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2012年2月25日 (土)
日本政投銀救済と人事利権目的の東電実質国有化
これまで予想してきたとおり、政府は東京電力を「りそな方式」で救済する方針を示している。
りそなの場合、政府が利用したのは預金保険法第102条第1項第1号措置という、言わば法の抜け穴であった。
銀行が自己資本不足に陥ることを経営危機と呼ぶ。債務超過になれば実質破綻である。破綻した銀行は法律の定めに従って法的整理されることになる。
りそな銀行は狙われて自己資本不足に追い込まれた。
同様の財務状況にあった銀行はいくつもある。いずれの銀行も将来利益計上の見通しが立たないため、繰延税金資産を自己資本に計上することは適切でないとの見解が成り立つ銀行であった。
2003年の事例の場合、これらの銀行のなかで、繰延税金資産の自己資本への計上が5年分認められなかったのはりそな銀行だけだった。しかも、この話が浮上したのは決算期末を過ぎた2003年4月に入ってからだ。
りそな銀行は狙われて自己資本不足銀行に陥れられたのである。自己資本不足に陥った場合、適用される措置が大きく分けて二つある。自己資本がマイナス、つまり、銀行が債務超過に陥った場合には、破たん処理される。他方、自己資本が基準を満たさないがマイナスに転じていない場合は、第1号措置が適用され、銀行は公的資金で救済される。
預金保険法102条第1項には、天国と地獄の区分基準が盛り込まれていたのである。
りそな銀行の自己資本不足状況を生み出すことに積極的に関与したと見られる木村剛氏は、りそな銀行の繰延税金資産計上はゼロないし1年以外にはありえないことを主張し続けた。
2003年5月14日に木村剛氏が日経関係のサイト上に発表したコラム記事でも、「破たんする監査法人はどこか」とのタイトルで、明らかにりそな銀行だと分かる表現で、繰延税金資産計上はゼロないし1年しかあり得ないことを力説した。
将来利益計上の見通しが立たないことがその理由である。会計士協会規則に則った見解であった。このルールを守らないのであれば、監査法人を破綻させるべきだとまで主張した。
ところが、5月17日にスクープされた現実の最終決定では、繰延税金資産計上が3年とされた。なぜ3年という不自然極まりない決着になったのかと言えば、3年でなければ、預金保険法第102条第1項第1号措置という、「法の抜け穴」を利用できなかったからである。
3年計上にするとりそなの自己資本比率は基準の4%を下回るが、マイナスには転じない。ところが、木村氏が強硬に主張したようにゼロないし1年計上とすると、どちらにしてもりそな銀行の自己資本比率はマイナスに陥り、りそな銀行は法的整理されなければならなくなる。
逆に、他のすべての銀行と同様に5年計上を認めるとりそな銀行は自己資本規制をクリアして、健全銀行として決算を乗り切る。
こうした背景から、人為的に3年計上が決定され、りそな銀行は公的資金で救済されたのである。
政府はりそな銀行に1兆9800億円の公的資金を投入した。この公的資金でりそな銀行は救済され、株価はなんと5ヵ月で4倍の水準に跳ね上がったのである。
銀行が破綻すれば本来、株主は出資した資金を失う形で責任を取らされる。これが株主責任だ。りそな銀行の場合、竹中平蔵氏が「大銀行といえども「大きすぎるからつぶせない」のルールを適用しない」と発言したために、多くの株主は株価が暴落する過程でりそな銀行株式を投げ売りした。
大きな損失を計上して株式を投げ売ったわけで、一定の株主責任を取らされた。しかし、見落とせないことは、この過程で暴落した株式を一手に買い集めた投資家が存在することだ。主として米国系のファンドである。一部の政治家も含まれる。
彼らは、最終的に預金保険法102条第1号措置という「法の抜け穴」を用いてりそな銀行が救済されることを事前に知っていた。このインサイダー情報に基づいて株式を買い集め、その後の株価急騰局面で濡れ手に粟の暴利を獲得したのである。
私はテレビ番組で何度も、証券取引等監視委員会は、りそな処理前後の株式売買手口を徹底的に調査するべきことを訴えた。しかし、証券取引等監視委員会が動いた気配はない。
もともとりそな銀行が狙われた理由は単純である。りそな銀行の経営トップが、小泉竹中政権を厳しく批判していたからである。このためりそな銀行は逆恨みされて、自己資本不足に人為的に追い込められたのだと私は推察している。
竹中金融行政の狙いは、りそな銀行経営者の追放にあったと考えられる。他方、りそな銀行を破たん処理していれば、日本は間違いなく金融恐慌に突入したであろう。竹中金融行政の破綻は誰の目にも明らかになったはずだ。
そこで利用されたのが預金保険法第102条第1項第3号措置という「法の抜け穴」であった。これを利用することにより、金融恐慌を回避し、株価の反転上昇を得ることができる。同時に、りそな銀行の経営陣を一掃することができる。つまり、りそな銀行を政府が「乗っ取り」できるわけだ。
竹中金融行政は破綻した。「退場すべき企業は市場から退出させる」ことを公約として掲げていたが、結局は、「退出すべき企業を公的資金で救済」したのであるから、政策の破綻は明白であった。
この政策破綻を糊塗したのが日本経済新聞である。竹中金融行政の破綻と報じるべきところを、「革新的な金融行政」だと絶賛したのである。
結局、りそな銀行は2兆円の公的資金で救済され、株価は急騰していった。インサイダー取引で巨大な利得を得た者が多数存在するはずだ。
小泉竹中政権は経営陣を一掃した。大銀行の役員ポストは極めて高い価値を持つものだ。この人事利権を活用した。小泉竹中政権近親者にこの利権ポストを配分したのである。小泉竹中政権によるりそな銀行私物化、りそな銀行乗っ取りと表現するのがもっとも実情に近い。
これと同じ方式が、いま、東京電力に適用されようとしている。利権ポストが私物化される。他方、金融機関の貸し手責任が一般国民に転嫁される。この点を見落とすことができない。
お知らせです!
1月28日に配信しご好評いただいた【天木×植草リアルタイム時事対談】の第2回生中継配信が決まりました。
本日25日の生中継配信です。
第2回となる今回は、「日本はどこまで米国に支配されているのか」をテーマに、小沢裁判とこの国の警察・検察・司法の闇、対米隷属を続けるこの国の政治・政策運営などの問題についてとことん議論します。
配信日時:2012年2月25日(土曜日) 19時00分放送開始予定
今回の放送は、有料メールマガジンの読者限定で生中継配信させていただくもので、有料メールマガジン読者は無料でご覧いただけます。
なお、今回の配信ではアーカイブ無料配信がありません。アーカイブ動画につきましては、誠に恐縮ですが、有料動画記事として別途ご購入をお願いすることになりますのであらかじめお含み置きください。
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