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JBPressに掲載されている「日本の成長率を下げても増税したい財務省 竹中平蔵・慶応大学教授インタビュー(下)」より:
インタビュー全体は、新自由主義的経済政策のオウム返し的処方箋や“小泉元首相賛美”に彩られたもので紹介に値するものとは思っていないが、大手メディアの目にあまる「世論誘導」に係わる内容があるので引用させていただく。
「竹中 ひとつにはメディアがちゃんと勉強していません。先日もこの4年で歳出が15兆円増えたことを知ってるかと聞いたら、そうなんですか・・・ですよ。思考が停止しています。財務省の周到な根回しもある。みんな丸め込まれています。
しかし国民には妙な直感があるんですよね。先日、税の問題を取り上げたNHKスペシャルに出たんですけど、視聴者が寄せた電話とファクス、1万1000本の99%が増税に反対だったというんです。
川嶋 世論調査の結果と違う。新聞の方は捏造している可能性もありそうです。
竹中 財務省のメディアに対する攻勢はものすごいですからね。さっきお話しした「Voice」の論文が世に出たら、かなり攻撃されると思いますよ。
川嶋 ジャーナリズムは官僚ベッタリですからね。」
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日本の成長率を下げても増税したい財務省
竹中平蔵・慶応大学教授インタビュー(下)
2012.01.31(火)
昨日に引き続き、最近『日本大災害の教訓―複合危機とリスク管理』を出版した竹中平蔵氏へのインタビューをお送りする。
法人税減税、規制緩和・・・当たり前のことをやれば日本経済は強くなる
川嶋 経済をよくすればいいというお話でしたが、どうすればよくなりますか。
竹中 当たり前のことを当たり前にやればいいんです。小泉内閣が終わった2006年9月末、日本の株価は1万6000円でしたが、今はその半分です。
この3年間、世界の株価はどう動いたかというと米国は39%の上昇、ドイツ、英国すら25%ほど上がりました。
日本だけが異常なのは、異常なことをやっているからです。
典型が雇用調整給付金。本来ならリストラして、別の成長産業に行ってもらうべき人を会社に抱え込ませたりしたら、経済全体が弱くなるに決まっています。
モラトリアム法もそう。金融機関は中小企業が抱える借金の返済猶予にほとんど無条件で応じないといけません。今やそうしたケースが100万件も積み上がっていますから、不良債権予備軍は1.5倍になったと言われています。
そして労働規制です。労働者派遣を禁じることで、雇用をしにくくしている。海外に出ていく企業が増えるのも当然でしょう。
こういう日本経済を弱くする政策をやめて、強くすることをすればいい。具体的には法人税を下げる、規制緩和するといったことです。そういう普通のことをやれば日本はすぐに強くなります。技術があり資本があり人材もいるんですから。
川嶋 今の円高についてはどうご覧になっているのでしょう。
竹中 これは誤解されているんですけど、為替は米ドルとの関係だけでなく、ほかの通貨も考慮した実質実効為替レートで判断する必要があります。
1995年に1ドル=79円をつけたことがありますが、これを今のレートに当てはめると55円くらいになる。当時と比べれば、今の水準はそれほど円高じゃないってことです。なのにそう感じるのは、産業の競争力が弱まったせいです。
官僚は「国のため」より自分たちの影響力の最大化を優先する
川嶋 日本経済がなかなかいい方向に進まないのは、官僚が足を引っ張っているという部分もあるのでは?
