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公共放送であるNHKは、国民の「知る権利」を恣意により抹殺するようなことは絶対やってはいけない。更に受信料徴収の公平化を担保することは喫緊の課題であると言うこと。
憲法19条(思想及び良心の自由)
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
憲法21条(集会・結社・表現の自由、通信の秘密)
1.集会、結社、及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2.検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
放送法1条(目的)
この法律は、次に掲げる原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
1.放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
2.放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。
3.放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
放送法3条(放送番組編集の自由)
放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
放送法7条
日本放送協会(以下単に「協会」という。)は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように放送を行うことを目的とする。
放送法32条1項
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって、テレビジョン放送に該当しないものをいう。)に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
放送法44条3項(国内放送の放送番組の編集)
協会は、国内放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
1.公安及び善良な風俗を害しないこと。
2.政治的に公平であること。
3.報道は事実をまげないですること。
4.意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
憲法前文1項に謳われているとおり、日本国民は国政についての最高の意志決定権を行使出来る主権者であり、憲法制定権を有する。国会・内閣・裁判所などの権能は、何れも国民の信託に係るものである。つまり、国民は国家の統治について最高の地位にあり、国家の全ての権能の源泉となる権能を保持するものである。日本国の主権者は、総理でもない、閣僚でもない、国会議員でもない、裁判官でもない、勿論天皇でもない、我々日本国民一人一人が、主権者であることを忘れてはならない。
よって、主権者である国民は、あらゆる機会を通じて、内閣であれ、国会であれ、裁判所であれ、片時も監視の目を緩めてはいけない。少しでも憲法違反の疑いがあるような行動を採った場合には、直ちに之を止めさせなくてはならない。これは国民の権利であると同時に義務である。権利と義務とは、表裏一体をなすものであるから、権利の行使だけでは駄目である。義務の履行を怠ってはならない。
議会中心の民主政治を理想的に運用して行く根本は、国民の政治的自覚を高め、責任ある選挙によって議会の内容の向上をはかり、正しい世論をもって議会政治を督励・鞭撻・制御して行くほかにはない。
今般、NHKの放送番組改変問題について政治的な介入の疑惑が問題視されているが、もしも実質的な事前検閲に当たるが如き行為がなされておったとすれば、民主主義に対する重大な冒涜である。公共放送であるからには、国民の「知る権利」を恣意により抹殺するようなことは絶対に許されるべきではない。「千丈の堤も蟻の穴から崩れる」の例えのとおり、吾人は「知る権利」に対する侵害が、やがては思想・良心・信仰といった精神的自由に対する重大な侵害に発展する事を恐れなくてはならない。「知る権利」を守ることが出来るか否かは正に国民の政治的自覚の成長の有無に懸かっている。
ここに、民主主義は世論の政治であり、国民の政治参与の上に成立するものであるから、国民の政治的な判断能力を高めるためには、自由な討議が前提とされなければならない。勿論公共の福祉の制約があるが、その制約が慎重なものであるべきは当然である。放送法1条・3条は民放にも適用される条文であるが、公共放送であるNHKには更に44条を遵守させることで「知る権利」を厚く保護している。
よって、国民の疑惑を払拭して公共放送としての面目を取り戻すためには、宜しく、改変の要点を注記した改変前の番組を放送して、放送法44条3項各号に規定されている法律要件に照らして、改変が、正当性・必要性・妥当性を満たしたものであったか否かについて、国の主権者であり且つ受信者である国民諸賢の審判を仰ぐことが喫緊の課題である。更に、国民の政治的な判断能力を高めるためには格好の教育番組の放送であると思料される。よって、NHKは速やかに改変の要点を注記した改変前の番組を放送して、公共放送の面目を回復する必要がある。
つぎに、NHK放送受信料徴収の公平化は喫緊の課題であることについて論述する。NHK放送受信料徴収の不公平に対する不満は、民放開業以来燻り続けていた問題である。民放の社員で、NHK放送受信料を、商売敵のNHKに支払う者は皆無であったことは周知の事実である。今般の一連の不祥事を契機として不払い者の激増が予測されるが、このままではNHKの経営が苦しくなるのは必定である。受信料に係る潤沢な収入の上に安座して経営努力を怠り、漫然と今日まで怠惰の夢を貪ってきた当然の結果であり、国民の鉄槌が下るのも当然の事である。NHKは深く反省自戒して、職員の甘えと驕りを払拭し、今後の経営努力によってこの危機を乗り切る他はない。
