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平成22年9月20日(月)発売 「週刊ポスト」 より
[深層意見]
アメリカに叩き漬された小沢一郎 副島隆彦(評論家)
代表選敗北は、今年2月2日にすでに決まっていた
(写真)
・アーリントン墓地で頭を垂れる菅(右)
・ⓒ日刊ゲンダイ(左)
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代表選を3か月後に控えたこの6月、『小沢革命政権で日本を救え』(副島隆彦、佐藤優共著・日本文芸社刊)と題する本が出版され、異例のベストセラーとなっている。
この本で著者の副島氏は、独自の情報とユニークな世界観から、小沢が「大きな敵」に敗北することになるだろうと非常に早くから予見していた。
さて、あなたはこの副島氏の分析をどう読むか。
*
アメリカは小沢政権の誕生を許さなかった。私は、『小沢革命政権で日本を救え』のあとがきで、こう記した。
(「こうなったら小沢一郎を前面に押し立てて、正面突破を図ろう」という作戦は、今は採るべきでない。それは敵の術中に嵌まる無謀な決戦主義である。そのような短慮は敵たちの思う壷であるから、避けるべきである〉
私は、小沢革命断行を熱烈支持する一方で、今は出るべきではないと、主張し続けてきた。
今回の結果を予見していたからである。
小沢一郎は、菅直人と代表選を戦って敗れたのではない。小沢は、アメリカと官僚の連合に叩き潰されたのだ。
日本は、アメリカという帝国(世界覇権国)に支配された属国である。
私は『属国・日本論』で20年間、こう唱えてきた。
この視点から見れば、自民党政権時代の権力者たちが、アメリカの意に添い国民の富を差し出すことを条件に権力の座を維持していたことが分かるはずだ。
それに対して「少しずつ独立しよう」と立ち上がったのが、小沢一郎という政治家である。
その姿は、小沢が オヤジ≠ニ慕ってきた故・田中角栄を彷彿とさせる。
角栄はアメリカの支配から部分的独立を果たそうと独自のエネルギー資源外交を展開してアメリカの手先§A合の怒りを買い、検察に逮捕された。
では、小沢一郎はどのように闘う人間か?
その極めつけが、今年2月2日、国会内の幹事長室で行なわれた小沢とカート・キャンベル国務次官補、ジョン・ルース駐日大使との3者会談である。
新聞報道ではアメリカ側の表敬訪問とされているが、真相は全く異なる。
二人が小沢に会談を申し込んだ目的は、小沢一郎を屈服させることにあった。
このとき、アメリカは小沢を検察に狙わせ、いつ逮捕になるか、分からない状態であった。
だが地検特捜部は、アメリカの圧力で小沢不起訴を決めた。
アメリカは、小沢に対して検察の捜査を「不起訴」にしてやったから、いうことを聞けと突き付ければ、小沢は転ぶと思った。
その見返りに日本から莫大な金を引きだす。
「米国債を20兆円分買い増ししろ」とか、
「普天間基地を移転してほしかったら、あと5兆円出せ」、
そんな交渉を仕掛けたのは容易に想像がつく。
しかし、小沢は、アメリカの要求を敢然と突っぱねた。
この会談後、小沢は二人を従え、堂々と幹事長室から出てきた。
もし、アメリカの条件を受け入れていたら、小沢の方が二人につき従ったはずだ。
小沢は、支配者であるアメリカと真正面から条件交渉できる唯一の政治家である。(投稿者注 ※写真 左)
小沢の政策は一貫している。
アメリカにいわれるまま、米国債を買い続け、莫大な富を差し出すのは、もうやめよう。
日本人の稼いだ富は、日本の国民に還元すべきだ。
多くの政策を昨年8月のマニフェストで約束し、その実行を果たそうとしてきた。
それを裏切ったのが管直人と仙谷由人である。
今年1月30日、普通は首相が出席すべきダボス会議(世界経済フォーラム・賢人会議)に出席してはしゃいでいる仙谷(当時、国家戦略相)、
4月22日、ワシントンのアーリントン墓地で神妙な顔つきで献花している菅(当時、財務相)の姿を見た時、
私は、この二人はアメリカに「転んだな」と、ピンときた。
自民党政権時代同様、アメリカと官僚連合のいうことを聞いて名前だけの地位を与えてもらえればいいと。
卑屈な人間どもだ。
2012年小沢復活
そしてアメリカの小沢一郎潰しが始まった。
5月19日、IMF(国際通貨基金)は、日本政府に対して消費税を引き上げろと、異例の声明を出した。
同じく5月、USTR (米通商代表部)が、郵政改革法案、即ち郵政「再国有化」法(日本の金融を戸閉まりして迫り来る世界恐慌へ備える)が国会を通過するなら、WTO(世界貿易機関)への提訴も辞さないと声明。
