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金儲けは悪いこと!?
独立してから友達が減りました。友人の大半は会社員で、生活サイクルが合わなくなったことも理由の1つですが、最も大きかったのは「お金」についての概念です。零細企業とはいえ、私には「社長」という肩書きがあります。そして世の中の社長はお金儲けの話が大好きで、「寒いね」「暑いね」という日常会話のように儲け話をします。ところが、会社員の友人の多くは金の話を好みません。むしろ嫌っているようにも見えます。
友人の1人が酒席で勤務先の新規事業を批判しました。しかし、経営者の視点で見ると収益性の期待できる事業で、賢明な経営判断。そこで「儲けの仕組み」からの解説を試みます。経営者の視点を理解し行動することで、友人の社内評価が上がることを期待してのことです。
ところが、右のほほに「K」、左には「Y」の文字が見えるかの表情を浮かべて友人は話題を変えました。そのほか、株式投資の話題で盛り上がるのは「一攫千金」で、配当利回りや分散投資といったリアルな儲け話では白けた空気が酒席を支配します。そして、次第に疎遠になっていきました。
有罪判決を受けた元投資家は逮捕前に「お金儲けが悪いことですか?」と世間に問いました。お金儲け自体は悪いことではありません。彼の場合は、その方法が罪に問われたのであり、金の使い方に人間性が表れるだけのことです。しかし、世の中にはお金儲けを嫌う人たちがいます。
天下りの構図
国や地方自治体には多くの「外郭団体」があります。公社や社団法人などがそれで、最近のトレンドはNPOです。NPOは「専門性を要するため」「特定の業務に集中するため」といった理由から設立されるのですが、実態は「天下り先」の確保です。
先日も、東京都足立区の「足立区まちづくり公社」は職員の4割が区役所のOBで占められた「天下り」だと読売新聞が報じていました。これに対し、同区の革新系区議会議員が自身のブログで「民間企業での定年退職後の再雇用とおなじ(筆者要約)」と記事を批判していましたが、税金を原資として雇用先を創り出す構図を「天下り」と呼ぶのです。税金に頼らず経営している組織なら、100%役所のOBだけが勤務していても誰も非難はしません。
ある国の出先機関の外郭団体はNPOで運営されています。本稿で紹介する機関、機能、活動をすべて架空のものに置き換えているのは、商売をするうえで、最も敵に回してはならない「出先機関」であるということでご了承ください。
その仮の組織の仮の目的は「節電」ということにしておきます。政府広報のように呼びかけるだけではなく、民間企業を会員として集め、定期的に勉強会を開いています。会員となった企業には節税につながる証明書が発行されるなどの特典があることが、国の機関として大っぴらにできない理由の1つですが、事務方のトップには出先機関のOBが座る慣例となっており、「天下り」の受け皿であることは公然の秘密です。
NPO管理の「格安ホール」の裏事情
「仮のNPO」の運営は会員企業から集められる会費が建前となっていますが、事実上は出先機関からの「援助」で運営されています。いわば、出先機関を親会社として、その出資と援助により運営される子会社がNPOです。もちろん、その出資も援助も「税金」です。
役人天国ニッポンとはいえ、世相の風当たりは厳しく、湯水の如く税金を使えた時代は去りました。そこで、NPOも自活を迫られ、NPOが管理する「ホール」を貸し出し、収入を得るためにホームページを立ち上げます。駅から徒歩5分という好立地で駐車場完備、そのうえ、格安な利用料。パーテーションで区切れば小さな会議から、1,000人規模の講演会まで可能な広さを有しています。リーズナブルな利用料の背景は、土地は隣接する親会社より貸与され、建設費用も税金による援助を受けているからです。
もっとも、ホームページ開設と共に、収益アップを目指した計画が日の目を見ることはありませんでした。公開されたホームページには「節電が拓く明るい未来」と、NPOの建物写真の前で、職員による落書から生まれたゆるキャラが、その見た目よりゆるいダンスを踊る動画が流れます。
官尊民卑が行動原理
「駅徒歩5分、駐車場完備、激安利用料」と、ホールの利便性をうたうホームページを抹殺したのは、天下りした事務局長です。処刑理由はこうです。
「NPOは営利団体ではない」
これにより、「CMと見紛うホームページはまかりならん」と評決が下ったのです。節電の啓発という観点からホームページは公開され、啓発のためと「ゆるキャラ」がダンスを踊ります。
この評決は「NPO 0.2」です。NPOは利益を出しても良いのです。NPOとは「Non Profit Organization」で、特定非営利活動法人と訳されますが、これは一般的な会社が営利目的(儲ける)であることに対して「非ず(あらず)」としているだけで、利益を得る行為を否定するものではありません。
両者の違いをざっくりと述べれば、儲けた金を山分けできるのが企業で、できないのがNPOということ。NPOで儲けた金を運営費に廻し、事業に再投資することは認められており、税金からの援助を減らすために利益を得るのはむしろ健全な活動です。
評決の底意には銭金に左右される「民」を浅ましいと見下し、損得を超越して仕事をする自らを尊いとする「官尊民卑」の発想があります。しかし、損得をあまりにも考えないその行動原理が国の財政を逼迫させたのです。
そして、本誌読者にも多いであろう「会社員」にもあえて苦言を呈します。賤しい民の我々は、もう少し「金儲け」に真剣にならなければなりません。正しい手段での金儲けの仕組みを理解できるようになれば、尊いと慢心する「官」による絶望的な国家経営の杜撰さがありありと見えてくるからです。そして鍛えた目で、経済音痴な政治家を見つけ出し落選させることが、我が国の「明日」をつくります
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