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(ダイヤモンドオンライン)
2012年2月15日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授]
橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」が3月に開講する「維新政治塾」に、全国から地方議員や元国会議員、官僚、弁護士、医師など3326人の応募があった。維新の会は次期衆院選で塾生らを中心に候補者300人を擁立し、200議席の獲得を目指している。
また、維新の会は政治方針「船中八策」の骨格案を発表した。憲法改正の要件緩和、首相公選制の導入、参議院の廃止、道州制の導入、地方交付税の廃止などの中央集権型の政治の変革、大阪府議会、市議会で条例化をめざす教育・職員両基本条例案の国レベルでの法制化、「掛け捨て型」の年金制度などを提案している。
古くからある改革メニューを集めただけの「船中八策」
だが、「船中八策」に新鮮さはない。約20年前からの政治改革、行政改革、地方分権改革の政策メニューが羅列されているだけだ。憲法改正の要件緩和は、改憲を目指す政治家の誰もが問題意識として持つものだ。首相を国民が直接選ぶ「首相公選制」は、古くは中曽根康弘元首相などが主張し、戦後何度も導入が検討されてきた。だが、首相の所属政党と議会の多数政党が異なるねじれ現象(分割政府)が常態化し、首相は指導力を発揮できないというのが、政治学の結論だ。実際、イスラエルは首相公選制を導入したが、機能せず廃止した。現在、首相公選制を実施している国家は存在しない。
外交・防衛では、日米同盟を基軸にオーストラリアも含めた同盟関係強化を打ち出しているが、麻生太郎内閣の「自由と繁栄の弧」の焼き直しのようだ。むしろ、今後のエネルギー安全保障を考えて、中央アジアや中南米などの付き合い方が難しい国をどう扱うかくらいの思い切った考えを示してほしかった。
「掛け捨て型年金」は、唯一オリジナリティのありそうな政策だ。だが、資産のある人に強制的にお金を使ってもらう仕組みというのは、心情的にはわからないではないが、大衆迎合的で、橋下市長の個人的な思いつきの域を出ない。
そもそも、「船中八策」というネーミング自体、坂本龍馬の二番煎じだ。それなのに、何か新しいものを打ち出すかのようなアピールをするのは滑稽に見えてしまう。橋下市長は「改革メニューは既に既存の政治家によって示されたものだ。だが、彼らにはそれを実行する腕力がなく、自分たちにはある」と言うべきだ。実行力は政治家にとって最も大事な資質であり、それを誇るのは悪いことではない。
参議院は、廃止ではなく地方代表の府とすべき
結局、維新の会の主張は、従来からの「中央vs地方」の対立構図の発想から出ていない。国家を変革するというなら、対立構図を超えた大きな政策提言をすべきだ。例えば、参議院については、廃止よりもむしろ存続させたほうがいい。
世界の二院制には、「貴族院型」(英国など)、「連邦型」(米国、ドイツ、スイスなど)、「民選議員型」(イタリアなど)がある(前連載第17回を参照のこと)。日本は「民選議員型」だが、元々「貴族院型」として制度設計されたために参院の権限が強すぎるのが問題だ。だから、日本の参院の改革のあり方として、もう1つの二院制「連邦型」導入を検討すべきだ。「連邦型」では、上院は地域代表である。日本でも参議院を地域代表の府としてはどうだろうか(第3回を参照のこと)。
維新の会も国会に議席を持ってしまうと、単なる国政の政党の1つになる懸念がある。維新政治塾に集う塾生たちの多くは結局、地方を国政に進出するためのステップと考えるだろうからだ。「地域主権」の拡大を目指すなら、地方に軸足を置いたまま政党が活動する、地域代表の府を作るべきなのだ。
http://diamond.jp/articles/-/16139
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