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〈橋下徹・大阪市長に聞く〉 選挙、ある種の白紙委任
http://digital.asahi.com/articles/TKY201202110424.html?ref=comtop_middle_open
2012年2月12日03時00分 朝日新聞デジタル
気になって仕方がない政治家が久々に現れた。既存の「権威」やタブーに切り込み、そして人々に問いかける。リアルな肉体感覚を伴った言動が喝采を浴びる。一方、独断的な手法には怖さも感じずにはいられない。橋下徹さん、あなたはいま、何を考え、何を目指しているのですか?
■競争に勝たないと生活維持できない。とことん努力を
――まず、政治家として実現したい「日本社会」の姿を聞きたい。あくまでも経済成長を追いかけるのか、身の丈に合った暮らしがいいのか。どちらですか。
「今の日本人の生活レベルは世界でみたら、五つ星ホテル級のラグジュアリー(贅沢〈ぜいたく〉)なものです。蛇口をひねればきれいな水が出る。教育も医療もレベルは高い。失業保険、年金もあり、最後は生活保護がある。これを享受するには、すごくコストがかかる。維持するかどうか最初に決めないといけない。今以上の日本を無理に目指す必要はありませんが、僕は少なくとも今のレベルを維持したいんです」
――どうやって?
「東アジア、東南アジアの若者は日本の若者と同じような教育レベル、労働力になってきました。そのような状況で、日本人がラグジュアリーな生活を享受しようとするなら『国民総努力』が必要です。競争で勝たないと無理です」
――競争、ですか。
「今の日本のレベルを維持したいなら競争です。僕は次世代の子どもたちに少なくとも今のレベルの日本を引き継ぎたい。今のレベルに不満のある人は多いでしょうが、世界から見るとものすごく贅沢な国です」
「労働集約型の製造業が海外に出ていくのは止められない。海外で稼いだお金を日本に戻す仕組みを考え、国内ではサービス業などの付加価値を高める環境をつくり、民間でお金が回る税制にする。円高で生まれた輸入業のもうけを、輸出業に回す『デリバティブ』のような仕組みを考えるのも国の知恵だと思う」
「僕が一番重視しているのは、行政サービスをユーザーの選択にさらすことです。医療も教育も介護もニーズに合っているものは付加価値が高い。行政が一方的に供給するものはあまり価値がない」
――そのニーズを判断するのは誰ですか。
「ユーザーです。僕は選択をすごく重視しています。ユーザーが選択しないものは(行政が)基本的にやっちゃいけないんですね。今の行政はユーザーの選択に関係なく、とにかくお金を突っ込んで供給する」
――国民みんながありとあらゆることで「選択」や「競争」を迫られるのは、けっこう大変ですね。
「国民の覚悟が必要です。その号令をかけるのが政治だと思います」
「付加価値の創出は、努力がすべてだと僕は思っています。とことん能力を発揮してもらう。そこには規制はかぶせない。いったんは格差が生じるかもしれません。でも、所得の再分配もしっかりやります。また、格差を世代間で固定させないため、最高の教育をタダで子どもたちに受けさせる。最低限の保障をすることは国の役目です。僕のやり方は事後調整型の格差是正です」
「社会保障では『人生一生使い切り型モデル』を考えています。ある程度資産ができた人は、老後の生活をまずそれでやってもらう。資産のある人には掛け捨て型の年金もありかなと。究極の所得の再分配です」
――70歳や80歳になっても、努力しなければならないのですか。
「何歳で努力から解放されるかは制度設計次第で、役人にはじいてもらわないと具体的には言えません。常識的には60歳あたりでしょう」
――ちょっと逃げてません?
