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2012年3月 2日 (金)
「人権委員会」は特高警察の甦りである 法治国家である日本では、人権侵害(人権蹂躙)という犯罪については明確な法規定がない。しかし、常識的には既存の法体系で処理することになっていると思われる。ところが、旧自公政権や現民主党が人権侵害救済について志向する人権救済モデルは、人権委員会(三条委員会)なる新たな独立機関を設けてこれに対応するというものである。なぜ人権問題のみが完全に独立した設置機関の範疇に属し、人権侵害(人権蹂躙)の判断が、その機関の裁量に委ねられてしまうのか。ここに「人権救済機関設置法案」(仮称)の最大の懸念がある。 われわれ法曹の素人が単純に考えても、人権侵害は刑事事件の範疇にあると思える。つまり、警察が管轄するべき範疇である。なぜそれではいけないのか。強調して言うが、わざわざこれに対する専門機関を設けて、それに対処しなければならないどんな正当な理由が存在するのだろうか。喩えは不適切かもしれないが、これはTPPにおける投資ジャンルで、ISD条項と似た理不尽さを感じる。表面上はTPP参加国から独立した第三者の国際機関が、参加国個々の法体系を超えて、一方的に投資側の不利益を考慮して相手国に法外な責任を負わせる治外法権システムである。 TPPにおけるこのICSIDは世界銀行の傘下にあり、国際投資紛争の調停と仲裁を行う場を提供するとあるが、関岡英之氏によれば、そこには数名の仲裁人がいて、審理は一切非公開、判定は強制力を持つが、不服の場合でも上訴することはできないという。判定の基準は国家の必然性や妥当性ではなく、「外資が損害を被ったか否か」という一点に尽きるそうである。この第三者機関なる存在が胡散臭く、裏ではアメリカ政府中枢と意を通じあっていて、投資紛争の帰結は常にアメリカに有利になると思われる。 これと似た感じで、「人権委員会」なるものが、公正中立、平等の規範に基づくものではなく、国民の思想統制・言論弾圧の目的で設置されると捉えたほうが、法案創設の経過が腑に落ちるのである。どう考えても私的制裁機関の色彩が強く感じられる。検察審査会も似た感じがあるが。この委員会が現今の検察と同様に起訴の裁量権(起訴便宜主義)のような、恣意的裁量権を有したら、人権侵害の判断が彼らの一方的な政治判断で行われる可能性が強い。これこそジョージ・オーウェルの「1984年」に登場するビッグブラザーズそのものと言えるだろう。典型的な恐怖政治が始まってしまうことになる。 従って、言論の大弾圧を想定した、このような暗黒恐怖政治を実現する法律は絶対に是認してはならないのである。 2012年3月 2日 (金)
2月21日の産経ニュースを見ると、小川敏夫法務大臣は21日の衆院予算委員会で、人権救済機関「人権委員会」の新設について「全国で統一的に適切な人権侵害への対応ができるので、人権委員会を設置する必要がある」と強調し、新制度創設のための「人権救済機関設置法案」(仮称)の今国会提出に意欲を示したそうである。また、定住外国人への地方参政権付与に強い意欲を表明した。自民党の柴山昌彦氏は「人権の解釈は多義的になっている。統一的な機関を設置すると逆差別の危険性が出てくる」として慎重な対応を求めたそうである。
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