竹中 そうですね。例えば13兆円の税収不足というのは、財務省が弾き出した数字です。
注目すべきは名目成長率を1%として計算していること。今、米国も英国も財政再建のためのプランを立てていますが、前提としている名目成長率は米国が3.5%、英国は5.3%です。
この数字が1%も違えば、将来の見込み税収は全く変わってきます。つまり、あえて1%に抑えたことには税収を低く見積もることで増税の必要性を印象づけようという狙いがある。
だいたい民主党政権は一方で成長戦略というのを作っていて、そこでは名目3%以上を目指すと言っているんですけどね。
いずれにしてもシナリオは全部、財務官僚が書いていると思われます。普通の経済学の常識を持っている人なら、めちゃくちゃだと分かります。
川嶋 財務官僚だって日本人です。日本経済を立て直さないと彼らも困るはずなのに。
竹中 日本のことを考える以上に、自分たちの影響力を最大化することを重視するのが官僚というものです。
彼らの一番の望みは、大きな財布を作ってそれをいっぱいにすること。財布が大きければ使えるお金が増え、大きな影響力を行使できます。財布が大きくても赤字では困るので、増税に熱心なわけです。
勉強不足のマスコミを丸め込む財務省の周到さ
川嶋 メディアの責任も重い。
竹中 ひとつにはメディアがちゃんと勉強していません。先日もこの4年で歳出が15兆円増えたことを知ってるかと聞いたら、そうなんですか・・・ですよ。思考が停止しています。財務省の周到な根回しもある。みんな丸め込まれています。
しかし国民には妙な直感があるんですよね。先日、税の問題を取り上げたNHKスペシャルに出たんですけど、視聴者が寄せた電話とファクス、1万1000本の99%が増税に反対だったというんです。
川嶋 世論調査の結果と違う。新聞の方は捏造している可能性もありそうです。
竹中 財務省のメディアに対する攻勢はものすごいですからね。さっきお話しした「Voice」の論文が世に出たら、かなり攻撃されると思いますよ。
川嶋 ジャーナリズムは官僚ベッタリですからね。
竹中 大臣をやっているときなど、いつ寝首を掻かれるか分からないとよく不安になりました。そういうときには小伝馬町の十思公園に行ったものです。
ここには吉田松陰の辞世の句「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」が刻まれた碑があります。
自分の命は終わることになっても国を思う心はここに留めおこうという意味ですが、不思議と気が楽になったものです。本当に命懸けだった松陰の時代と違って、今はせいぜいクビになるだけのことじゃないかと。
「金持ちを貧乏人にしても、貧乏人は金持ちにならない」
川嶋 再び政界に戻られることはないのでしょうか。
竹中 私は5年5カ月も大臣をやりました。ひとりの人間が国の中枢にいる期間としては、十分長いと思っています。
政府の中にいたとき、怖いと思うことがありました。政府には権力があるということもそうですが、仕事をしているといろんな人と貸し借りができるのも怖かった。そういう貸し借りに縛られて、いざというときに本来やるべきことをできなくなったりするんです。
だから、権力の中枢に同じ人が長くとどまるのは、よくありません。出ていく人をきちっと評価した上で、絶えず入れ替えるということこそが民主主義の活力源です。しかし、いま政界にいる人の多くは、しがらみでがんじがらめになっています。
川嶋 一方で大衆には媚びる。口を開けば、言語明瞭意味不明・・・。
竹中 全くです。その点、英国の政治家は良い言葉を残しています。
サッチャーは「金持ちを貧乏人にしたところで貧乏人が金持ちになるわけではない」と言いました。格差をどうこう言っても仕方がないってことですね。貧困はなくさないといけませんが、成功した人を妬んだり嫉んだりというのはさもしい。
チャーチルの言葉で印象的なのは「成長はすべての矛盾を覆い隠す」。あと「真の悪徳企業は儲けている会社ではなく、損を出している会社である」とも言いました。後者は、資源を費やしながら利益を産まない営みの無駄を衝いた言葉です。
川嶋 深いですね。
小泉純一郎が「本物の政治家」である理由
竹中 こういうことを言えるリーダーが、日本には小泉(純一郎・元首相)さん以降いません。思うに彼は本物の政治家です。まず、政治とはバトルだということを知っている。
何か新しいことをやろうとすると、それまでいい思いをしてきた人が必ず反対します。利害のことですから、そこは話し合ってもしょうがない。力でねじ伏せるしかありません。彼はそれを徹底していました。
一方、前回の参議院選挙のとき、小泉さんはほかの人の応援はすべて断ったのに、ただ1人だけのために2回も演説しました。誰かといえば、猪口邦子さんです。
総理だった小泉さんは、彼女を無理矢理引っ張り出した。だから小泉さんは今回も応援に立ったわけです。
川嶋 橋下(徹)大阪市長が人気を集めているのも、小泉さんのような政治家が現れない閉塞状況と無縁ではないでしょう。
竹中 今のような状態で普通起きることは、軍事政権になるか、独裁者が現れるかです。
橋下人気は独裁者志向の1つの表れだと思いますよ。もうなんでもいいからちゃんとやってくれ、という感じ。ただ、まだそこまでじゃない。なんだかんだと言いながら、日本は豊かで居心地のいい国ですから。
川嶋 私の周りの人もみんなそう言うんですよ。今がハッピーなんだから何も変えたくないんだと。
竹中 日本は社会と経済の基盤がものすごくしっかりしている。だからこそリーダーが不在でもこんなに豊かなんですよ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34337
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