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消費税率の引き上げにあたって、検討すべき既得権益の第3弾として取り上げるのは、社会福祉法人と宗教法人への課税問題である。
社会福祉法人・宗教法人に
対する課税はどうなっているか
2007年(平成19)年の公益法人改革を受けて08年(平成20年)に公益法人課税も改正が行われた。
この結果、一般社団・財団法人法により設立された一般社団法人と一般財団法人のうち、公益法人認定法により公益性の認定を受けた公益社団法人と公益財団法人の両者を公益法人と呼ぶことになり、これまで公益法人の中に含めて議論されてきた社会福祉法人と宗教法人は、公益法人の定義から外れることになった。
もっとも法人税法上は、これら特別法に基づき設立された団体も含めて「公益法人等」としてひっくるめて議論されることが多い。本稿では、紛らわしさを避けて、社会福祉法人と宗教法人の課税問題を個々に議論することとした。
社会福祉法人・宗教法人に対する課税の優遇は、以下の3つの局面で行われている。
第1に、税率が軽減されている。
一般法人税率が30%に対して、彼らは22%と優遇された税率で、公益法人(公益社団・公益財団法人)の30%の法人税率よりも軽減されている(いずれも平成23年現在)。
第2に、収益事業のみ課税になる。
一般法人は、収益・非収益を問わず、すべての所得に対して、益金から損金を除いた残りに課税される。しかし、社会福祉法人・宗教法人は原則非課税で、「収益事業から生じた所得に対してのみ課税」される。彼らが収益事業を行う場合には、同種の収益事業を行う営利法人の競争条件を不利にしないという公平性の観点から、課税されるのである。
第3に、みなし寄付金制度がある。
収益事業に属する資産のうちから、その収益事業以外の事業のために支出した金額は、その収益事業からの寄付金とみなして、一定の限度額の中で、損金算入が認められる。社会福祉法人については、所得金額の50%、あるいは年200万円の多い方が損金算入限度となっており、この部分は事実上非課税である。
抜群に高い純資産比率
多すぎる社会福祉法人の内部留保
社会福祉法人の問題を、キヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹の指摘から始めたい。
社会福祉法人のうち特に補助金の恩恵を受けている施設経営法人約1万6000について、松山氏が財務データを推計した結果によると、「施設を経営する社会福祉法人全体では黒字額が4451億円(収入に対し5.9%)、純資産が12兆8534億円(総資産に対し79.4%)となった。トヨタ自動車(11年3月期の連結最終利益4081億円=2.1%、自己資本10兆3323億円=34.7%)を上回る水準だ。」(2011年7月7日付日本経済新聞・経済教室)
社会福祉法人は、制度上配当という形で内部留保を外部に流出させることが制限されている。それにしても、補助金を受け取りながら莫大な内部留保をため込んでいるという事実は、前述した優遇税率・税制と無関係ではなかろう。
社会福祉法人は、収益事業課税の範囲から不動産貸付業、席貸業及び医療保健業が除外されており、さらに保育事業については現行の収益事業34業種のいずれにも該当しないものとして取り扱われている。その結果、社会福祉法人のうち法人税が課税されている法人数は、極めて限定的な数となっているものといわれている。
介護サービス事業(医療保健業に該当)や保育事業など、既に株式会社等の民間企業が参入している事業においては、社会福祉法人は非課税でNPO法人や株式会社等は課税というアンバランス、不公平が生じている状態にある。
社会福祉法人が事実上非課税とされているのは、かつては他の公益法人等に比べて厳しい規制がかかっていることや、社会福祉事業の分野に民間企業が参入しておらず、その分野での公の代替を期待されたという背景があるのだろう。しかし現状において、なお非課税とする明確な理由が存在しているのかという疑問が残る。
そこで、民間企業と競合状態にある事業については、収益事業課税の対象とする、または社会福祉法人制度を見直して公益社団・財団法人と同様の明確かつ厳格な基準を設けた上で、本来事業(社会福祉事業)を非課税にするといった課税方式の抜本的な見直しを検討すべきではなかろうか。
収益事業と非収益事業の
区分が難しい宗教法人課税
