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2012.02.07 みんなの党(シロアリ)は大阪維新の会(兵隊アリ)と合流して「石原新党」(軍隊アリ)の露払いとなるか、(ハシズムの分析、その8)〔リベラル21〕
〜関西から(51)〜
広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
1月27日の石原知事の記者会見以来、国政レベルでも民主・自民2大政党の機能不全状態を“右から”打開しようとする「第3極」の動きが一段と加速化してきた。石原氏は、昨年末から国民新党の亀井代表と話し合ってきた新党構想に「合意と協力」することをはじめて明言し、「東京よりも国家が大事。政治家は必然性があれば1人でもやる」と国政進出の決意のほどを披歴した。いよいよ「石原(極右)新党」旗揚げへの動きが始まった。
目下のところ、石原氏は国政進出の大義として「地方から国を変える」といった地方分権的なニュアンスを強調しており、その手法としては「東京と大阪・愛知がアライアンス(連携)を組んで中央集権をぶっ壊していく」と、大阪維新の会や愛知県大村知事との連係プレーを匂わせているにすぎない。2月中旬には名古屋で石原・橋下・大村の「首長連合会談」が予定されているというが、具体的な内容はこれから煮詰められていくのだろう。
しかし、筋金入りの「極右ファッシスト」(憲法改正論者であり核武装論者)である石原氏のこと、新党結成の目的が単なる「中央集権の打破」や「大都市制度の改善」程度のものとは到底考えられない。「地方から中央集権をぶっ壊す」との発言は、明らかに「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉郵政選挙のキャッチコピーを意識したものといえるが、ぶっ壊そうとするのは中央集権ではなくて議会制民主主義そのものであるかもしれないからだ。
本来であれば、アメリカと財界直轄の民主党・自民党の2大保守政党に代わって、国民主権の立場に立つ革新政党や地方利益を代表する良質の保守政党が「第3極」として台頭してこなければならない情勢のはずだ。にもかかわらずそれが現実のものとならず、「石原新党」のような「極右第3極」が突出してくるところに、残念ながら日本の戦後民主主義の脆弱さと革新政党の非力さがあるといわなければならない。
とはいえ、このような政局の急展開に一番驚いたのは、かねてから大阪維新の会に秋波を送り、あわよくば「第3極」の受け皿になろうとしていたみんなの党の渡辺代表だったのではないか。渡辺代表は、大阪ダブル選挙では頼まれもしないのに橋下候補の応援演説に出かけて親密ぶりをアピールし、国会の代表質問では大阪都構想に言及して国会議員を持たない大阪維新の会の政策を代弁するなど、橋下氏に摺り寄るためのパフォーマンスをこれまで躍起になって演じてきたからだ。
「摺り寄りパフォーマンス」の背景は明白だ。民主・自民両党の支持率が低迷しているにもかかわらず、みんなの党の政策が2大政党と大同小異のものであるため「第3極」としてのポジションを確保できず、このままでは「ジリ貧」状態に陥る可能性が大きいからだ。そこで瞬間風速的に勢いのある大阪維新の会に抱きつき、次期総選挙で一緒に浮上するという作戦を立てたのだろう。
だが、こんな「曲者」(くせもの)めいた渡辺代表の策動は、野田首相からは「大阪維新の会にたかるシロアリ」などと揶揄される一方、今後の石原新党の動きによっては「トンビに油揚」をさらわれかねない状況を招いている。このため作戦変更を迫られた渡辺代表は、石原新党との対抗関係からも「より右寄り」の抱きつき作戦を打ち出すことになった。それが大阪維新の会との「一体化作戦」だ。
私がその兆候として注目したのは、1月28日に開かれたみんなの党の第2回党大会の異様な光景だった。党大会参加者の全員が開会冒頭に直立不動で「君が代」を斉唱し、そこから報告や議論が始まったのである。自民党やたちあがれ日本など札付きの保守右翼政党といえども、最近の党大会で参加者全員が直立不動で君が代を斉唱することなどあまり聞いたことがない。にもかかわらず、みんなの党がこの期に及んでこのような挙に打って出たということは、何かしら背筋が寒くなるような気がして不気味でならない。
第2回党大会において渡辺代表は、石原新党の動きに遅れじとばかり「橋下さんとみんなの党はやることが同じ」と断言し、大阪維新の会との政策的一致点をしきりに強調した。また国政や総選挙でも連携を図っていくことを力説し、「大阪維新の会の動きを全国に広げ、みんなの維新を成し遂げよう」との大会宣言まで採択する始末だ。国政政党が一地域政党の「提灯持ち」をかってでることなど前代未聞の出来事といいたいところだが、それをなりふり構わずやるところに彼らなりの危機意識があるのだろう。
大阪維新の会は、みんなの党の全面協力の下に大阪府議会で日の丸掲揚と君が代の起立斉唱を義務付ける条例を強行採決し、目下それをはるかに上回る強権的な教育基本条例案や職員基本条例案の強行採決を狙っている。これは「競争主義」という一見新自由主義的な名目を掲げながら、その実は戦前の軍国主義教育(体制)と同じく、“権力”(首長)の命令に教員や職員を一方的に従わせるファッショ的体制をつくるためだ。こんな折もおり、みんなの党が大阪維新の会との一体化を掲げて「君が代斉唱」をしたのだから、今後の「第3極」政党の流れは雪崩を打ってハシズムに合流していくことになりかねない。
「軍隊アリ」とは、「アリとキリギリス」の童話に出てくるような働き者のかわいい存在ではない。昆虫図鑑などによると、一般のアリと異なって巣を作らず、軍隊のように10メートル以上(ときには20メートル近く)もの隊列を組んで駆け足で行進し、行路で目に付いた獲物は昆虫であれ鳥類であれ大型動物であれ、片っ端から集団で襲いかかる獰猛(どうもう)な習性を持つ大型アリ軍団らしい。とくに幼虫の育成期には激しい攻撃性を示すのが特徴で、周辺一帯が「アリの河」のように埋め尽くされるという。石原新党がいったん結成されれば、「軍隊アリ」のような獰猛な集団に変身していく可能性はきわめて高い。
大阪維新の会は目下のところ「兵隊アリ」といったところだが、橋下代表の言動にみられるように、もともと「軍隊アリ」のような攻撃体質を持つ集団だ。その大阪維新の会が「第3極」の台風の目になり、みんなの党が露払いとなって石原新党に合流するようになると、もうこれは立派なファッシスト政党が誕生しても不思議ではない。問題はそのとき、これまで橋下氏に摺り寄ってきた(持て囃してきた)既成政党やマスメディアがどういう態度をとるかということだ。またこれらの動向に警鐘を鳴らしてきた革新政党も既存の陣地・陣営で戦うか、それとも新たな陣地・陣営を構築するか、これまでの戦略戦術では対応できない状況に直面することになるだろう。
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