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検察とマスコミは共犯だ!
フリージャーナリスト 青木 理
http://gekkan-nippon.com/?p=3253
『月刊日本』2010年1月号
小沢一郎民主党幹事長の政治資金をめぐる検察の捜査が続いている。12月5日には、小沢氏の元秘書である石川知裕衆議院議員の政治資金虚偽記載疑惑が一斉に報道され、検察は「小沢包囲網」を着々と進めている。
検察の捜査のあり方、そしてマスメディアのあり方を取材し続けているジャーナリスト・青木理氏に話を伺った。
マスコミは権力に踊らされている
―― 小沢氏、そしてその周辺人物に対する東京地検特捜部の活動が活発だ。
【青木】 またいつもの調子でやっているな、というのが率直な感想だ。メディアへのリークなどによって「疑惑」が事前に煽られ、あたかも犯罪が行われたのは間違いないかのような印象が植え付けられていく。印象操作を十分にして、世論が「早く捕まえろ」という空気になってきたころに、検察が颯爽と登場し、強制捜査に乗り出す。『月刊日本』の読者であれば、例えば鈴木宗男氏や佐藤優氏をめぐる事件での、逮捕前の過剰なメディアへのリークをよく覚えているだろう。
検察が小沢氏に深い遺恨を抱き、狙いを定めて捜査しているのは間違いない。ただ、検察が今回、小沢氏という権力者に対してどこまで同じ手法で食いついていけるのか、これについて現段階で私は、どちらかというと懐疑的に見ている。
―― 検察そのものよりも、検察からのリークをそのまま垂れ流すメディアの責任が大きい。
【青木】 検察というのは、まさに権力の中の権力。特にメディアは検察に一切歯向かうことはできない。新聞・テレビにとって検察は、最大のタブーといってよい存在だ。たとえば、他の省庁で幹部が記者発表を行えば、テレビカメラもそれを撮影して中継するが、検察庁内でテレビカメラが回されることはほとんどない。重要な会見でテレビカメラが入らない役所など、検察庁と警視庁くらいしかない。
テレビの映像は、活字とは異なる影響力を持っている。どんな権力者だろうが、テレビ画面に映されると陳腐化し、撮り方次第で悪人のような印象を作ることもできる。しかもその映像を繰りかえし放送すれば、印象は視聴者に刷り込まれていく。検察はこの映像の力をよく理解しているからなのか、自分たちの会見には絶対にカメラを入れさせない。一般人に対する取材では傍若無人な振る舞いを繰り返すテレビも、検察には強く出ることがない。一方で検察が強制捜査に入る際は事前に情報をリークし、テレビカメラが注視する中、さも大事な書類を押収したと言わんばかりにダンボールを抱えて歩くというセレモニーを放送させる。検察とメディアは完全なる“共犯関係”を形作っている。
鈴木宗男氏は「マスコミは反権力と言っているが、本当のところは、権力に踊らされているのではないか」と問題提起をしていたが、実に鋭い指摘だと思う。マスコミと検察はベッタリの関係に慣れ切っている。
捜査情報のすべてがリークというわけではないが、検察報道の仕組みを簡単に言うとこうだ。まず、検察が記者に捜査情報をそれとなく漏らす。すると、記者は「……という事実が関係者の話で分かった」「これは特捜部も把握しているもようだ」「今後、検察捜査の進展が注目される」などと情報源を薄めて書く。時には、検察の意向を先回りして捜査の露払いのような報道に狂奔する。こうした取材・報道が時おり検察と摩擦を起こすことはあるが、基本的に検察とメディアは同じ方向に向かって突っ走る。そして、メディア報道によって地ならしがされた段階で検察も強制捜査に乗り出す。時にはメディアが検察の尻を叩く。検察とメディアが共同作業で事件を「作っている」と言ってもいいだろう。一方で裏金問題のような検察の恥部にメディアは触れようともしない。
―― かつて朝日新聞が「ひと」欄で井内顕策東京地検特捜部長を紹介したとき、KSD事件で村上正邦氏の取り調べに際し、村上氏に、「ここで腹を切ってみろ」というようなことを言ったということを紹介した。井内氏はこれで腹を立てて、朝日新聞を出入り禁止にし、朝日側は謝罪文を提出したという。なぜ、マスコミは検察に対してこれほど弱腰なのか。
【青木】 端的に言ってしまえば、検察が極めて重要な情報源だからだ。各新聞の社会部では検察担当こそが花形であり、記者の憧れだという時代が長く続いた。そして検察担当記者は捜査情報、逮捕情報をいち早く掴み、報道することが求められる。実際、たいしたことのない事件でも、特捜部が動けば一面トップの華々しい記事になる。そうした記事で他社に出遅れる「特オチ」だけは、なんとしても避けなければならない。こういう感覚を現場の記者も、デスクも、編集幹部も持っている。
