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2012年2月 9日 (木)
日本人は“防衛”の意味を今こそ真剣に考える時だ 今日(2月8日)から我が国はTPPの実際的な交渉の端緒に着いた。シロアリ帝国への御奉公といい、米国へ無条件に国富を明け渡すTPP参加といい、日本国を航行させる船長である野田総理大臣は、国内、国外とも、日本の命運を決める重要な国政を舵取りしている。有効な景気対策をしないで、官僚主導体制の是正無き消費増税政策は、強度のデフレ傾向が続く中、日本を内側から瓦解させる悪政である。国民は可処分所得が急速に減っているのに、消費大増税を行ったら物を買わなくなるだろう。社会保障のための財源という理屈が如何にまやかしであるか分かるだろう。 一方、日本の経済防衛的な条項をすべて無効化してしまうISD条項を有する、アメリカ主導のTPP参加は、外側の盗賊たちに日本の金融資産、ほか優良資産をすべて強奪されるのみか、稲作農耕が始まって以降、豊葦原瑞穂國(とよあしはらのみずほのくに)を誇ってきた、我が国特有の美しい田園地帯を根こそぎ荒廃させてしまうだろう。加えて、中国を含む外資が、我が国の田園地帯を涵養する重要な水源地(奥山の湧水地)を買い漁っている。 “国破れて 山河あり 城春(しろはる)にして 草木深し ・・・” これは、8世紀に活躍した中国の詩人、杜甫(とほ)の「春望」という詩の一節であり、冒頭の「国破れて山河あり」は特に知られているフレーズである。私は今、衒学的にこの詩を引き合いに出したわけではない。TPPは参加しないことが一番いいが、参加した場合の我が国の壊滅的な惨状を強く想像できるから、この一節が浮かぶのである。 我が国は67年前大東亜戦争に敗北した。戦争で日本人は、軍人、軍属、民間人合わせて257万人も死に、その中には、広島、長崎という大事な二都市に原爆を投下されて亡くなった、無辜(むこ)なる一般市民30万人も入っている。日本の主要都市群と統治機能は完全に破壊された。この文脈で簡単に書きにくい気持ちはあるが、それでも我が国に山河と田園は残った。それでも、戦後の日本は郊外の周囲を見渡せば、美しい田園風景が広がり、遠方にはのどかな青い山脈が連なり、海岸には波しぶきが白く砕けている。昔の人は、それを山紫水明(さんしすいめい)、白砂青松(はくしゃせいしょう)と形容した。 それが、先祖たちや我々が生まれてから普通に見ていたごく当たり前の風景である。私がこのブログを「神州の泉」と名付けたのは、先祖たちが守り抜いてきたこの美しい山河と田園を、永遠(とわ)に守り抜きたいという素朴な願いからである。この愛すべき当たり前の風景が、これから巨大な盗賊国家アメリカによって破壊されようとしていることを、どれほど多くの日本人が認識しているのだろうか。皆さんに思い起こしていただきたいことがある。私の年代以上ならば、半世紀以上も日本の推移を見守ってきたから、日本の風景の変遷を身を以て体験しているが、その中でも特筆することは郊外の変わりようである。 1992年の大店法改正で日本の郊外風景は瞬く間に変化した。モータリーゼーションの発達と相まって、郊外には毒々しい看板とアメリカ・スタイルの大型店舗が林立し、昔から日本人の情緒性を涵養していた、のどかで美しい里山や田園地帯が消滅し、工場かと見間違うような大型店ばかりが郊外風景となった。それに併行して、昔ながらの商店街はシャッター通りと化し見る影もなく衰退した。大型店を上手く軌道に乗せた資本家は豪放磊落に笑い、昔ながらの商店街は零落に打ちひしがれた。磊落(らいらく)と零落(れいらく)は響きが似ているが、その意味はまったく違う。大店法改正がアメリカの圧力によってなされたことを決して忘れてはならない。 さて、TPPの話題に移るが、いろいろな人たちが警告するように、これは国家の基底を揺るがす大問題を内包し、アメリカは取っ掛かりさえつかめれば、日本の市場を土足で踏み散らし、金銭に還元できるありとあらゆる価値を収奪していく腹である。TPP参加による国内農業問題は、関岡英之氏著「国家の存亡『平成の開国』が日本を亡ぼす」によれば、農業問題で米国の狙いは、農協と共済の解体であり、農協から信用(銀行)・共済(保険)部門を切り離し、特に共済(保険)の金を狙っているということである。この形は、郵政民営化で三事業をセパレートして、金融部門を百パーセント株式化してから市場に放出させ、ゴールドマンサックスを始めとする大型国際金融資本に郵貯・かんぽ資金を巻き上げさせようとする構図とそっくりである。 問題はこの大掛かりな金融収奪だけではない。関岡氏の慧眼はTPPに関する農業問題に関して、その先にあるものを確かにフォーカスしている。氏によれば、OECD(経済協力開発機構)が2009年に出した報告書「日本の農地改革 競争力向上のための課題とは何か」には、「農地の売買や賃貸を妨げる規制や税制上の措置が存在している」、「農地取引に対する障壁は低められなければならない」とはっきり書かれているそうである。続けて関岡氏は、OECDは「農地の流動化」すなわち、農地の売却を促すために、農地法上の優遇税制を見直して、農地の保有コストを重くするべきだと、税制にまで踏み込んでいることを指摘する。さらに「農地の転用規制は国内の米市場を考慮しつつ、農業の生産性や多面的機能の観点から特に重要な地域に特化すべきである」とも提言しているそうである。(『国家の存亡』P163から引用) 関岡氏はこれらの要望や文意を深く読み解くと、米国の真の狙いは日本の農業そのものよりも、実は規制を撤廃して農地を商業的に流動化させ、外資に日本の農地を買い叩かせることにあるのではないのか、と、日本人が戦慄すべき観点を指摘している。米国の底意がこの通りだとすれば、日本は間違いなく滅びる。水源涵養地ばかりか、山紫水明の瑞穂の平野部まで外資に蹂躙されるのである。このような危険を放置して、どこに日本人としての存在意義があるのだろうか。TPPはアメリカが根こそぎ日本の財産を狙っているとんでもない協定だということは、この憂慮一つを見てもお分かりになると思う。対米戦争に踏み切った先人たちの心境が痛いほど良く分かる。しかし、野蛮なのはアメリカだけではない。日本人の顔をしてアメリカに日本を売り渡す内なる売国奴どもがいる。 防衛というのは軍事だけではない。極端に非対称な条約が作動する経済協定は軍事侵略に等しい。先祖たちが守り抜いてきた伝統や文化、美しい国土、かわいい子供たちの未来を守り抜くことが防衛ではないのか。このまま進めば、“国破れて山河も無し 城春にして草木枯れる”になる。(冒頭の画像はパロディスト、マッド・アマノ氏の作品です)
2012年2月 9日 (木)
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