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── 野田政権は二〇一四年四月に八%、一五年一〇月に一〇%へ消費税率を引き上げることを骨子とする「税と社会保障の一体改革」の素案をまとめたが、政権に対する支持率は急速に低下している。 ── 消費税増税に賛成しているのは、マネー資本主義で既得権を得ている勢力ということか。 ── 平野さんは、長年税制改革に関わってきた。 ─── マネー資本主義という病根による問題は、消費税増税だけではない。 もともと銀には、イオン(電荷を帯びた原子)になって飛び出しても、瞬時にもとの金属の状態に戻るという特異性がある。ナノ銀粒子では、このイオンから元の金属の状態に戻る現象が極端に短い周期で繰り返され、このときに電気的パルスが発生する。この力を利用して放射性物質を軽減させることができるという研究が行われているのだ。 ─── 今後の政局はどうなっていくのか。
「マネー資本主義という病根」政治評論家 平野貞夫
転載許可
平野貞夫氏 (画像は、「月刊日本編集部ブログ」より転載)
マネー資本主義という病根
平野 私は、いま日本を覆っている閉塞感は一つの大きな病根が原因となっていると考えている。それは、既得権益を維持しようとする政治家、官僚、学者、マスコミが、世界的に破綻しつつあるマネー資本主義を、なおも維持しようと躍起になっていることだ。
「所有欲」と「存在欲求」は資本主義の発展を促したが、やがてマネー資本主義は格差と恨みと堕落の国家社会をもたらした。我々は、「共に生き共に幸せになろう」という共生の価値観に基づいて、国民の生活を第一にする市場経済社会を創造しなければ生きていけない。マネー資本主義に代わる新たな資本主義の在り方を模索しなければならないということだ。それは、西洋近代の価値観に基づいた経済システムを転換しようという試みでもある。まさに現在起きている問題は、文明の在り方をめぐる対立と結びついているのだ。
世界恐慌の危機に直面した現在、しかも大震災という千年に一度の災害、さらに原発事故で苦しむわが国で、国民を苦しめる消費税増税案を成立させようなどというのは、狂気の沙汰だ。マネー資本主義に毒された政治家、官僚、大企業、マスコミの暴走にほかならない。
民主党は、政権交代した総選挙のマニフェストで「任期中の四年間、消費税は増税しない」と国民に約束したはずだ。それを反故にし、裏切るには余程の理由付けが必要だが、麻生自公政権と同じ説明しかしていない。
彼らは、橋本政権時代の平成九年に消費税を五%に上げたときの教訓を全く学んでいないのだ。この増税は、金融危機と重なり、国民生活を苦しめ、自殺者を増やしただけではない。期待した総税収も減った。
消費税に頼らなくても財源を確保する方法はいくらでもある。高橋洋一氏は、企業がごまかして、社会保険料が年金機構に入っていない問題、所得税脱税の捕捉、「インボイス方式」を採用していない消費税の徴収漏れなど、「税の不公正徴収」の是正によって、約二〇兆円の増収になると指摘している。
いま消費税増税推進派は、消費税増税案が成立しないと、ヘッジファンドが空売りを仕掛け、日本の国債が暴落するなどという理屈をこねているが、本来政府がやるべきことは、空売りが行われないように適切な規制をすることだ。財務省も民主党もマネー資本主義の論理を前提とした思考に陥っているのだ。
平野 大企業が消費税増税を支持しているのは、それが自らの利益に合致するからに過ぎない。輸出で利益を上げている大企業は、輸出戻し税制度によって消費税が還付され、大きな利益を得ている。ところが、下請け企業や仕入れ先が納付した消費税は還付されない。輸出で利益を上げている大企業は、国民生活を顧みることなく、自分の利益のために消費税増税に賛成しているのである。
マスコミが消費税に賛成するのも、それが彼らの利益になるからだ。そもそも新聞には消費税がかからない。不況の深刻化で民間の広告費が激減する中で、ここ数年、政府広報費など政府や自治体の広報費が増加している。消費税増税によって、広告費に回せる政府の財源が増えることを彼らは期待しているのだ。つまり、現在の日本の巨大メディアは、「社会の木鐸」という役割を放棄し、自らの利益に沿った主張をしている。