そもそも新聞記者は駆け出しの頃から、警察、検察、裁判所を駆けずり回る。この三箇所を廻ることが仕事と言ってもよい。若い頃から検察と記者は切っても切れない関係になる。すると、検察に取材を拒否されて「特オチ」したり、捜査情報が入らないという事態は絶対に避けなければならないと考えるようになる。朝日の件については当事者ではないのでわからないが、そういうことが実際にあったとしても驚かない。
しかし、過去と異なり、新聞は速報性においてはテレビやネットに太刀打ちできない。各紙の経営も急激に悪化する中、そもそも「特ダネ」とは何なのか原点から考え直すべきではないか。検察の捜査情報をいち早く書くこと、検察の提灯持ちのような記事を書くことが、果たして本当に「特ダネ」なのか。むしろ、検察の思惑や捜査の背景、あるいは検察という巨大な権力機構の内実を抉る分析や解説こそが、本当の意味での「特ダネ」なのではないか。たとえば、今年三月に小沢一郎氏の秘書・大久保隆規氏が逮捕・起訴され、マスコミは検察の提灯記事はたくさん書いたが、なぜあの時期に検察が捜査に乗り出したのかという多くの人々が抱いた疑問に応えるような記事がほとんどなかった。
個人的にいえば、私は小沢一郎氏を擁護する気持ちはまったくない。小沢氏の党運営手法には強い疑問を持っているし、小沢チルドレンを締め上げる強権主義等々は批判されてしかるべきだと考える。だが、検察の尻馬に乗り、捜査情報に寄り添って小沢氏側の疑惑ばかりをかき立てるのは間違っている。マスコミが行うべきは、小沢氏の政治手法や資金問題を独自の取材で暴く一方、検察が小沢氏を狙う意図の深層に迫った分析、解説を果敢に提起し、検察も批判の俎上に乗せていくことのはずだ。
そもそも新聞はその誕生以来、権力に寄り添って部数を拡大してきた。戦時中には紙を政府に配給してもらっていたし、大手新聞の本社は大抵が国有地の払い下げだ。55年体制下では、本来は権力機関の中枢である検察を正義の味方に擬し、その尻馬に乗って二人三脚で“権力監視”を装い続けてきたようにも思う。
だが、もはやそのような時代ではなくなってきている。まさに新聞というメディアは存亡の危機にあるが、それは巷間言われるように、ネットのせいばかりではない。新聞が果たすべき本来の役割、権力監視と権力の深層に迫る分析・解説を試みるという役割を果たしていない点に大きな原因がある。
「キレイ」な政治家こそ危険だ
―― 小沢氏の件に限定せず、政治家を狙う地検特捜部の意図はどのようなものなのか。
【青木】 政治家は汚い。自分たちがそれを浄化するのだ、という正義感だろう。55年体制下において検察が果たしてきた役割は、いわば「汚い」政治家の退治だった。誤解しないでほしいが、「汚い」というのは、決して犯罪者という意味ではなく、たとえば叩き上げでのし上がってきたような政治家のことだ。そうした政治家は地盤も看板もカバンもないところからスタートするのだから、それこそ地べたを這いずり回って、汗にまみれ泥にまみれてのしあがってくる。そういう汗まみれの、土着の「汚い」政治家を検察は退治し、メディアや世間は喝采を送ってきた。その最大の人物が例えば田中角栄氏であり、検察はロッキード事件以後、一貫して田中派的、経世会的な政治家と対峙し続けてきた。
その結果、何が起きたか。安倍晋三氏や福田康夫氏に象徴されるような清和会的な、いわば「キレイな」政治家の跳梁跋扈だ。これは検察のみの責ではないだろうが、「キレイな」政治家の多くは二世、三世の世襲政治家であり、金に苦労したことなどなく、必然的に「キレイ」ということになる。しかし、こうした「キレイな」政治家は、自らが信じる薄っぺらな理想ばかりを口にはするけれども、泥水をすすった経験がなく、苦労をしらず、必然的に「脆弱」で「無能」な人物が多いように思う。
森政権以後、小泉、安倍、福田と清和会の総理が続いた。麻生氏は清和会ではないが、清和会のバックアップによって総理の座に着いた。小泉以降の3代の政権が続けて短命に終わったことは、「キレイな」政治家の限界を如実に示してはいないだろうか。
―― なぜ検察は経世会を排撃し、清和会が優遇されたのか。
【青木】 優遇したというよりも、「汚い」政治家のほうが事件を作りやすいということだ。だが、自分の力一つでのし上がってきた「汚い」政治家の多くは、強靭な精神としたたかな政治能力を併せ持つ政治家でもあったようにも思う。そういう「汚い」けれども有能でしたたかな政治家を退治してしまった結果、政界には「キレイ」だけれども「脆弱」で「無能」な政治家ばかりが跋扈するようになってしまった。
こういう政治家は、「無能」であっても「キレイ」だから、検察が撃つことなどできない。一方で経世会的な「汚い」政治家は次々と排撃されていく。ロッキード事件以降、検察が田中派と激しく対峙し続けたことも、これに輪をかけた。(以下略)
*本稿は編集部の許可を得て投稿しています。
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