は、大阪府市統合本部特別顧問。東京大学法学部卒業後、通産省(現経産省)に入省。経済産業政策課長などを歴任。2008年、国家公務員制度改革推進本部事務局審議官に就任。急進的な改革を進めようとするも、09年に任を解かれる。11年9月に経産省を退職。
*本コラムは、個人的見解に基づいています。
*本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの「日本再生への提言」特集に掲載されたものです。(http://jp.reuters.com/news/globalcoverage/opinion)
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