そもそも、いまの財務官僚や政治家は政治体制の根幹に関わる税制を安易に論じ過ぎている。一九世紀イギリスの政治学者ウォルター・バジョットが「税制の根本は政治制度を規定する」と述べている通り、税制改革とは政治の在り方そのもの、政治思想そのものの変革なのだ。
戦後、GHQによって税制改革(シャウプ勧告)が進められたが、これは直接税に重きを置くものだった。経済成長したわが国の税制を、公平で公正とするために、間接税の整備が必要となることは当初からわかっていた。竹下内閣に至るまで歴代内閣は、消費税がなぜ必要か、時間をかけてコンセンサスを得ることに務めてきた。当時の大蔵官僚も、税制が政治体制の根幹に関わることだということを理解していた。ところが、いまの財務官僚は全くこのことがわかっていない。
消費税導入と行財政改革はセットだった
平野 昭和四八年五月に前尾繁三郎氏が衆議院議長に就任し、私は議長秘書を務めるようになった。そのときから、私は消費税問題に関わるようになった。
前尾議長は大蔵官僚で、敗戦から占領時代に大蔵省主税局長を務めていた。前尾議長は「一般消費税導入論者」で、私は毎日消費税の必要性について聞かされていた。昭和四八年秋には、与野党国対委員長を伴って、西欧諸国の議会制度や国会運営の調査に行ったが、前尾議長が最も熱心に調査したのは消費税の実態であった。
大平首相は、昭和五四年九月に行われた衆議院総選挙で「消費税の導入」を自民党の公約としたが、これは前尾氏の要請によるものだったのだ。このとき、前尾氏が私に話してくれたことは、(一)法人所得税による財源確保が、国際化によるタックスヘイブン(税避難)で困難になっている、(二)社会保障費が増大しており、直接税による増収は限界である、(三)日本の税制の基本は占領下のシャープ勧告にあり、豊かな社会になり個人消費が経済に大きなウエイトを占めるようになった──の三点であった。
ところが、「消費税の導入」は極めて評判が悪く、大平首相は「消費税導入」の公約を撤回してしまった。その後、中曽根内閣が国民を騙し、昭和六二年の第一〇八回通常国会に「売上税法案」を提出したが、結局これも廃案となった。そして、各党間での「税制改革協議会」で抜本的改革について報告書をまとめた。
結局、消費税制度は平成元年四月に竹下内閣の時代に施行されたわけだが、竹下首相は消費税を国民に理解してもらうため、自ら消費税に対する「六つの懸念」(@逆進性、A不公平感、B低所得者への加重負担、C税率引上げの容易さ、D事務負担の増加、E物価の引上げ〈便乗値上げ〉 )を提示、その後さらに、「商品価格に転嫁できるか」、「消費者が負担した税が確実に納付される保証があるのか」、「地方税の減収により地方財政運営に支障が出るのではないか」──の三つの懸念を提示した。
そして、消費税法案を審議中の昭和六三年一〇月には「行財政改革の推進」について政府の基本方針を決定していた。その冒頭で、「来るべき二一世紀の経済社会を展望し、『活力ある福祉社会の建設』と『国際社会への積極的貢献』を目指し、行財政改革を推進することは、現下の国政上の最重要課題である」と宣言している。消費税の導入と行財政改革はセットであったのだ。
つまり、税制改革には、歴史観に基づく高度な政治判断が必要なのだ。西欧諸国で高税率の消費税が実施されているのは、政治や行政が非常に健全で、国民の信頼性も高く、特に公正公平の税制が機能しているからだ。この条件を整えなければ消費税率を上げることはできない。
竹下首相はまた、「財政の赤字を理由に税率を上げる癖がつくと国は潰れる」と警告していた。「税率引上げの容易さ」に乗じて税率を上げれば、国民生活をどん底に落とすことになる。抜本的行財政改革を断行し、赤字の原因を治癒することが先だ。政権交代で、民主党は「予算の組替え」で一六兆八〇〇〇億円の行財政改革を断行すると公約した。私はこれに期待したが、財務省振付けの「テレビ仕分け」で茶を濁し、本格的行財政改革は頓挫した。
急激に変化する二一世紀の世界で「国民の生活が第一」の国家社会をつくるため、今まさに税制改革をするべき歴史的必然性がある。しかし、野田首相を狂わせている財務省は、二〇世紀の資本主義の古い福祉社会を前提としている。
既得権が放射線除染技術の可能性を摘み取る
平野 この病根は、福島原発事故で放射性物質に汚染された土壌や水の除染にも見られる。政府は二〇一二年度予算案で、災害廃棄物の処理や原発事故被災地の除染などに三兆二五〇〇億円の予算を組み、除染モデル事業は日本原子力研究開発機構が担う。問題は、同機構が再委託する共同企業体の幹事会社に、大成建設、鹿島、大林組といったゼネコンが入っていることだ。経済産業省資源エネルギー庁の資料では、この三社は、全国全五十七基の原子炉建屋の建設実績でも、そのベスト3を占めている。これに対しては、焼け太りだとの批判も出ている。
