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”空気”と”忘却”のなせる業 沖縄米軍基地、放射能内部被ばく、KYと云う雰囲気に包まれて
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2012年02月06日 世相を斬る あいば達也
最近、筆者は多くのKYなコラムを書いたり、周囲の人に論争を仕掛け、益々嫌われ者と云うか、煙たがられている。正直、そう云う空気が心地いいので、特に不満はない。主に男に対して行う行動なので、女性に嫌われる事はあまりない。(笑)
本土人が忘れたふりしている沖縄の米軍基地問題が久しぶりでスポットを浴びている。宜野湾市長選と絡めて、10日間程度はマスメディアもそれなりに報道するに違いないが、その後は再び梨の礫と云う事だろう。山本七平の空気の研究ではないが、日本人が営む共同体においては、この空気感が、その構成員である人々に、ただならぬ行動動機を与えてしまうようだ。この空気の醸成過程、或いはその変異は、複合的作用の連鎖で起きるようだ。まだ誰もこのメカニズムを明確に立証している学者はいないが、山本の指摘は明らかに当たっている。
この空気に、人間の脳の忘却の原理が絡んでくると、一層話は複雑になる。歴史を振り返る時に起きる、心理学においてはトラウマからの脱却が有為だ。“脳の忘却”が時に人間の平安に非常に役立つとも言える。“見て見ぬふりをする”とか、“聞かなかった事にする”とか、色んなシーンで我々人間は“脳の忘却”を期待する。福島原発事故における、周辺住民の放射能影響への恐怖(トラウマ)も、10か月を経て、多くのプロパガンダ情報に接するとか、国家や福島県行政の火消し誘導政策に接し、“みんなで、放射能被曝を忘れよう。そして、元気に明日の福島を再生させようと云う空気が満ちてきはじめているようだ。
たった10ヶ月で、放射能被曝で死んだ人はいない、だからこれからも大丈夫。この心理を、無知と嗤うのも気が引ける。内部被ばくの方はどうなのだ?等と語りかける事が、地元ではKYと呼ばれる状況になっているそうだ。気に怖ろしき事だが、それが人間なのだろう。“脳の忘却”がないと、息苦しくて日々の呼吸すら苦しくなるのかもしれない。
最近読んだ本に「トラウマの声を聞く―共同体の記憶と歴史の未来【下河辺 美知子著】」がある。
その内容紹介:≪語れば語るほど、戦争の本質は見えなくなっていく。それは言葉が足りないからでも、洞察力の不足でもない。言葉を重ねるその裏に、共同体のトラウマが潜伏しているからだ。
身体に受けた傷を意味した「トラウマ」という言葉を、フロイトは「心の傷」として、精神医学の用語に転用した。トラウマ記憶は、出来事が起きている最中に は記憶として登録されず、時を経てから症状として回帰する。この不思議なメカニズムは個人の心にのみ起こることなのだろうか。
本書はトラウマ概念を起点にして、国家や共同体が抱えもつ、集団のトラウマへと考察を広げていく。戦争、核、ジェノサイド……それらは歴史にどのように書き込まれ、忘却され、そして回帰するのだろうか。フロイト『モーセと一神教』、メルヴィル『白鯨』などのテクストを縦横に論じながら、共同体に潜在するト ラウマの根深さに迫っていく。
精神分析の知見を現代を考える思考の道具として使い、批評の新たな地平を拓こうとする本書は、今起きている戦争をなおも忘れようとする世界への切迫した メッセージである。≫とあるが、この辺にも「空気」の醸成の秘密が隠されているのかもしれない。
筆者などは、明日への活力の為に“嫌なことは忘れるけど、時には嫌なことは愉しんでやる”なんて偏屈もいるわけだが、多くの場合忘れようと努力する。この心理が共同体自体にも伝播し、曰く言い難い「空気」と云うモノが、如何にも神の手に導かれたように誕生し、生育してしまうのだろうと思っている。
またまた横路に逸れてしまった!(笑)沖縄米軍基地問題だった。マスメディア全体に流れている潮流は、普天間基地移転と米海兵隊移転問題は分離され、“普天間基地固定化”の可能性が高くなった。これも鳩山由紀夫の迷走が元凶だ、と云う感じになってきている。
筆者は普天間基地が固定化されるとは思っていない。“なにも決められない日本”かもしれないが、敵失と云うモノもある。所謂オウン・ゴールと云うのだ。アメリカの拠って立つ表立ったシンボルは民主主義と人権だろう?あの普天間基地がどれ程周辺住民の人権を無視しているか、事実が判れば、その人権の蹂躙はブーメランのような効果を現す。ここで不用意な事件の一つでも起きると仮定してみよう、もう人権無視の米軍と云う流れは変えられなくなる。守るべきターゲットが一つになっただけ、沖縄県民は有利になった。
田中直紀防衛大臣を日本中が馬鹿にしているようだが、案外沖縄防衛局長の更迭を決められなかった事が功を奏する可能性もある。以下の宜野湾市長選の間中、件の真部朗沖縄防衛局長がヌクヌクと居座る。伊波洋一氏への積極的投票行動を後押しする可能性もあるだろう。佐喜真淳氏への投票誘導を画策した局長の居座りは、それなりのインパクトがあると読んでいる。頑張れ!沖縄の人々だ。
