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知られざる小沢一郎の実像 政治評論家 平野貞夫
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『月刊日本』2010年3月号
既得権益を維持したい旧体制の抵抗
―― 小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、衆院議員の石川知裕、元私設秘書の池田光智、小沢氏の公設第一秘書大久保隆規が起訴されたが、小沢本人は不起訴となった。この問題についての小沢氏の発言は二転三転しているのではないか。
【平野】この事件そのものは、水谷建設の不正な金一億円が陸山会に入って、それで土地を買ったという疑惑ありきで始まった。それを証言した水谷建設元会長は法人税法違反の罪で実刑判決が確定し、今は獄中の身にあり、しかも偽証をした過去のある人物だ。そういう人物の話を前提にしてシナリオが組まれた。そのシナリオに基づいて、二〇〇四年、〇五年の収支報告の記載がおかしい、虚偽記載があるということで検察は突っ込んでいった。拷問に近い取り調べをして自白を迫ったというが、結局何も出て来なかった。水谷建設からの不正な金など一切ない。
小沢幹事長の発言が二転三転していると言うが、主張が変わっていったわけではない。自分の資金を使ったのも事実、陸山会の金を定期にして借りたというのも事実、それを最終的に返したというのも事実だ。それを一度に言わなかったから、話が変わったと誤解されているに過ぎない。
石川議員に対する議員辞職勧告決議案が出されたが、こんなものを出す議員の感性を疑わざるを得ない。私は、衆院事務局で政治倫理と国民主権の仕事をずっとやってきたが、国民から選ばれた国会議員は、懲罰の除名、資格争訟によってしか辞めさせることはできない。石川を選んだ国民に対する冒涜である。
―― 小沢幹事長は不起訴について、手打ちがあったという見方もある。
【平野】手打ちなどあるはずはない。アメリカも直接関係ないと思う。
今回の事件は、昨年の八月三〇日の総選挙で起こった「無血革命」に対する反革命の動きだ。鳩山政権は、神武天皇以来二六六九年のわが国の歴史の中で、初めて民衆の力で作られた国家権力だ。だが、わが国には律令制以来の官僚支配のDNAが続いている。官僚の手のひらで踊る政治なら許せるが、そうでないものは許せないという感覚が残っている。
政治を官僚から国民の手に取り戻すことが、鳩山政権誕生の意義なのだ。総選挙前の昨年三月三日、西松建設の問題で大久保隆規秘書が逮捕されてから六日目に、私は当時代表だった小沢さんと二人で会い、いろいろ意見を交換した。
私は、総選挙を控え、いま小沢一郎という政治家は、既得権を維持したい勢力─自民党・公明党を中心とする旧体制、「検察を筆頭とする最高の国家試験を通った人間が国家を支配すべきである」と考える官僚たち、そして、記者クラブ廃止や、一つの事業者がテレビやラジオ、新聞などの多くのメディアを傘下に置く「クロスオーナーシップ」の禁止を警戒するマスコミ─などから狙われていると警告した。
「あなたがいると、旧体制の既得権を維持できなくなるので、あなたを政治的に暗殺しようとしている」と。そこで、本当の民主主義を確立し、日本経済を振興し、国民の幸福を増大するためには、旧体制に抵抗する「民主主義を守る国民運動」を起こしたいと小沢さんに言った。しかし、小沢さんは、「俺は狙われるような悪者じゃない。多くの国民は、自分のやろうとしている改革を理解してくれていると思っている。狙われるようなことはしていない」と言ったのだ。そこで、私との間で若干の論争があった。いま考えれば、私の予想は当っていたと思う。
小沢氏を政治的に暗殺しようという策謀は続く
【平野】総選挙における三〇八議席という民主党の圧倒的勝利の背景には、特捜のやり方に対する国民の反発もあったと考えている。
鳩山政権が誕生し、滑り出しはよかったが、その後沖縄の米軍基地の問題や、マニフェストに対する批判など、様々の問題が出てくる中で、昨年一一月頃には、旧体制側は「民主党政権を壊せるかもしれない」と考え始めたのではないか。その頃、再び私は小沢幹事長に会い、「無血革命が定着するのは今年七月の参議院選挙だ。そこで民主党が過半数をとれば、民主主義は確立する」と、小沢氏に言った。小沢氏もこのときには、旧体制の反撃を警戒するようになっていた。
