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橋下徹大阪市長を大阪のスタジオに迎え、1月29日深夜に『朝まで生テレビ』(テレビ朝日系)を行った。橋下さんが目指す大阪とは何か、大阪都構想にはどんな問題があるかなどについて、6人の有識者に鋭く切り込んでもらうのが番組の狙いだった。
「大阪のコミュニティーは失われない」と橋下氏
しかし議論の結果は、有識者が橋下さんを困惑させるどころか、橋下さんのほうがはるかに優勢だった。これまでも多くの文化人や学者が議論を挑んできたが、いずれも橋下さんが楽勝という印象である。
橋下さんは大阪都構想を進めようとしている。大阪府と大阪市の二重行政には無駄が多い。たとえば水道事業一つとっても府と市の両方が管理している。こうした二重行政を一本化して無駄を省くのが大阪都構想だ。
現在の大阪市の24区を解消し、8〜9の特別区(自治区)にして区長公選を行うという。そして、大阪市をなくす。これに対して反対する人たちの意見は、大阪都構想によって大阪市がばらばらになり、コミュニティーが失われると主張する。
橋下さんは東京都を例に出して反論する。東京都も以前は東京府と東京市に分かれていて、東京市が解消され23区ができたが、コミュニティーは失われずに残っていると言う。
さまざまな改革を行う橋下氏を「ハシズム」と批判
橋下さんはまた、公務員を「身分」から「職業」に変えようとしている。一般企業では不況だとリストラがあり、従業員の数が減らされる。失敗すれば降職や減俸もあるが、公務員の場合はそうではない。定年まで身分が保障され、定年後は天下りもある。公務員は「職業」ではなくひとつの「身分」になっているというのだ。橋下さんはこれを「職業」に変えようとしている。
三つめは教育の問題である。今、公立教育の権限を持っているのは教育委員会である。大阪市で言えば市の教育委員会だが、教育委員は一種の名誉職であって機能していない。実際には教育委員会の事務局が強い権限を握っている。
私は以前、長崎市の教育委員会に招かれて講演で行ったことがある。そのとき佐世保市にも行った。その頃、長崎では女の子が幼児を突き落として死亡させるという事件が起きた。その後、佐世保では小学6年の女子児童が同級生をカッターナイフで切りつけて死亡させる事件があった。
私はこの二つの事件について、長崎市と佐世保市の教育委員会が話し合いをしないのかと聞いたが、「そんなことは考えていない」という返事だった。この一件で、教育委員とは単なる名誉職であることを強く実感した。
橋下さんは特別区ごとに教育委員会を置き、区長や知事が関与できるようにするとも言っているが、これに対しても「ファシズムだ」、あるいはそれをもじって「ハシズムだ」と橋下さんは批判される。
反対するだけで、対案を出せない弱さ
橋下さんに批判的な多くの文化人や学者は議論すると負けてしまう。なぜだろうか。私は番組を通じてこのことを考えてみた。
日本のインテリは基本的にまだ「左派」の影響が強い。インテリほど選挙では野党に投票する。昔なら社会党、共産党に票を入れるか、あるいは選挙に行かない。要するに体制が嫌いなのだ。そしてメディアも、体制をウオッチして批判することがジャーナリズムだと思い込んでいる。ここまではよい。
しかし討論の際、相手の批判を受けて橋下さんが「では、あなたならどうしますか」と問うと、対案が出てこないのである。日本の与党を批判する野党が、与党から「では、あなたならどうするか」と問われると対案が出てこないのと同じ構造だ。
いま民主党が消費税増税をしようとしているが、社民党や共産党は反対する。国の借金が1000兆円にもなり、「これ以上増やしてよいのか」と問うと、社民党や共産党は「予算を削ればよい」と答える。「福祉や医療などの予算を削ることにつながるが、それでもよいのか」と問うと、それにも反対する。なんと野党になった自民党までが反対している。
こうしたことが日本のインテリに共通する弱さである。「では、どうするのか」に対する答えを用意していないのである。
日本の本当の権力者は中曽根康弘首相まで
私も長い間、権力者を批判すれば新しいアイデアは出てくるものとばかり思っていた。しかし今の日本の権力者からは、批判してもアイデアは出てこない。しっかりとした体制というものがなくなったからだと最近になって気がついた。
日本の最後の「体制」とは、中曽根康弘氏だった。中曽根さんまでの歴代首相は本当の権力者であり、こちらがいくら批判してもそれに対する答えが出てきた。
アメリカであれば、オバマ大統領が登場したとき、彼は明確なメッセージと政策を打ち出した。アメリカは力で世界を抑え、「世界の警察」としてイラク戦争やアフガン戦争を戦ってきたが、軍事力で世界を抑えるのはもはや無理だとして、これからは「対話」が必要だと訴えた。
また、ブッシュ大統領が推し進めた新自由主義の経済政策により、米金融界は歯止めなき自由を得た。世界大恐慌の際にできたグラス・スティーガル法は銀行業務と証券業務の分離を定めたものだが、これが1999年に廃止されたのを契機に、金融の自由化が一気に進められた。その行き着いた先は米金融界の強欲な経営で、それがリーマンショックへとつながる。このため、オバマ氏は金融規制改革に乗り出した。
さらに貧富の格差もなくそうとした。アメリカでは1980年頃までは経営者と社員の所得格差が30倍くらいだったが、その後約300倍にも拡大している。オバマ氏はこうした格差をなくすと訴えた
橋下氏は新しい権力と体制をつくろうとしている
では日本はどうか。菅直人氏にしても野田佳彦氏にしても、自分ならどうするといった具体策がない。結局のところ、自分が日本を改革していくためのリーダー、権力者であるという意識が希薄なのだ。
リーダーの意識が失われている日本の政治の世界で、橋下さんは「新しい権力をつくろう」「新しい体制をつくろう」と考えているのだと思う。
日本のインテリの欠陥は、話し合いを重ねても、その後の決断と実行がないことだ。橋下さんは、話し合いをしたうえで決断、実行すると言っている。
その「決める政治」に対して、日本の文化人たちは「ハシズム」と批判する。橋下さんとインテリの間にズレが生じているのである
橋下氏は石原慎太郎氏と本当に組むのか?
さて政治の世界では、橋下さんを中心にして政界再編を図る動きが見られる。問題は橋下さんが今後組もうとしている相手で、それは東京都知事の石原慎太郎氏だと思う。
すでに大阪と名古屋の間では、名古屋市長の河村たかし氏、愛知県知事の大村秀章氏と組むことになっているのを私は両者から聞いている。だが、大阪と名古屋だけでは日本は変わらない。ここに東京が組むことで日本は変わるかもしれないのだ。
だが石原さんは「憲法を改正して軍隊を持ち、日本は核武装すべき」という考えの持ち主である。そんな石原さんと橋下さんはどう組んでいくのか。とても興味深いところである。
田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。1987年から「朝まで生テレビ!」、1989年からスタートした「サンデープロジェクト」のキャスターを務める。新しいスタイルのテレビ・ジャーナリズムを作りあげたとして、1998年、ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。また、オピニオン誌「オフレコ!」を責任編集。2002年4月に母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生たちの指導にあたっている。著作に『なぜ日本は「大東亜戦争」を戦ったのか』(PHP研究所)、『原子力戦争』(ちくま文庫)、『ドキュメント東京電力』(文春文庫)、『誰もが書かなかった日本の戦争』(ポプラ社)など多数。
Twitterのアカウント: @namatahara
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