「それは役人が担当する領域です」
――橋下さんは強い人ですが、世の中は強い人ばかりではない。そういう人にはどう言葉をかけますか。
「では、日本の生活のレベルを落としますか、東南アジアレベルにしますか、と。今の日本を維持しようと思えば、そりゃ努力をしないといけないですよ」
――橋下さんは、「決定できる政治」を唱えています。リーダーの独善になりませんか。
「議論はし尽くすけれども、最後は決定しなければならない。多様な価値観を認めれば認めるほど決定する仕組みが必要になる。それが『決定できる民主主義』です。有権者が選んだ人間に決定権を与える。それが選挙だと思います」
「弁護士は委任契約書に書いてあることだけしかやってはいけないけれど、政治家はそうじゃない。すべてをマニフェストに掲げて有権者に提起するのは無理です。あんなに政策を具体的に並べて政治家の裁量の範囲を狭くしたら、政治なんかできないですよ。選挙では国民に大きな方向性を示して訴える。ある種の白紙委任なんですよ」
――大阪維新の会が国政で既存政党と連携することはありますか。
「国政の動きに僕がとやかくいうことではないと思います。大阪市長の範疇(はんちゅう)外ですから」
――維新の会を応援しているのは橋下さんに期待する人たちです。
「わかってほしいのは、永田町や霞が関だけで複雑多様化した日本全体を動かすなんて無理だということです。だからまずはその仕組みを変える。どんなに首相を代えようが、新しい政策を出そうが、明治以来続いてきた社会システムや統治機構、すなわち体制を変えない限り、政策は絶対に実現できません」
「本当に世を変えるには、政治家が課題にどんどん突っ込まないとだめ。僕も大阪府でとことん、やりました。でも、今の国の統治機構は大きすぎる。野田首相が八ツ場(やんば)ダム、普天間移設、原発、震災復興、消費税、社会保障にTPPもやるなんて絶対無理です。仕事があまりに多い。だから、国がやることと地方がやることをきっちり分け、それぞれを機能させる。国の仕事を絞り込み地方に自立してもらう。従来の体制を変えることが政治家の仕事です」
――何年くらいかかりますか。
「最終的には道州という形で、日本が八つから九つの地域で自立していくというモデルがゴールだと思いますが、5年、10年かかるんじゃないですか」
■僕は市長ですもん 国政には行かない 賞味期限切れるし
――橋下さん自身は国政には?
「僕は国会議員にはなりません。公募で集めた維新塾のメンバーに期待しています」
――なぜ?
「だって僕は市長ですもん」
――でもそれは4年間ですよね。
「もうそれで賞味期限切れですよ。自分でわかってます。自分の賞味期限切れすらわからない人物は、政治家をやったらだめですよ」
――かつて「大阪府知事になるのは2万%ない」と言いながら、出馬しましたね。
「いやあ、結局この話(国政)になっちゃう。僕は近くの人にはまったく支持されない。分かっているんです。維新の会に100人の議員がいますが、議員からの人望と信頼は松井一郎大阪府知事の役割です」
――既存政党が「橋下さんや維新の会の主張を丸のみする。一緒にやろう」と言ったらどうしますか。
「道州制も大阪都構想も、僕が主張しているのは、日本の統治機構、政治や行政のシステム全体を変えようという話です。これまで出来なかった既存政党の人たち、既得権益の代表者たちにできますかね。本当にやろうとしたら、今の体制でよい人たちと大バトルになりますよ」
――橋下さんが、みなが嫌がることをあえていう理由は何ですか。
「政治家をずっとやろうと思っていないからです。維新の会のメンバーにも、1期4年を合言葉にしよう、と。次の選挙を考えたら、有権者に嫌なことは言えないですよ。今の日本の状況で、国民に好かれることなんか何も言えません」
――既存政党と丸ごと組むのは。
「まだわからないですよ。でも、制度を変えようとなると、今までの仕組みでやってきた国会議員のみなさんは耐えられるかなあ……」
――そのエネルギーはどこから?