≪ 佐喜真、伊波両氏の争い=普天間問題が焦点−宜野湾市長選告示
米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市の市長選が5日告示され、届け出を締め切った結果、新人で前県議の佐喜真淳氏(47)=自民、公明、改革推薦=と、元市長の伊波洋一氏(60)=共産、社民、沖縄社会大衆推薦=の無所属2人による争いが確定した。投開票は12日。 普天間飛行場の移設問題が焦点だが、両氏ともに県外移設を打ち出している。日米合意に基づき、同飛行場の名護市辺野古への移設を目指している政府は対応に苦慮しそうだ。
また、市長選の告示を控えて、防衛省の真部朗沖縄防衛局長が講話で職員に投票を呼び掛けていた 問題が発覚。両陣営から「十分な政策論争ができない」と反発の声が上がるなど、選挙戦に影響を及ぼしている。
佐喜真氏はかつて条件付きで同県 名護市辺野古への移設を容認していたが、今回の市長選では県外移設を訴える。伊波氏は県外にとどまらず国外への移設を主張するとともに、日米安保条約の見 直しも求めている。
市長選は、前市長の病気療養による辞職に伴い実施される。民主党県連は、普天間問題で県連内部の調整が付かず自主投票を決めている。≫(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012020500123
本土の普天間移設報道などは信用に値しない。沖縄の時価の声を聞いておく方が少なくとも読売・産経の記事よりは現状の真実に近づく。昨日に続いて沖縄タイムスの記事も参考に掲載しておく。
≪ 崩れた日米合意 県内首長、歓迎と懸念
【名護・中部】米国防総省が、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設断念の意向を水面下で議会側に伝達していたことについて、名護市議会の比嘉祐一議長は「報道が事実なら、辺野古移設にこだわっているのは日本政府ということになる。政府は県民の民意を受け止め、日米合意を見直すべきだ」と訴えた。
日米合意が事実上見直されることに、本島中部の首長は一様に歓迎。ただ、同飛行場の固定化や嘉手納統合案が今後浮上する可能性もあり「固定化や県内移設だけは絶対に許されない」と強調した。
比嘉議長は「2年前の名護市長選で、移設に反対する稲嶺進市長が誕生し、大きな県民世論のうねりをつくり、米側を動かすきっかけになった」と市長選勝利の意義を指摘。稲嶺市長が6日から訪米を予定していることに「報道は追い風になり、訪米の効果は高まるだろう。市長には沖縄現状をしっかり伝えてきてほしい」と述べた。
同飛行場がある宜野湾市の米須清栄副市長は「辺野古断念とは、すごい話だ」と驚いた様子。「断念イコール固定化ではなく、米国は速やかに普天間を閉鎖し、海外の分散移転を探るべきだ。日本政府は米国と再協議するべきで、危険性の下で暮らす宜野湾市民を置き去りにすることはあってはならぬ。固定化ではあまりにも単純で無責任」と政府にくぎを刺した。
嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の東門美津子沖縄市長も「事実であれば、辺野古移設の断念は大歓迎だ」と喜んだ。ただ、普天間飛行場の固定化や嘉手納統合案などが浮上する可能性については「普天間の固定化も統合案も絶対に許されない」と指摘した。その上で「県民の願いは県内移設反対。日米両政府が、普天間の機能を必要とするならば、県外に移設するべきだ」と訴えた。 普天間移設 膠着の15年 米軍普天間飛行場の返還を求める声が日米両政府を動かしたのは、1995年の米兵3人による暴行事件 の発生が契機となった。
県内でのかつてない反米軍基地の機運を受け、橋本龍太郎首相(当時)とモンデール駐日米大使(同)は 翌年4月に普天間の全面返還で合意。ただし、同等の機能を持つ新たな施設の提供が条件となっていた。
移設先を名護市辺野古とすることを盛り込んだ沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告書の実行で日米が合意したのが96年12月。SACO合意にはほかに嘉手納より南の施設・区域返還などが盛り込まれ、これが移設と基地負担軽減が「パッケージ」 となるものとなり、その後15年にわたる普天間問題膠着の原因ともなった。
政府はようやく2007年に環境影響評価手続きにこぎ着けた。09年には「最低でも県外」への移設を 訴えた民主党が政権を獲得し、県民の移設先見直しへの期待が高まったが、10年5月に結局辺野古へ回帰する日米合意をしたことで県内世論は沸騰。両政府は、昨年末の未明の評価書提出などその後も県民の反発を収める材料を見いだせないまま、歳出削減を目指す米議会主導で普天間移設の見直しが進んでいた。≫(沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-02-04_29426/
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