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野田佳彦政権がいよいよ迷走状態になってきた。ここへきて混乱の種になっているのは、年金改革の試算公表と防衛省・沖縄防衛局長の講話、それに東日本大震災と東京電力・福島第一原発事故をめぐる政府会議の議事録未作成という3つの問題である。年金試算については藤村修官房長官が野党の追及を受けて、新たに試算し直した結果を3月中に公表する方針をいったん示した。ところが、党内から反発の声が上がると、その日のうちに「時間がかかる」と軌道修正する始末だ。
沖縄防衛局長の講話問題は局長処分で乗り切ろうとしたものの、党内からも「いずれ更迭は避けられない」が出ている。議事録問題はさらに深刻だ。岡田克也副総理は「議事概要」の作成でお茶を濁そうとしているが、こちらは公文書管理法というれっきとした法律違反の疑いがある。野田首相は消費税引き上げを訴え、国会開会前は「参院で法案が通らなかったら、どうなるか」などと恫喝まがいのセリフを吐いて強気で攻めていた。
ところが、ねじれ国会の現実に直面すると結局、行政改革や衆院定数是正のような重たい案件を避けて通れなくなった。そこへ降って沸いたように、持ち上がった3つの問題である。ひと言で言えば、国会論戦の第一カーブに入ったばかりというのに、政権自体が勝手にあちこちで自損事故を起こしている格好だ。この調子だと野党は相手の足下をみて、行政改革も衆院定数是正も話が進まないだろう。
とても、その先の消費税引き上げどころではないような雰囲気になっている。先の3つの問題は無関係であるように見えて、いずれも民主党政権につきまとうガバナンス(統治)の危うさを象徴している。年金試算はもともと昨年3月、党の「社会保障と税の抜本改革調査会」幹部だった仙谷由人や古川元久らが厚生労働省に依頼して作成したものだ。結果が大増税だったので「お蔵入り」と決めたはずだが、メディアに大きく報じられると、輿石東幹事長や岡田克也副総理が公表に前向きな姿勢を示した。
ところが「それでは目先の増税が危うくなる」という慎重論が高まると「やっぱり出さない」という話になる。それで徹底すればいいものを「試算がなくて議論が出来るか」と批判されると「やっぱり出す」と二転三転した。なぜ、こうなったか。元をただせば結局、自分たちが最初に公約した「消費税を財源とする最低保障年金」と財務省が悲願とする「社会保障改革を理由にした消費増税」という似て非なる2つの考え方について、自分たち自身でしっかりと論点を整理できていなかったためだ。
ずばり言えば、財務省とすれば増税さえできれば、最低保障年金などどうなってもかまわない。だから、必要な財源論など厚労省まかせで適当にお茶を濁しておけばよかった。党が「試算が欲しい」というなら「厚労省に注文すれば」という程度の話だったのだ。そうは言っても、最低保障年金はいったん党が公約に掲げた旗だから、ほおっておくわけにもいかない。そこでとりあえず「こっそり厚労省に頼んでみるか」という展開だった。だから、大部分の議員は試算の存在も知らないのだ。
問題があきらかになった後も、もともと政権を背後で動かしている財務省がグリップしていた話ではないから、政権幹部たちが勝手に「公表する」とか「しない」とか喋る始末で、てんでばらばらになってしまった。万事に用意周到な財務省とすれば、上手の手から水が漏れた形だ。完全な誤算である。
沖縄防衛局長の講話問題もがっくりだろう。最初に国会で取り上げて、問題をあかるみに出したのは共産党だ。いかにも共産党らしい「スクープ」だが、こちらもその後の対応がお粗末だ。局長自身が「法律違反の可能性を承知していた」と白状しているのだから、なんとも救えない。問題が長引けば、田中直樹防衛相の責任問題に飛び火するのは必至だ。
大震災の議事録未作成問題は根が深い。というのは、およそあらゆる政府の会議で議事録が作成されていなかったとしても、その大本になる官僚の「手書き議事メモ」がないという事態は考えられないからだ。世間では「議事録がない」となったら「会議の内容がまったく分からなくなってしまった」と思われがちだが、そんなことはない。実は議事録がなくても、手書きの記録メモ自体はいまでも完璧に残っているはずなのだ。
どういうことか。あらゆる会議に出ている官僚の最重要な仕事は「メモをとる」ことといって過言ではない。なぜかといえば、そのメモをもとに役所が対処方針を決めるからだ。これは役職に関係ない。たとえ局長だろうと、自分1人しか出ていなければ、必死で最初から最後までメモをとる。
メモとりした官僚は直ちに自分の役所にとって返して、幹部たちに内容の詳細を報告する。どんな政治家がどんな発言をしたか。そこが分からなければ、議論が自分たちに都合の悪い展開になっていたとしても、巻き返しようがない。だから会議のメモとりは官僚の仕事の出発点といっていい。
かつて自民党政権時代、政権のもっとも重要な会議は経済財政諮問会議だった。総理が議長、経済財政担当相が司会役になって、ときどきの重要案件を議論した。テーブルに座れるのは閣僚と日銀総裁、それに民間議員だが、官僚たちも後ろの椅子に座ることができる。その貴重な椅子に財務省は総理秘書官と内閣官房副長官補、それに官房総括審議官の3人を送り込んでいた。とりわけ官房総括審議官の役割はメモとりである。通常、経済財政諮問会議の議論は当日の記者会見でしか外部には分からない。
4日後に議事録が公表される決まりだったが、財務省は官房総括審議官が手書きでとったメモを基に、その日のうちに対処方針を決めていたのである。この4日の差は決定的である。マスコミがおおまかな会見内容を基に記事を書いて「おしまい」としていた間に、財務省は次の手を考え政治家への根回しを始めていたのだ。
手書きメモには、公表される議事録には出ない重要事実が記されている場合もある。本当のやりとりは手書きメモでしか分からないといってもいい。議事録の未作成はたしかに見過ごせない重要問題である。だが、だからといって「会議自体の記録がない」という話ではない。官僚出身の岡田もそうと知っているからこそ、いまになって「議事概要を作れ」と指示しているのだ。
しかし議事概要ではだめだ。そんな簡略版では国民にとって見過ごせない政権の失態部分は伏せられるに決まっている。手書きメモは役所単位で作っている。野党はこれを機に、出席していた官僚たち全員がとっていたに違いない「手書きメモ」の公表こそ迫るべきだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31715
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