「朝日新聞があるからですよ。負けないようにって。はっはっはっ。いろんな人が意見言って、そのたびに『くそっ』って。それがまた、エネルギーになるじゃないですか」
――メディアから厳しく批判されますね。なぜだと思いますか。
「メディアは批判することが仕事だからじゃないですか。メディアが権力に同調しちゃったら存在意義がないでしょう。こっちも燃えない。『くそっ』と思うから、僕も一生懸命勉強するんです」
――明治以来の制度を壊すという人が、なぜ「維新」とか「船中八策」など明治を作ったものの名前をつけているんですか。
「まったく思慮はありません。そこは批判してください」
◇
〈国政〉
――権力をとれば統治機構の改革ができる。そのために党として国政進出を考えているのですね。
「僕がやらなくても、そういうことを目指すメンバーに国政に出てもらいたいんです。自民党や民主党がうまくいかなかったのは、統治機構の変革を言わなかったからです。やっと民主党が地方分権と言ったけど、これを本気でやろうと思ったら大バトルです。最近、やっぱりシステムの問題なんじゃないかという論調が出てきましたけど、それを変えるメンバーを送り込みたいんですよ」
――国政では野党で批判するのもありだし、権力の一角に入るやり方もありますが、どちらですか。
「ここで国政の話したってしょうがないんです。だって捕らぬタヌキの皮算用じゃないですか。僕ら何をやるかまだ示していない。どういう方向に向かうんですか、というところを作っているところでして」
――大阪維新の会はまだまだ未熟だと。
「そうです。そうです」
――橋下さんは、国政に関与する覚悟はあるのですか。
「いまのこの立場でできるところはやりますよ。でも、我々はいまはレベルゼロのところです。国政においてのレベルとしてはね。だから、今からですよ」
――今後、選挙に向けていろんなビジョンを出していこうと考えているのですか。
「どの部分を変えれば全体が変わるのか、急所を見つけ出すのが政治家だと思います。たとえば、国直轄事業の負担金廃止は蟻(あり)の一穴になると思ったんです」
「国と地方が金も出し合ってもたれ合いで、どっちが責任と権限をもっているのかわからない。そこで国と地方を分離し、権限と責任を明確化しようとしたんです」
「そして、国がお金を集めて地方に渡す仕組みを断たないといけない。地方交付税制度の廃止です。これは全国の自治体と大バトルになる。総務省も大抵抗する。地方交付税を廃止して、地方は地方で自分たちで税金を集める。もちろん、地方の格差是正の制度をきっちり作ります」
――他党の政治家、議員を受け入れることはあるんですか。
「方向性が一致するか、ですね。地方交付税廃止や道州制を本気でやってくれるかどうかですね」
――既存政党と丸ごと組むということは。
「まだわからないです。所得収支で黒字を目指していきましょうということになれば、輸出業に応援を受けている議員はなんて言うかわかんないですし。地方交付税廃止って言った瞬間に、それに反対する地方の国会議員がいっぱい出てくると思います」
◇
〈経済政策〉
――朝日新聞は1月に「エダノミクスvsマエハラノミクス」という連載をしました。経済成長にこだわらない枝野幸男経済産業相と、あくまでも成長を追う前原誠司・民主党政調会長の経済政策を対比し、日本の将来像を考える企画です。橋下さんはグローバルな経済変化のなかで、日本の暮らしを維持するために政治にはどういう役割があると思いますか。
「今の大きな世界の流れを人工的に変えるなんて無理です。大きな流れを読んで、それにあわせて策を講じていくのが、本来の政治だと思っています。いまの円高を日本だけが力を入れて抑えるというわけにはいかないし、労働集約型の製造業の拠点が海外へどんどん移るのも、賃金コストが安いところを求めていくという自然な流れです」
「そのなかで、円高になった場合でも耐えられる策はないか。ソブリンファンドじゃないけれど、円高で生まれた輸入業のもうけを輸出業に回してあげる『ソブリンデリバティブ』のような仕組みを考えるのも国の知恵だと思う。円高になれば損をするところもあるけれども、得をするところもある。個別、個別にみて、調整をかけるなんてのは民間では無理だ」
――橋下さんは「競争」が必要と言いますが、政治は「競争」を野放しにしておいていいのですか。
「経済活動は自由が基本です。競争はまず徹底的に自由にやってもらいます。でも、もうかったところから、もうかっていないところに所得を移転するのは政府の役割だと思います。為替の変動という、当事者にとってはどうしようもないような事情が発生したときには、利益の再配分のような措置を政府がやらなくてはいけません」