宗教法人とは、宗教法人法(昭和26年制定)により設立される法人である。教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする団体、つまり「宗教団体」が、都道府県知事若しくは文部科学大臣の認証を経て法人格を取得したもので、09年末(平成21年末)で18万社ほどである
その課税についても、冒頭のような優遇が行われている。よく問題になるのは、収益事業の判断である。課税される収益事業は、法人税法施行令5条1項で、物品販売業、不動産販売業、不動産貸付業、倉庫業、請負業などの34事業(付随して営まれるものを含む)で、継続して事業場を設けて営まれるものと決められている。
しかし、収益事業と収益事業以外との区分はどのようなものなのか、実際の適用は簡単ではない。また、これが甘いと、事実上非課税となる。
収益事業か否かが争われた
ペット供養事件
収益事業か否かが争われた有名な事例として、「ペット供養事件」というのがある。14世紀初めに慈妙上人によって開山されたという古刹(宗教法人)が、ホームページを通じてペットの供養を宣伝し、パンフレットに記された供養代金を受け取っていたが、このペット供養が収益事業に当たるかどうかが争われた。
最高裁判所は、「本件ペット葬祭業は、その目的、内容、料金の決め方、周知方法等の諸点に置いて、宗教法人以外の法人が一般的に行う同種の事業と基本的に異なるものではなく、これらの事業と競合するものと言わざるを得ない。」として、収益事業に当たるとした(平成20年9月12日第2小法廷判決)。
最高裁判所は、支払いに対価性があるかどうか、事業が民間の事業と競合するかどうか、をメルクマールに、社会通念に照らして総合的に判断すべきとして、料金表の存在やホームページへの掲載などが、民間のペット供養業者と競合関係になるので、収益事業としたのである
宗教法人等が行う物品の販売について、収益事業に当たるかどうかは、法人税基本通達で、以下のように定められている。
宗教法人におけるお守り、お札、おみくじ等の販売のように、その売価と仕入原価との関係からみて、その差額が通常の物品販売業における売買利潤ではなく、実質は喜捨金と認められる場合のその販売は、物品販売業に該当しないものとする。
ただし、宗教法人以外の者が、一般の物品販売業として販売できる性質を有するもの(例えば、絵葉書、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花等)を、これらの一般の物品販売業者とおおむね同様の価格で、参詣人等に販売している場合のその販売は、物品販売業に該当する。
最近では、人間の葬式についてもビジネスが広まり、戒名など値段表を作り広くホームページで広告をする宗教法人も見受けられる。葬儀といっても範囲は広く、民間の収益事業と何ら変わらないような事業が含まれている可能性もある。
また、不動産取得税、固定資産税についても、税制優遇がおこなわれており、その辺りも見直す余地がある。
経理に関する透明性を
高めることが第一歩
1995年(平成7年)12月の宗教法人法の一部改正により、次のうちのいずれかに該当する宗教法人は、事務所備付け書類の一部の写しを所轄庁へ提出することが義務付けられた(宗教法人法第25条)。
1.収益事業を行っている法人
2.年収が8000万円を超える法人
3.収支計算書を作成している法人
年間収入が8000万円以内の法人について、当分の間、収支計算書の作成義務を免除することとされているのは、収入規模の小さな法人について直ちにその作成を義務づけることが、事務負担の面で困難が予想されるためであると説明されている。当初は5000万円であったが8000万円に引き上げられた経緯がある。
通常の事業所得の場合には、3000万円を超えると税務署への明細書(総収入金額報告書)の提出が義務づけられる(所得税法第231条の3)。宗教法人だけ別扱いする理由は無く、この制度と整合性をとるべきではないか。
宗教法人に対する課税については、収入面より支出面を見直す余地が大いにある。そのためには、宗教法人関係者への給与や私的な費消に対する課税をきちんと把握できる体制づくりが重要で、宗教法人の経理に関するディスクロージャーを高めることはその第一歩である。
消費税率の引き上げは、国民全員に負担増となる。政治家や公務員も、まず隗より始めよ、身を切る改革、ということで、厳しく身を処す必要がある。
このような国家の非常事態の中で、社会福祉法人や宗教法人が、一般法人よりはるかに優遇された税制を継続することに対しても、見直しの目を向ける時期に来ている
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