しかも、既得権を掘る官僚、科学者の理論に基づいて除染は進められようとしている。例えば、現在進められている除染は、「セシウムの分解はできない」という前提に基づいて進められているのだ。だが、この前提自体に問題があるという理論を提唱している人もいる。
板橋区ホタル生態環境館の阿部宣男氏は、「ナノ純銀粒子」によって放射性物質を除去できると主張している。
阿部氏は、昨年十二月十日に、福島県郡山市エムポリアム並木幼稚園で、ナノ銀等を使用した放射能除染試験を実施し、その効果を実証している。ナノ銀担持骨炭などを入れた濾過装置に、放射能で汚染された水を通過させて濾過したところ、三万二一〇〇ベクレル (セシウム134とセシウム137の合計)だった水が、三回の濾過で三一七〇ベクレルまで低下し、さらに.一カ月後には四八五ベクレルにまで低下した。
つまり、放射性物質の電気的エネルギーと、ナノ純銀粒子の電気的エネルギーが衝突して、放射線エネルギーが、熱エネルギーや光エネルギーなど、無害なエネルギーに変換していると推測されている。
もちろん、この仮説は実証されたわけではなく、さらなる研究の余地がある。ところが、日本原子力研究開発機構はこうした研究を受けつけようとしない。彼らの言い分は化学方程式によって説明できないから研究として認められないというものだ。放射線除染という未開拓の分野の研究をこのような形で阻害すべきではない。既得権を持っている科学者、官僚、企業が、新たな可能性のある有望な研究の芽を摘み取っているとしか思えない。
ここに、わが国の深刻な病根があるのだ。
「小沢問題」はマネー資本主義の信奉者が仕掛けた平野 「小沢問題」の発端は、彼が主張する「自立と共生−国民の生活が第一」の「共生国家の建設」を容認できないマネー資本主義の信奉者によって仕掛けられたものだと私は見ている。平成二一年三月一日、私は千葉県知事選拳の関係で、森英介法務大臣(当時)に会った。
このとき森法相は同席していた堂本知事に「平成になって、日本の政治を混乱させ破壊したのは民主党代表の小沢一郎ですよ。悪い政治家で、それを手伝ったのが平野さんですよ」という趣旨の話をした。西松事件に絡めて大久保秘書が逮捕されたのは、その二日後のことだった。
次に狙われたのが、石井一副代表の「郵政不正事件」だった。だが、村木厚子厚労省局長の逮捕、起訴がデッチあげということが判明し、検察の信用は地に墜ちた。
結局、民主党への政権交代は実現したが、その後も守旧派勢力は小沢改革を阻止するために、水谷建設の裏金話を政治資金の虚偽記載と結びつけて犯罪をデツチあげようとしたのではないか。検察は小沢氏を不起訴としたが、検察審査会が強制起訴した。菅政権の有力閣僚が第五検察審査会の補助弁護人の選任に関わり、小沢氏の強制起訴の伏線を敷いたとの情報もある。政治権力と司法権力の談合疑惑も究明されなければならない重大問題だ。
昨年九月二六日には、東京地裁の登石郁郎裁判長が、陸山会をめぐる政治資金規正法違反事件で、虚偽記載罪に問われた元秘書三人に対して、それぞれ有罪の判決を言い渡したが、検察が背景事情として説明した「水谷建設からの裏金一億円」について、証拠に基づく実証が全くなく、状況証拠に推定に推定を重ねて、事実として認足したのだ。これは、憲法の原理を崩壊させる重大な問題だ。私は登石部郎裁判官の罷免の訴追を請求した。
マネー資本主義を維持しようとする勢力とそれに代わる新たな資本主義を目指す勢力との激しい戦いが、いま繰り広げられていると見なければならない。
平野 民主党議員のうち、すでに一四〇名ほどの議員が増税に反対の姿勢を示しているが、世論の動向を見極めている議員も少なくない。今後さらに支持率が低下すれば、野田総理は増税を断念するかもしれない。
もし強行すれば、増税反対派は国民のために決断するかもしれない。そして、民主党以外の増税反対派と連携するだろう。今年がマネー資本主義に対する姿勢をめぐって新たな政界再編の始まりの年となる可能性もある。
(聞き手・構成 坪内隆彦)
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