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2012年3月 9日 (金)
建設的財政再建論議には緻密な過去の検証不可欠
財政運営を論じる場合に重要なことは、経済全体の動向に十分な配慮を払うことだ。法学部出身者が幅を利かせる財務省が陥りやすい間違いは、机の上の計算で財政赤字が減るとの結果が出ると、本当にそれで財政赤字が減ると勘違いしてしまうことだ。
経済には作用、反作用の側面がある。
財政赤字を減らす政策は一般に緊縮財政政策と呼ばれる。通常、5兆円の増税は税収を5兆円増加させるために実施され、その場合には、財政赤字が5兆円減ることが期待される。
普通に考えれば、このように考えるのも無理のないところなのだが、実際にこの緊縮財政を実施してみるとそうはならないことが多い。
緊縮財政政策が経済を悪化させてしまうと、そのことによって財政収支に異動が生じるからなのだ。
考えてみれば当たり前のことなのだが、財務省の行動を見ると、こうしたことがしっかりと認識されているとはとても思えない。
温故知新と言う言葉がある。
実際に、日本の財政運営の過去の事実を正確に検証することが大事だ。
参考にすべき事例が4つある。
1985年から1990年にかけて行われた中曽根政権の財政再建の取組み。
1997年度の橋本政権の消費増税。
2000-2003年に実施された森・小泉政権の緊縮財政
2003-2007年の景気回復の下での財政収支の変化。
この4つの事例を見ておきたい。
私は、1985年に『公社債月報』(公社債引受協会)という専門誌に、「財政収支の中期展望」と題する短い論文を発表した。財政再建政策の可否を論じたものだ。
この論文では、政府が予算編成において、予算全体から地方交付税交付金と国債費を除いた一般歳出の伸び率を抑制して財政運営を実施すれば、増税を実施しなくても赤字国債の発行をゼロにするとの財政再建目標は達成できるとの見通しを示した。簡単な財政収支計算を行った。
実際に、中曽根政権は、毎年度の予算編成において、一般歳出の伸びを抑制する運営を実行し、1990年度に赤字国債発行ゼロの財政再建目標を実現した。
もちろん、この財政再建が成功した最大の理由は、日本経済が平均で実質5%の経済成長を持続したことにある。いわゆるバブル景気が税収の大幅増加をもたらし、財政収支を大幅に改善させた。
その後、日本経済はバブル崩壊に直面した。株価が暴落し、後を追うように地価の下落が始まった。
私は、すでに、1989年にバブル崩壊、金融市場の逆流開始を予測して、私が所属していた企業内部の戦略会議でプレゼンテーションまでしていた。1990年の年初、いよいよこれが現実化したと判断して、『金融財政事情』という専門誌に、金融機関を取り巻く資産運用環境が大転換したことを論述した。
(「金融機関の資金運用戦略は抜本的転換を迫られている」、『金融財政事情』1990年2月19日号所収)
経済状況の激変を予測して、91年から経済政策の方針転換を強く主張したが、赤字国債発行ゼロを実現した財務省の対応は大幅に遅れた。せっかく赤字国債の発行をゼロにしたのに赤字国債を発行したくないと、赤字国債の発行再開を拒絶した。同時に、建設国債の増発にも強く抵抗した。
政策対応の遅れがバブル崩壊不況を加速し、日本経済の傷を大きくしていったことを否定できない。
2番目の事例は、1997年度の橋本政権による大増税だ。
私は1996年の年初から、97年度の巨大増税阻止に向けて言論活動を開始した。5月には東洋経済新報社刊行の『論争1996年7月号』に、「財政再建最優先論に異議あり」と題する論文を掲載した。
財政再建への取り組みを肯定しながらも、経済環境を踏まえた慎重な対応を求めた。とりわけ、不良債権問題が水面下で重大問題化しており、過度の緊縮財政政策が経済悪化−資産価格下落−金融不安拡大のプロセスを通じて、日本を金融恐慌の危機に直面させかねないことを強く警告した。
私が提案した代替案は、消費税率を1%ずつ、2年度に分けて引き上げるというものだった。その他の財政緊縮政策は見送るというものだった。
せっかく生まれた自律的な景気回復軌道を壊さない範囲内で、増税阻止を講じるべきだと提案したのだ。
しかし、財務省に誘導された橋本政権は、消費増税5兆円、所得増税2兆円、社会保険料引上げ2兆円、公共事業削減4兆円の、合計13兆円のデフレ政策を強行実施した。
その結果、起こるべくして事態の急変が広がった。
日経平均株価は22,666円から12,879円に大暴落。不動産価格も大暴落した。このなかで、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行などが相次いで破たんし、日本は金融恐慌の一歩手前まで追い詰められたのだ。
税収は1996年度の52.1兆円が、97年度には53.9兆円にしか増えなかった。緊縮財政は不況をもたらし、99年度には47.2兆円にまで税収を逆に減らしてしまったのだ。
国債発行額は、96年度は21.7兆円、97年度は18.5兆円だったが、2年後の99年度には37.5兆円に倍増してしまった。
経済動向に十分な配慮をしない、財政再建原理主義は、経済を悪化させるだけでなく、財政収支をも悪化させてしまう。百害あって一利なしの政策なのだ。
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3月12日(月)に岩上安身氏が主宰するIWJ主催のトークカフェに出演します。席数に限りがありますが、ぜひ、ご参加くださいますようご案内申し上げます。
詳しくは、IWJ Informationをご高覧下さい。
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