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◎前原はマスコミとのけんかの仕方を知らない
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2012-02-29
2012-02-29 06:55 永田町幹竹割り
産経新聞記者の記者会見出席拒否問題は、結局民主党政調会長・前原誠司が一転して出席を認め決着した。23日以来一週間で前原の“完敗”に終わった。一連の動きを観察していたが、どう見ても前原は政治家として幼い。マスコミとのけんかの仕方を知らない。よく首相・佐藤栄作の最後の記者会見との類似性が言われるが、佐藤とは比べものにならない幼稚さがある。本格的な首相候補になるには、坊主になって1000日修行でもしてくる必要がある。
産経は前原に対して「言うだけ番長」とネーミングして、それを過去に16回も使ったという。この「言うだけ番長」は1967年から71年まで続いた人気コミック「夕焼番長」をもじったもので、新党日本の田中康夫が名付け親だ。八ッ場ダムのいきさつからいって、見事なニックネームだ。前原にしてみれば確かに産経の記事は神経逆なで型だ。とりわけ前原が怒りを爆発させたとみられる19日付の記事は、「前原氏『言うだけ』また露呈、輿石氏『尻ぬぐい』に奔走」と見出しを取り、国家公務員給与削減をめぐる民主、自民、公明の3党基本合意の内幕をえぐっている。そして「言うだけ番長の能力不足はもはや取り繕いようがない」と決めつけている。前原でなくても敵意と悪意に満ちた記事と受け取れる性格のものだ。
しかし、前原はこれにまともに反応してしまった。それも、もっとも稚拙な会見出席拒否という対応だ。実は前原には“前科”があり、報道されなかったが北海道新聞記者など2,3人に対して出席拒否を宣言しているのだ。産経はもともと民主党政権発足以来、徹底した反民主党のキャンペーンを続けており、かねてから不満をうっ積させていたに違いない。しかしけんかのやり方を知らない。
その点佐藤は、けんかのやり方を知っていた。佐藤は普段から自らの発言に対する新聞の“コメント”に不満を持ち、秘書官の楠田實に「真意が報道されない」と不満を漏らしていた。そして政権7年8か月の最後の最後で怒りを爆発させたのだ。佐藤は退陣会見で「テレビカメラはどこかね?新聞記者の諸君とは話さないことにしてるんだ」と言い放って、まず記者団の退去を求めた。そして、ひたすら無人の会見場でテレビカメラ相手にしゃべり続けた。佐藤のけんかは我慢に我慢を重ねて、退陣直前に堪忍袋の緒を切ったのだ。新聞は社説でたたいたが、後の祭り。政権は終わったから、何の痛痒も感じないのだ。
佐藤のけんかのすごさは西山太吉事件でも発揮された。外務省の機密漏洩事件だ。1972年、西山は沖縄返還に絡んで簿外の四百万ドルが動いたことを知ったが、記事にせず、社会党に証拠を渡して政局にしようとした。外務省高官の女性秘書を籠絡しての取材だった。これを東京地検を使って摘発したのだ。地検は起訴状で「外務省の女性事務官と密かに情を通じ、秘密漏洩をそそのかした」と取材の実態を浮き彫りにしたのだ。最高裁まで行って有罪が確定したが、本物の政治家の“けんか”のすごさをまざまざと感じさせるケースであった。佐藤は新聞に対しては、勝つけんかしかせず、普段は我慢の子であった。
佐藤と比べれば前原のけんかは児戯に等しい。くちばしの黄色さが目立つのだ。一つは政治家にとって一番危険なヒステリックな対応であることだ。産経が反民主党政権であることは誰が見ても明白であり、これにまともに反発すれば、待ってましたとばかりに3倍の反発を食らうことを知らない。こと言論の自由の問題と関わるとマスコミは当然のことながら一致結束する。産経とは対極にある朝日までが社説で批判する結果を招いた。第二に「口だけ番長」の表現は誰が見てもうなずけるものであることだ。なぜなら国交相の時は八ッ場ダムの工事を「マニフェストに書いてある」という理由だけで中止宣言したが、着工が固まり、以来発言はない。外相時代は尖閣事件で官房長官・仙谷由人とつるんで船長釈放に動いて、米国務長官・クリントンに「近く解決します」といち早く情報を伝えたが、その後は知らんそぶり。
要するに重要ポイントであっけらかんとして軽いのだ。最近も永田町では誰もが首をかしげる維新の会に大接近。あの船中八策なる愚策を「われわれの考え方とかなり共通する」と絶賛。みんなの党と競わんばかりのすり寄り方だ。維新の会のブームで問われているのは、既成政党の毅然(きぜん)とした態度だ。すり寄り政治家ではとても国政を委ねられまい。
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