よって、先ずNHK放送受信料徴収の公平化を担保することが喫緊の課題とされる。その方策としては例えば現在、株式会社WOWOWが実施しているように、「受信料を支払った者だけがデコーダ若しくはビーキャスカードを使って受信出来る」ようにするのも良策の一つではないかと思料される。民放化すべし等の提言もあるが、政府や企業の力に屈しない、視聴率に左右され難い、営利を目的としない公共放送の質の良さは万人の認めるところである。更に、放送法35条に謳われている「国際放送」や「放送に関する研究」のための全額国庫負担は今後も継続すべき必要があるので、民放化には賛成できない。消費税で運営した場合は国営放送となり、政治的なプロパガンダ放送になる虞があるのでやはり賛成できない。英国の公共放送BBC(英国放送協会)の「TVライセンス制度」は罰則を伴っているので憲法19条並びに「契約自由の原則」に違背するので勿論賛成できない。
ここに、NHKは総務省設置法によって設置された「特殊法人」である。その運営においては、法人税や固定資産税が免除され、国の財政投融資による資金調達が可能になるなどの特典を有しているが、反面、事業計画については国の承認が必要になる。
放送法35条に基づいて「放送に関する研究」は全額国費で賄われているのであるから、今日の格段に進歩した放送技術を駆使して、21世紀に相応しいスマートな且つ容易に不払い受信者を排除できるような簡単な装置を研究開発して、受信者の不満を払拭することは当然の責務である。受信料金不払いでNHK放送を受信する者を排除することで、受信料徴収の公平化を担保することは、国民の信頼を取り戻す第一歩となるであろう。このことは現在、不払い受信者宅の訪問徴収に従事している営業開発スタッフの活動経費、年間約600億円以上が節約できて経費の削減にも繋がる。
憲法21条の保障は放送というメディアによる表現の自由にも及ぶ。これを受けて放送法が立法された。民放放送のコマーシャルに辟易して、NHK放送を主体に受信している国民も相当数にのぼるものと思われる。NHKはこれ等受信者の付託に応えて、放送法3条の立法趣旨である「番組編成権の独立・放送番組編集の自由」の精神を踏まえて、不偏不党公平公正な報道に努めることで、国民の信頼を取り戻す必要があることは論を俟たない。なお、不偏不党公平公正な番組・内容であるかどうかは、受信者であり且つ国の主権者でもある良識ある国民諸賢自身が判断すべきことである。これが民主主義の原点である。
因みに、NHK放送を受信できるテレビ設置者は全てNHK放送を受信する意思ありとみなして、NHKとの受信契約締結を義務付けた放送法32条のみなし規定は、憲法19条に抵触する虞があり、更に「個人の契約関係は、契約当事者の自由な意思によって決定されるのであって、国家は干渉してはならない。」という近代私法の原則である「契約自由の原則」にも違背するものであり、基本的には民法90条により無効とされるべき条文である。
放送法32条が現行法の文言に改正された昭和42年当時のメディア環境下においては、テレビ設置者をNHK放送受信者と民放放送受信者とに判別して受信料を徴収することは技術的に不可能であったので、放送法32条は放送法1条1項の目的達成のための必要悪として是認された条文である。メディア関連技術の進歩発展は日進月歩で目を瞠るものがある。放送法1条1項の目的が達成され且つ情報の選択が多様化した今日のメディア環境下においては「受信料は、NHKが事業を行っていくための公的負担金である」との主張は認められない。更に、例えば、デコーダやビーキャスカードを使って容易に両者の判別が出来るようになった現在、法的には民法の所謂「事情変更の原則」が適用されることになる。
NHKは時代の進化に合わせて受信料徴収に係る新技術を開発して、総務大臣の認可を受け受信料徴収の公平化を図るべきであるにも拘わらずその努力を怠り、潤沢な収入の上に安座して、時代に適合しなくなり死文化して改正・削除されるべき放送法32条を未だに墨守して、膨大な人件費(600億円以上)を要する営業開発スタッフによる「徴収し易い受信者からだけ徴収して徴収し難い受信者からは徴収しない」という、非能率且つ不公平な訪問徴収を継続している。これは、民法の基本原則(民法1条)である信義誠実の原則に違背するものであり権利の濫用となる。条理上からも許される行為ではない。上述の理由により放送法32条に基づいてNHKが、「NHKを原告・受信料不払い者を被告」として損害賠償請求に係る民事訴訟を提起しても勝訴の見込みはない。
罰則の担保により受信料支払の義務を負っている英国国民が、公共放送BBC(英国放送協会)に絶大な信頼を寄せている理由は、英国国民が「BBCが真実を国民に伝えるためには、たとえ相手が政府であっても、報道の自由を守るために毅然として戦う姿勢」を高く評価しているからに他ならない。権力に阿る姿勢が見受けられるNHKは、経営委員会の独立性の強化もさる事ながら、BBCの公共放送としての報道哲学を範として反省自戒すべきである。よって、NHK経営陣の更迭と経営倫理の意識改革が強く求められる所以である。
因みに、1980年代には、フォークランド紛争、北アイルランド紛争を取り扱った番組を巡り、サッチャー政権と対立したこと。更に、英国は2004年3月、同盟国米国と共に対イラク戦争に踏み切ったが、開戦の理由とされた「イラクは45分間で大量破壊兵器を配備できる」とした情報に係る英国政府の情報操作疑惑問題の報道についても、BBCはブレア政権と激しく対立したこと。そして何れも世界の話題となったことは周知の事実である。
政府や企業の力に屈しない、視聴率に左右され難い、営利を目的としない質の良い公共放送の存在は、万人の希求するところである。NHKは今般の一連の不祥事を契機に、速やかに受信料徴収の公平化が担保できる、21世紀に相応しい世界の公共放送の範となるべき徴収方法を、研究開発して実行するべきである。加えて、あらゆる権力に屈することなく不偏不党公平公正な報道に努めるならば、必ずや日本国内のテレビ設置者の殆どをNHKの受信者とすることが出来るであろう。
(本稿2005.02.)
http://www12.bb-west.ne.jp/matuoka/
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