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「動機」の政治と「結果」の政治(田中良紹)
http://www.asyura2.com/12/senkyo126/msg/759.html
投稿者 判官びいき 日時 2012 年 2 月 25 日 10:26:57: wiJQFJOyM8OJo
 

政治は「結果」である。どんなに「動機」が正しくとも「結果」を出せなければ意味がない。ところが「動機」が正しければそれで良しと考える人たちがいる。その人たちは正しい事を主張するのが政治で、正論は必ず理解されると信じているようだ。信ずるのは勝手だが、それでは余りにも世の中を知らない。人間は「理屈」で動くのではない、「利益」で動くのである。

しかも正論は人さまざまである。全員が正しいと思うことなどまずない。誰かが「正しい」と言えば、別の人は「正しくない」と主張する。時代が変われば正しさの基準も変わる。正しい事を実現したともてはやされた政治が後に批判された例はいくらでもある。

以前書いた『増税の「理」と「利」』で、私が坂本龍馬を一級の政治家と評価した理由はそこにある。「維新の志士」と呼ばれる人たちは、ひたすら「尊皇攘夷」を正論として結果も考えずに突き進んだ。しかし龍馬は「理屈」を叫んで世の中が変わると思っていない。薩長連合は、龍馬が薩摩には米を、長州には武器という「利益」を与えたから実現した。

そして龍馬には新時代を切り拓く戦略とシナリオがあった。徳川家に「大政奉還」させ、天皇中心の体制を作るが、しかし政治を執り行う能力に乏しい公家や薩長の田舎侍に政権を任せるのではなく、それまで政治を執り行なってきた徳川体制を温存させ、ドリームチームとでも言うべき公武合体の大連立政権を作ろうとした。「尊皇攘夷」などどうでも良かったのである。それが欧米に対抗するための日本国誕生のシナリオであった。

ところが龍馬は暗殺され、ほどなく戊辰戦争が起こり、龍馬の描いた「公武合体政権」のシナリオは消滅した。代わりに「動機」の正しさを主張する幼稚な連中の明治が生まれた。だから「週刊新潮」に文芸評論家の野口武彦氏が連載するように、明治の「め」は目茶苦茶の「め」なのである。そう考えると坂本龍馬が暗殺され、彼の戦略とシナリオが消えた事が日本を政治未熟の国にしたとも言える。

こう書いてきたのは、昨年11月のG20で「消費税法案の2011年度内提出」を国際公約した野田総理が「結果」を出すための戦略とシナリオを持っているように見えないからである。野田総理の発言を聞いていると「動機の正しさを認めてくれ」と言っているに過ぎない。

私は全くそう思ってはいないのだが、仮に「社会保障と税の一体改革」が正論であっても、仮に「財政赤字の解消」が正論であっても、増税で金を取られるのは国民だから、国民にどのような「利益」が与えられるのかを具体的に示さない限り物事は動かない。「正論」は誰にでも言える。「正論」を言うだけなら政治家は要らない。政治家の仕事は「結果」を出すための戦略とシナリオを持つ事なのである。

しかしこの国には「動機」の正しさを主張するだけの政治家が多い。前の総理も見事に戦略とシナリオの欠如した政治家であった。だから負けてはならない参議院選挙に敗北し、「ねじれ」という負の重荷を背負っても、それを解消する戦略もシナリオもなく、ひたすら野党にすり寄るだけの政権運営を見せた。そのくせ「正論」の如き口ぶりで「理屈」だけは言った。

その前の総理も普天間基地の県外・国外移設を主張したが、その「結果」を出すための戦略もシナリオも持ち合わせてはいなかった。アメリカは普天間基地の辺野古移設が困難である事を百も承知だ。海兵隊を分散させる計画もある。であるにもかかわらずアメリカを納得させるシナリオを提示する事が出来ず、最後は絶対に実現するはずのない辺野古移設を認めるという最悪の結論に戻った。

野党に転じた自民党も酷いものである。「政権奪取」という目的のためならなりふり構わない。「動機」が正しければ何でもやれとばかりに民主党攻撃を行なって自らの人気を下げている。へまをした子供とそれをいじめる子供の喧嘩を見せられているのが今の国会で、公明党の方が本格野党に見えてくるから、つくづく自民党に政権が戻る事はありえないという気がする。この政党の政治家にも「結果」を出すための戦略とシナリオがない。

歴史学者の中には「維新の志士」たちに影響を与えた「陽明学」が、「動機」の正当性を重視する政治風土を生み出したという見方がある。「動機」さえ良ければ後の事は考えずに「やっちまえー」と言ったのが幕末維新だったと言うのである。似たような事は戦後「60年安保闘争」でも見られた。

しかし私の知る限り、かつての自民党には「結果」を出すための政治技術があった。シナリオを書ける政治家がいて、誰にも知られずにシナリオを書き、誰にも知られずにそれを実現して行く。大方の政治家はそのシナリオによって動かされている事に気付かない。そして「結果」が国民のためになればそれで良しとする考え方だった。それに比べるとテレビで口角泡を飛ばす政治家や「理屈」だけを言う政治家が子供に見えてくる。古い自民党には悪いところも沢山あったが、しかし今よりは大人の政治をやっていた気がする。
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/02/post_291.html#more
 

