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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120206-00000302-kinyobi-pol
二〇一一年一二月、国会で承認されたヨルダンとの原子力協定が来月七日に発効する。同国への原発輸出の準備が整うかたちだ。だが福島第一原発事故を受けて、ヨルダンでは原発建設を懸念する声が少なくない。一月一六日、来日したヨルダンの国会議員らが東京・水道橋で行なわれた「緊急集会『原発? No, thank you!』ヨルダンの国会議員・弁護士は訴える」で「原発はいらない」と訴えた。集会の主催はミーダーン(パレスチナ・対話のための広場)。
発言したのは、国会議員で下院エネルギー委員長のジャマール・ガッモー氏と、同じく国会議員で保健・環境委員長のモオタシム・アワームレ氏、弁護士のムナ・マハメラー氏の三人。一月一四日に神奈川・横浜市で開催された「脱原発世界会議」に合わせ来日した。
ジャマール氏は「住む場所を失った人々が、置き去りにされた家畜、福島の原発事故の被害を目の当たりにして、このような悲惨なことは世界のどこで起きてもいけないと感じた」と強調した。
計画では、ヨルダン北部のマジダルに一〇〇万キロワット級の原発一基を建設するとされている。だが、マジダルは首都アンマンから四〇キロの第二の都市で、工業の中心地であるザルカからはわずか一五キロ。国の人口の三分の一が集中する地域に原発を建てようというのだ。もし福島レベルの事故が起きれば、ヨルダンは文字通り国家崩壊の危機にさらされる。モオタシム氏も、「ヨルダンは、トルコから紅海に至る断層の上に位置している。つい五年程前にもマグニチュード六の地震が発生した。地震による原発の影響が心配だ」と懸念を露わにした。
事故発生の懸念材料はまだある。ヨルダンは「世界で最も水資源の乏しい国」(ムナ氏)であり、原発の運転に必要な冷却水が「十分な供給源がなく確保できない」(ジャマール氏)。そのため、計画では原発近隣の下水処理施設の処理水を、冷却用に使う予定だ。
だが、緊急時の冷却水のストックはわずか一五日分にすぎず、「もし事故が発生すれば、とても足りない」(モオタシム氏)という。福島第一原発事故では海水を投入して原子炉を冷却したが、内陸地で大きな河川が周囲にないマジダルでは、何らかの原因で下水処理施設から冷却水が供給されなくなった場合、事実上、原子炉を冷却できなくなるのである。
中東という地域特有のリスクもある。「一九八一年、イスラエルはIAEA(国際原子力機関)が『平和利用』と認めたイラクのオシラク原子炉を空爆した。ヨルダンでも同じことが起きないという保証はない」(ムナ氏)。筆者はオシラク原子炉があったツワイサを取材したことがあるが、住民たちは「イスラエルの空爆後、健康被害が頻発している」と訴えていた。
ヨルダンが原発を建設しようとする背景には、原油や天然ガスの九六%を外国に依存するという事情がある。「イラク戦争以前、ヨルダンはイラクから石油を非常に安く輸入できた。しかし、フセイン政権崩壊後、代替戦略が必要になってきた」(ジャマール氏)。
だが、原発だけが解決策ではないとムナ氏は強調する。「ヨルダンは一年のうち三〇〇日が晴天で太陽エネルギーは豊富。地域によっては毎秒九メートルの風が吹くなど、風力発電も有望でしょう。ヨルダン政府と上院議会(議席数六〇)は、原発を推進していますが、下院議会(議席数一二〇)では議員の八割が反対するなど、むしろ反原発が多数派なのです」。
ヨルダンへの原発輸出をめぐっては、昨年八月、「環境・持続社会」研究センターの田辺有輝氏が衆院外務委員会の参考人質疑でその問題点を指摘。民主党内にも慎重論が出たが、指摘された問題点が改善されないまま、政府は原発輸出を進めている。
こうした日本の姿勢にムナ氏から苦言が呈された。
「もし日本政府がヨルダンに原発を輸出すれば、ヒロシマ・ナガサキの惨劇に同情してきたヨルダン人の日本へのイメージが変わるだろう。日本の皆さんには、ぜひ日本政府に原子力協定を取り下げる運動をしていただきたい」
(志葉怜・ジャーナリスト、1月27日号)
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