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ASEAN・スリン事務局長「TPPより域内統合優先」 米主導に不安も[日経新聞]
来日した東南アジア諸国連合(ASEAN)のスリン事務局長は日本経済新聞と会い、米国が核となる環太平洋経済連携協定(TPP)について「ASEANとしてはTPPより域内の経済統合を優先すべきだ」との見解を示した。域内の貿易自由化の主導権を米国が握れば「ASEANの統合が脇道にそれる恐れがある」とし、求心力の維持に不安感をにじませた。主な一問一答は次の通り。
――米国主導のTPPをどうみるか。
「2015年までに経済共同体を築くASEANの目標に、今は全勢力を注ぐべきだ。世界経済の先行きが不透明なだけに、目標に自信を失う加盟国もある。混乱期にTPPに目を向けすぎると足元の課題への取り組みが遅れる心配がある」
――米国からの自由化の圧力への対応は。
「米国の努力の方向は正しい。シンガポールは競争力があり、TPPの高い水準の自由化交渉に臨むことができる。マレーシア、ベトナム、ブルネイも参加するほか、フィリピンも関心を示している。だが、他のASEAN諸国は域内の“宿題”に集中して取り組んでいるところだ。TPPはまだ実験的な段階といえるだろう。一方でASEANの経済統合は既に現実化しつつある」
――米国はオーストラリア北部ダーウィンを軍事拠点とし、地域への関与を強める構えだ。
「米国は常に東アジア地域の安定の柱だった。イラクやアフガニスタンで忙しい時期も、静かにアジアに関与し続けた。東ティモール情勢が混乱した際に、部隊輸送や情報活動で素早く動いたのが好例だ」
「豪州の拠点に2500人の海兵隊を配備するというが、現実には域内の洋上や韓国、沖縄などに、はるかに巨大な規模で米軍が待機している。米国のアジア回帰というより、域内で米国の存在感を印象づける心理的な効果が狙いだろう」
――緊張感を伴いながら米中が向き合う状況をどう考えるか。
「ASEANは、地域が覇権競争の舞台となることは望まない。我々は信頼感の醸成を何よりも重視する。特定の国が支配力を強めれば、不安定化につながる。域内の秩序は多国間主義の枠組みで守るべきだ」
――「親中国」ともいわれるカンボジアがASEANの議長国となった。南シナ海の領有問題に関する議論は深まるか。
「ASEANの4カ国と中国が、それぞれ部分的に南シナ海の領有を主張している。しかし、誤解や対立を避けるためには、各国が政治的に譲れない要素を議論から除外すべきだ。我々は過去の経験から、国どうしの緊張をうまく管理する技術を学んだ」
「法的な拘束力がある『南シナ海行動規範』の中身について協議が進んでいる。船の航路や航空機の空路などの実質的なルールづくりだ。中国側もASEAN各国も、合意に向けた意欲は強い」
――ASEANは政治的な要素を避けるのか。
「政治要素を避けるのではなく、内部に包み込むのだ。ASEANには、さまざまな立場の違いを吸収する力学構造がある。その中立的な仕組みが、東アジアの発展と安定に役立つと期待する」
<記者の目>日本の退潮響き、立脚点に揺らぎ
米中が東アジアで直接対峙する構図は、ASEANにとって望ましくない。TPPと米軍駐留に関する事務局長の慎重な発言には、米中が実力を競い合う中で、小国連合のASEANが求心力を維持できなくなる不安感がにじむ。
これまでASEANは日中の影響力の微妙な均衡の上で、経済連携の中心に座り続けることができた。米国のアジア回帰と日本の退潮で、その立脚点が崩れつつあるのではないか。
(編集委員 太田泰彦)
[日経新聞2月14日朝刊P.6]
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