「海外にどんどん労働集約型の製造業が移転することはあえて止めなくてもいいと思うんです。製造業が移転すれば、現地でどんどん販売する。貿易収支の黒字が減ってきても、その分、海外投資から生み出される収益は増えていく。もう日本国内でモノを作って海外に売っていくということだけではなく、現地で売って、そこで十分もうけてもらう。海外で稼いだお金をどう日本にバックしてもらうのかという仕組みも考えるべきです」
◇
〈雇用〉
――グローバル経済、人口減少社会の中で雇用をどうするのですか。
「労働集約型の製造業はどんどん海外に出て行き、就業人口が減っているんです。それはもうしょうがないんです。中間層の雇用を確保するためには、サービス業が展開できるようにしないといけない。やっぱりカジノとか。労働集約型の工場で吸収されていたものにかわるものを考えようと思えば、もうサービス業に転換していかないといけません」
――これまでの対策はどうだったのですか。
「医療も介護も教育も『増税して雇用を生み出せ』というような号令の下に、とにかくそこにお金を入れればいいと思われがちですけど、それはダメだと思うんですよね」
「経済対策の中でも失敗したなと思ったのは、緊急雇用対策の基金事業。とにかく地方に金をばらまく。地方は草むしりの仕事とかやみくもにやった。それは本当に雇用なのでしょうか。医療も教育も介護もニーズに合っているものは付加価値が高い。付加価値の創出は努力がすべてです」
「中国やベトナムと競争をしながら、今の雇用を維持できているというのは、付加価値を生み出す努力をしている人たちが頑張ってくれているからです。雇用がどんどん減る状態でもいいんですか。中・低所得者の雇用の場を維持しようと思えば、やっぱりみんなで努力せざるを得ないと思います」
◇
〈社会保障〉
――現在の社会保障制度をどう見ていますか。
「いろいろほころびがあるかもしれないけれども、医療は最高クラス。不十分かもしれませんが、年金もあり、最終的には生活保護で救ってくれる国です。日本の今の暮らしを維持するためにはものすごく金がかかる」
――社会保障を「コスト」と見ますか。「需要」と見ますか。
「それは両方ですよ。付加価値を生み出さないならコストに、生み出していくなら需要になります。一番重視しているのは、行政サービスをユーザーの選択にさらすこと。ニーズに合っていれば付加価値が高くなります」
――そのニーズは、だれが判断するのですか。
「ユーザーです。(一定の研修を受けた者が自宅で子どもを預かる)『保育ママ』制度を認可保育所はすごく嫌がります。サービス合戦になるからです。行政の側は『待機児童が発生したときだけ』と限定したがります。そうではなく、できる限りのオプション(選択肢)をそろえて、いくらでも保育ママを選べるようにすべきです」
「自分が8時間働いて生み出す付加価値のためにお金を払ってもいいと思えば、その保育を使うでしょう。税金がバンバン投入されると、ニーズによる選択がされず、コストになっていくと思うんです」
◇
〈年金〉
――システムを変えると言っていますが、年金はどうするのですか。
「今は賦課方式の中でつぎはぎだらけです。給付を抑えるのか、負担をどれだけ増やすのかわかりませんけど、『もつわけない』とみんながわかっています。国民年金も厚生年金も共済年金も一元化したうえで保険料『掛け捨て』方式に。金額や何年間にわたり給付されるかは、役人に制度設計してもらわないといけません。民主党の『7万円』の最低保障年金制度だって、役人にしか作れません」
「老後は自分がつくった資産で暮らしてもらうわけです。僕の政策は『一生涯使い切り型』モデル。『稼いだお金はあの世に持っていけないので、思い切り使い切ってください』と。使ってもらうことによって選択が生まれ、そこに付加価値が生じると思ってます」
――橋下さんの考えは浸透すると思いますか
「掛け捨ては、高齢者から『アホ、ボケ、カス』と言われるでしょう。ゼロ金利でも金をため込んで使わない状態になっていますから、資産課税も必要。『ためていたら税金かけますよ。だから使って』ということです」
(聞き手 政治部次長・鮫島浩 編集委員・刀祢館正明)
◇
はしもと・とおる 69年東京生まれ。早大卒。茶髪にジーンズの異色弁護士としてテレビ出演し人気を集める。08年、当時全国最年少の38歳で大阪府知事に就任。「大阪都構想」を掲げ、10年に「大阪維新の会」を立ち上げる。11年、任期途中で知事を辞職し、大阪市長選に初当選。次の衆院選をにらみ、3月に「維新政治塾」を開設する。
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