メディアの太鼓とラッパのもとで、検察が動き、野党とマスコミは小沢批判を強めた。今回小沢幹事長は不起訴となったが、小沢氏を政治的に暗殺しようという動きは続くだろう。
旧体制を打破しようという動きに対して、検察など旧体制が暴走するということは、古今東西よくあることだ。これは決していいことではないが、敢えて批判する気にはなれない。こうした旧体制の暴走に対して、政治、そしてメディアがどうそれをチェックするかが問われている。それが人間社会の智恵だ。ところが、二一世紀の今日、わが国の状況はどうか。日本のデモクラシーは未熟で、不安定な状況だ。
―― 小沢独裁という批判もある。民主党の中で民主的な議論ができない雰囲気があるのではないか。自民党の谷垣禎一総裁は、小沢氏に説明を求める声が民主党内で出ないことについて「物言えば唇寒しという心境ではないか」と言っている。
【平野】仮に「唇寒し」で物を言わない議員がいるとするなら、言わない議員に問題がある。
予算編成において、鳩山総理よりも小沢幹事長の力が強かったなどというような議論も、マスコミが勝手に書いたことに過ぎない。小沢氏は、「党としてはこういうまとめ方をしたので、政府の方でご判断ください」と言っただけのことだ。政府の方針が百家争鳴でまとまらない状況の中で、党としての考え方を伝え、落とし所を示すことによって助け舟を出したわけだ。評価されるべきことであり、批判されるようなことではない。
―― 小沢氏が進めた陳情の改革にも批判がある
【平野】 陳情、請願は国会の制度であり、国会運営を担当する党が仕切ることができる。自民党がやっていたように特定議員、族議員の関与を回避するために、県連でまとめ、それを党に出してもらうように変えただけだ。政党政治の本来の姿だ。
田中・竹下は小沢にダーティな仕事をさせなかった
―― 小沢氏を田中角栄、金丸信、竹下登に連なる悪の系譜と位置づける見方もある。
【平野】田中、金丸、竹下の三人が、問題のある政治資金に手を汚していたことについて、私も否定はしない。しかし、小沢一郎は全く違う。竹下さんが皇民党事件で証人喚問を受けることになったとき、私はアドバイスするよう竹下さんから頼まれた。そのとき今後の自分の政治家としての在り方についても意見を言ってくれと言われた。そこで私は、「経世会を解散し、自由民主党を中心に政界再編をする方向に向かわなければ、あなたも金丸さんも政界で生きていけません」とはっきり言った。竹下さんは「あなたの言う通りだが、自分も金丸さんも自民党という汚れた世界の中に生きてきて、しがらみがあり、どうにもならない」と言った。そして次のように竹下さんは続けたのだ。
「いろいろ言われているが、一郎には一切汚い仕事はさせてない。だから一郎とあなたが日本の政治をどうするか考え、遠慮なくやってくれ」
田中さんも竹下さんも、小沢さんをかわいがり過ぎ、ダーティな仕事をさせなかった。問題のある政治資金について関わらせていなかったのだ。政治資金について苦労をさせていないのである。それが、小沢氏の強さでもあり弱さでもある。
また、平成五年六月、宮沢内閣不信任案が可決されて衆院総選挙となり、羽田・小沢グループは「新生党」を結成した。綱領と基本政策を担当した私は、念のため党首の羽田さんと幹事長の小沢さんの政治活動での資金問題を、友人である法務検察首脳に身体検査してもらったのだ。回答は自民党時代の二人の政治資金について、「問題なし。二重丸だ」との返事であった。私はこれで真の政治改革ができると確信した。それ以降、私はほとんど小沢氏と一緒にいたので、彼の政治資金に不正なものがないことはよく知っている。
私が小沢一郎という政治家と仕事を超えた人間関係となったのは、ロッキード事件の後、政治倫理制度を作る時代だ。小沢氏が議院運営委員長に就任してからだ。よく政治家としてのあり方を聞かれたが、「マスコミに迎合していては、良い政治はできない」と私の人生の師である故前尾繁三郎衆院議長の考えを伝えたことがある。その後の小沢氏の政治活動にもかなり影響を与えたようだ。
小沢氏はロッキード事件の田中元首相の裁判を全部傍聴したことで知られている。これについては、被告の田中元首相と同じ発想で、検察憎しという姿勢からだという見方と、点取り虫で良く思われたいからだという見方があったが、いずれも誤りだ。小沢氏は、私に「総理までやった人間が、苦境に立ったとき、どのような生き様をするのか、これを学んでおきたかった」と、語ってくれたことがある。(以下略)
*本稿は編集部の許可を得て投稿しています。
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