内政干渉といっていい脅しをアメリカが公言した。
これに呼応して国内の反小沢勢力がいっせいに動き出した。
霞が関のオール官僚たち、アメリカの支配を是とする新開やテレビ、そしてアメリカに寝返った菅と仙谷たち、である。
6月2日、突然の鳩山首相と小沢幹事長辞任の真相は、アメリカが陰で糸を引いた「反小沢クーデター」だと私が初めて書いた。
首相に就任した菅直人は「消費税を10%に引き上げる」といって、自傷行為でわざと参院選で敗北した。
こうして国民民主革命は徹底的に破壊されることになった。
ここまでする連中に、まっとうな代表選を期待するほうが間違っている。
今後、国民の生活は、ますます酷いものになっていく。
今年の暮れから衰亡(フオールダウン)するアメリカに抱きつき心中させられて、日本経済もどん底に陥るだろう。
アメリカは、11月の中間選挙で大敗するバラク・オハマが「病気」を理由に辞任、ヒラリー・クリントンへの異例の政権交代が起こると私は予測(予言)してきた。
これも当ててみせる。
日本への搾取はいっそう強まり、来年には70円台どころか、60円台まで円高は進むだろう。
ヒラリー新政権はその強い円で「紙くず」(アメリカ国債)を買えるだけ買えと命じるだろう。
そうなればアメリカ隷属を旗頭にしてきた日本の富裕層だって無傷ではいられまい。
やがて全てを失ってから、彼らは、ようやく気付くのだ。
小沢が正しかった、と。
そのときまで小沢は待ったほうがよかった。
あと2年、次の代表選の行なわれる2012年こそ立ち上がるべき時だったのだ。
私は2年後の小沢復活を望む。p-46
そえじま・たかひこ
/1953年生まれ。早稲田大学法学部卒。外資系銀行員、予備校講師、常葉学園大学教授などを歴任。副島国家戦略研究所主宰。
近著に『新たなる金融危機に向かう世界』『世界権力者人物図鑑 世界と日本を動かす本当の支配者たち』など
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【私のコメント】
この記事発売の一週間前の2010.9.14には、民主党代表選で菅直人が不正選挙(党員票の抜き取り)によって小沢一郎に勝利している。
そしてこの記事から2週間後の2010.10.4には、第五検察審査会が、小沢一郎に対し2度目の『起訴相当』議決を出している。
現在の小沢裁判はすべてここから始まった。
2010.2.2の国会内の幹事長室で行なわれた小沢とカート・キャンベル国務次官補、ジョン・ルース駐日大使との3者会談から、
2010.10.4の第五検察審査会による小沢一郎に対する2度目の『起訴相当』議決までの8ヶ月間に、罠が仕掛けられたのである。
その間、菅直人がアメリカ側に『転んだ』ことからもわかるように、政界だけではなく、官界、司法界、検察、マスコミに至るまで、小沢潰しの工作は及んでいる。
いわば小沢裁判はアメリカによって仕掛けられた国家的犯罪である。
その罠を小沢一郎は一人暴き続けているが、マスコミは小沢叩きを続けているため、小沢の孤軍奮闘ぶりは国民に十分に伝わっていない。
裁判官の人事権は内閣が持っている。
@最高裁判所長官は内閣の指名による。(6条)
Aその他の14人の最高裁裁判官は内閣が任命する。(79条)
B下級裁判所の裁判官は最高裁の指名したものの名簿によって内閣が任命する。(80条)
つまり内閣と最高裁事務総局が手を組めばどんな裁判でもできるわけだ。
また、検察官は行政組織である検察庁に属し、法務大臣の指揮監督を受ける。
しかし法務大臣は具体的事件については最高検察庁の長である検事総長を指揮できるだけであり、政治的な干渉は排除されている。
その一方で、法曹一元論といって、裁判官、検察官、弁護士の流動化が図られ、裁判所と検察庁の人事交流も盛んである。
ミスター『推認』こと登石郁郎裁判長はこの人事交流によって検察庁にも派遣されている。
つまり内閣総理大臣がその気になれば、最高裁と最高検を巻き込んで、いくらでも『捏造裁判』『推認裁判』をすることができるわけだ。
そのターゲットが小沢一郎というわけである。
菅直人は首相就任直後に『小沢一郎は黙っていろ』と言い放った。
すでにこのときには最高裁と最高検を巻き込んだ小沢冤罪事件のストーリーができあがっていたのだろう。
最高検による検察審査会の悪用も仕組まれていたはずだ。
このような国家的犯罪の裏には菅直人が『転んだ』先のアメリカの小沢叩きの意図が潜んでいる。
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