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【TPPの真実】 【緊急インタビュー もう経済復活は無理なのか】カレル・ヴァン・ウォルフレン(ジャーナリスト)
http://gendai.net/articles/view/syakai/135434
2012年3月5日 掲載 日刊ゲンダイ
財政危機もTPPも罠だ!日本は復興のチャンスを逃してはいけない
<旧態依然の政府組織を壊せ>
「日本はいま暗澹たる事態に陥ろうとしています」
こう言うウォルフレン氏は今月10日、「日本を追い込む5つの罠」(角川書店)という新著を出す。そこには罠でがんじがらめになる日本の姿が描かれているのだが、中でも見過ごせないのが2つの罠だ。
ひとつは財政危機という罠。もうひとつはTPPという罠。
財政危機は緊縮財政と増税を正当化しようとする。これが最初の罠だ。
「医療や教育からインフラに至るまで、できるだけ予算は削減した方がいいという考え方は“美徳”と思われがちです。しかし、一般家庭には財政破綻もあり得ますが、日本は9割以上の国債を国内の金融機関が保有しているので財政破綻はあり得ません。机上の空論なのです。財政緊縮というのはウイルスに似ていて、米国発の『伝染病』のようなものです。日本がそのウイルスに侵されて東日本大震災の復興が遅れている点が気がかりです」
このウイルスに感染しているのが、財務省と民主党ということになる。
「そのため、本来ならば、復興という日本経済を活性化できる一大チャンスを逃しているように思えてなりません。歴史上、緊縮財政を採用して景気を回復させた国家はないのです」
もうひとつの罠、TPPは米国が仕掛けているものだ。
「TPPは多国間で関税撤廃を実現し、自由貿易を推進するという目的を掲げています。随分前であれば、協定のお題目に賛成したかもしれません。しかし内情を知ってしまうと、その立場を変えざるを得ません。TPPの主要テーマには労働法や環境法が優先的に上がっています。しかも米国の交渉担当者はTPPを「経済協定」ではなく、「政治協定」として捉えている。これは、米国政府が主導して、自国の多国籍企業にTPP参加国の市場をコントロールさせようとしていることに他ならない。もちろん、日本市場もコントロールされることになります。TPPに参加すれば、日本の農業関係者が憂慮している通りのことが起こるでしょう。たとえば、米企業モンサント(遺伝子組み換え作物の種で世界最大シェアをもつバイオ化学メーカー)などが、日本市場で寡占的なビジネスを展開する可能性があります。これまでもモンサントは開発途上国で好き放題してきた。自社の利益が上がれば他国の農村がどうなろうと気にしない。それがモンサントの社風です」
日本の農業がさまざまな問題を抱えていることは事実だ。しかし、ウォルフレン氏は「それでいいじゃないか。非効率な農業を維持しましょう。美しい国土を残しましょう」と言う。
「私の母国オランダも自国の風景を大切にします。他国から何を言われようが、意志を曲げない姿勢も貫いています。それよりも、旧態依然とした政府組織が世界のスピードについていけず、変わらないことが問題です。改革が必要と考えた政治家は官僚不良論を唱えましたが、結局、財務省依存型の官僚政治が強化された。罠に陥らないために頑迷なイデオロギーから自らを解き放ち、新しい思考を取り入れることが必須です」
それができなければ、罠にはまった日本経済は朽ちていく。自ら進んで罠にはまろうとする政権は論外である。
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