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コメント
 
01. 2012年2月25日 10:43:11 : pphEUA8yso
昔の自民党は田中角さんに集約される如く、政治家が官僚を操っていた。
それが、多数の無能政治家が集まり、現在の体たらくな自民党(自滅党)に劣化した。シンキロウから官僚が政治家を操るようになった。

02. 2012年2月25日 12:07:40 : PJf8JcMWn2
私は官僚を使って大きな仕事をしたのは田中角栄だけだと思っています。
日本に何の相談も連絡もせずに、本当に日本の頭越しに突如としてアメリカは中国と手を結んだのです(当時は冷戦時代のど真ん中ですよ!)。怒った田中角栄はアメリカに対して意趣返しせずにはおれなかった。それが電撃的な”日中国交回復調印”だったわけです。そう、政治は結果なのです。日本に黙って米中接近を成し遂げるシナリオを描いたキッシンジャー国務長官は、だからこそ田中角栄がしでかした<勝手な振る舞い>を非難できなかった。
でもアメリカが田中内閣に対して本当に怒ったのは<電撃的な日中国交回復>ではなかった。田中角栄が始めようとして実際に交渉中だった”日ソ協同エネルギー開発プロジェクト”だったのです。田中の戦略とシナリオは原子力に依存しないエネルギー開発を中国・ソ連と共同でやりたかったのです。でも、堪忍袋を尾を切ったアメリカが持ち出したのが、例のコーチャン証言・ピーナッツ=ロッキード事件だったのです。ありもしない収賄事件をアメリカから仕掛けられたのでした。でも、当時の田中角栄にはそれを防ぐ手立てを全く持っていなかった。で、彼は自らの潔白を晴らすことなく失意のうちに病死したのです。これも、”政治は結果”であることのすべてを端的に表しています。
 同じように小沢一郎はいわれなき西松事件・陸山会事件で有罪にされようとしていた(実際にされてしまう?)。ところが、この事件の前半部分は西松建設の総務部長が”わが社の政治団体は架空ではない、実際に会社内に存在している”と証言したため、信じられないことだが消えてなくなってしまった。実際には裁判所と検察が相談して、訴因変更というわけのわからないことをして陸山会事件へすり替えてしまった。で、その陸山会事件で検察は大きなミスを犯した。保釈後の石川議員の任意の取り調べで一部始終を隠し録音されてしまったのです。石川さんはペン型ICレコーダーにご丁寧にも集音マイクを付けていたのです。5時間丸ごとしっかりはっきり録音された。これが、秘書の裁判で威力を発揮して供述調書の大半が却下されることにつながった。が、さらにこの録音は小沢氏本人裁判でもっと大きな威力を発揮することになった。それが田代検事の”捜査報告書のねつ造”を暴いたことだった。石川さんはこの隠し録音を自分の裁判が始まる直前まで誰にも言わずに(もちろん自分の弁護士にも、小沢さんにもです)8か月眠らせた。私はこれこそが彼のスーパーファインプレーだったと思ってます。彼がこれを自身の裁判の直前にマスコミに公表したとき、記者クラブマスゴミの連中は”思わぬ飛び道具に上へ下への大騒ぎになった”。だが、この事実は巧妙に最小限の広がりに食い止めることができた、私はTVで見ました。それと知らないキャスターがこの隠し録音の詳細を話し始めた途端、彼は、”えっ何、終わりにしろって?どういうこと?”。彼は不機嫌そうに強引に次のニュースを何の脈絡もなく開始させられたのです。彼の目の前には両手でバツ印を送るディレクターがいたのは容易にわかりました。確か関西TVでした。
石川さんは周囲の誰も信用していなかったのですね。自分の弁護士はヤメ検だし、つい口を滑らせたらヤミに葬られていたでしょう。石川さん、これも<政治は結果>ですよね。これが公にされなかったら、小沢さんは間違いなく有罪にされていましたよね(まだ有罪は残されている、なんせこの国の裁判は推認・推認、また推認ですから。証拠?会計法上?そんなもんいるかー!オレが法律だ!でしょ、判事さん?)

03. 2012年2月26日 01:15:18 : 42WLGuDM8Y
02様 ありがとう。同意いたします。


04. 2012年2月26日 10:31:09 : UPKvdPKIBU
02様 あなたの素晴らしい投稿で、私の中で絡まった糸が解きほぐれました。
田中角栄の日本のエネルギー自立を目指したことから、現在の小沢一郎冤罪行動までつながるのですね。田中角栄の裁判を一度も欠かさず傍聴した小沢一郎こそこの事を最も理解していた。
田中角栄冤罪で米国に従う売国官僚群が様々な仕組みを検察、最高裁判所、外務省、財務省などに巡らしたが、石川さんのスーパーファインプレーと阿修羅に集うネット市民が次々とあばき始めている。

05. 2012年2月26日 10:40:19 : UPKvdPKIBU
04. 続き
田中角栄の日本のエネルギー自立が実現していたら福島原発事故は起こりえなかった。現発大国を目指させた米国にも責任が問われる事が可能であり、米国はその責任を感じ始めている可能性もある。

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