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(2012/02/16 の日本海新聞紙面より)
今年になって、新聞社などが行う世論調査で野田内閣の支持率が急落している。消費税を段階的に10%まで引き上げるということを日本国民に説明するよりも先に海外でのサミットで発表するなど、信頼できる国のリーダーとは思えない行動を考えれば、支持率の低迷は当然かもしれない。
■悪影響及ぼすTPP
日本農業新聞が読者を対象に行った内閣支持率は28・1%、そして不支持は70・5%だったという。この数字は、TPP(環太平洋連携協定)交渉を開始した野田内閣が、日本人にとって生命線でもある食料、農業政策を重視する姿勢が見られないことも原因の一つとみて間違いない。
TPPは日本人の暮らしに悪影響を及ぼす可能性があり、その詳細を挙げれば本が書けるほどさまざまな分野を網羅している。しかし交渉内容が秘密だということもあって、マスメディアを買収することができない反対派の意見は、テレビや新聞しか読まない人にはほとんど伝わっていない。TPPによって食料自給率が現在の40%から、13%程度にまで下がると農水省が試算していることすら、一般の人は知らないのではないだろうか。
食料などいつでも輸入すればよいと考えていたらそれは大間違いである。戦争になれば、相手国の食料と燃料の補給源を封鎖するのは大昔からの常套(じょうとう)手段であったし、さらに近年では洪水や干ばつなどの気候変動によって、世界中で食料生産が減少しているという事実も忘れてはならない。自国の食料が不足してきたら、誰も日本に食料を売ってくれなくなる。
■遺伝子組み換え
食に関連してもう一つ重要なことは遺伝子組み換え作物である。納豆や豆腐の原材料のところには「大豆(遺伝子組み換えでない)」といった表示がある。日本では表示が義務づけられているがアメリカではそのような表示義務はない。日本がTPPに加盟すれば、遺伝子組み換え作物を売りたいアメリカは、この表示義務を「非関税障壁」だとしてなくそうとするのは目に見えている。
遺伝子組み換え作物の危険性については、アメリカの環境医学会(AAEM)でも使用を禁止するよう勧告している。遺伝子組み換え作物を使って多数の動物実験を行った結果、不妊症、免疫不全、老化促進、肝臓、腎臓、脾臓(ひぞう)、胃腸器官におけるさまざま分泌不全等々、その毒性が認められたからである。もちろんこのような発表は日米の主流メディアは黙殺する。遺伝子組み換えを推進するバイオテクノロジーの巨大企業がメディアを広告で牛耳っており、都合の悪いレポートを報道させないことなど簡単なのだ。
敗戦後の日本は、アメリカの余剰農産物のはけ口となった。アメリカの善意という形で、小麦や脱脂粉乳が日本に輸出されて学校給食に使われ、こうして日本人の食は、パンや牛乳、肉といったアメリカの食材へと変わっていった。これからはそれに遺伝子組み換え食品も加わる。
たとえアメリカ医学会が危険性を指摘していても、食料不足になれば、それを食べるしかないと日本政府は言うのだろうか。
国家安全保障の面からみてもTPPほどひどい協定はない。開国ではなくまさに売国である。
(アシスト代表取締役)
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