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一体改革が抱えるもう1つの不安 政治と労組と公務員…安逸の連鎖が改革を止める 日経ビジネス民主、自民が触れたがらない“傷
http://www.asyura2.com/12/senkyo125/msg/273.html
投稿者 gikou89 日時 2012 年 1 月 24 日 00:48:44: xbuVR8gI6Txyk
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120119/226313/?bv_ru

これほど分かりにくい「対立」というものはないのではないか――。

 年替わり6人目の宰相、野田佳彦首相のクビをも左右しかねない社会保障と税の一体改革。消費税を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げ、財政再建を進めるとともに、年金の受給資格期間短縮や、パート労働者の厚生年金、企業健康保険組合への加入拡大など社会保障の機能維持、強化を図るとするが、これほどの大改革の帰趨を決めるカギが今は肝心の中身にない。

 国民に負担を強いるなら政と官がまず身を切るべき、というわけで「衆院議員定数の80議席削減」に「公務員人件費削減など行政改革」を間に置いた与野党にらみ合いの構図の成り行きこそがカギなのだが、これがなんとも見えにくい。

 ことに分かりにくいのが公務員人件費削減を巡る対立である。民主党は、東日本大震災の復興財源に充てる税外収入5兆円の一部として既に昨年6月、一般職国家公務員の給与を2012、2013年度の2年間、平均で7.8%引き下げる法案を提出している。

 これに対して自民、公明両党は、昨年9月の人事院勧告で示された公務員給与0.23%の引き下げを実施した上で一般職国家公務員の給与を平均7.8%引き下げるべきだと主張する。

 表から見れば、結局は7.8%の引き下げ。経済効果はほぼ同じに見える。しかし、細部にこそ真実は宿る。本当の対立点はそこにある。1つは、民主党が給与引き下げ法案と同時に、国家公務員に労働協約締結権を付与する法案を出したことであり、自民党がこれに反発したのは知られるところ。

民主、自民が触れたがらない“傷”
 もちろん、民主党が人事院勧告を待たず労働組合との交渉だけで公務員給与の“大幅”引き下げに踏み込んだのは「経済環境に応じ人事院勧告を超える給与引き下げが必要なことがある」(民主党の階猛・衆院議員)という理由もあるが、労組にとって労働基本権の獲得は多年の宿願であるのも事実。

 自民党側はだからこそ、人事院勧告を完全実施することで、従来と同じ仕組みの中で7.8%引き下げを行う形を取り、協約締結権付与を阻止しようとしたのである。

 だが、この対立の裏には、両者があまり触れたがらないもう1つの「細部」があった。

 給与構造改革の経過措置…と、こう言えば複雑そうだが、要するに自民党の小泉純一郎政権末期の2006年4月にも行われていた公務員給与改革がその「構造改革」である。民間に比べて高すぎると批判される公務員の給与を是正するために、国家公務員の基本給を4.8%削減するとしたものだ

ただし、給与の元になる俸給表は4.8%引き下げで書き換えたが、実際には2006年3月時点の給与水準は保障した。つまり、毎年の昇給で、俸給表上も給与が元の水準に戻るまで経過措置として補填をすることにしたのである。加えて「北海道・東北の民間賃金は低いが、東京は高い」といった地域間格差を公務員給与に反映させるために6段階の地域手当を設け、国家公務員の年功序列的な賃金カーブをフラット化する“改革”も5年間で実施するとした。

 ところが、経過措置だけは期限を付けなかったから、期間終了後もなお残った。デフレ不況で民間賃金が下落し、人事院勧告が引き下げになったりしたことも影響したが、「元の給与保障」を固守した結果である。

 やや長くなったが、これが今回の民主・自民両党の「対立」につながる。昨年の人事院勧告は、0.23%の引き下げと同時にこの経過措置を2013年4月1日で廃止するよう指摘したのだ。

 元々、人事院勧告を採用していない民主党は当然のようにこれに触れないが、自らも甘い改革を行ってきた自民党もここには声を潜める。ことに自民党は自ら播いた種を相手が刈り取らないからと非難するとすれば、それは頬被りというものだろう。

若手の昇給抑制で中高年の補填行う
 だが、当然ながら両党だけに問題があるわけではない。2006年度からの給与構造改革の経過措置は「若手公務員の昇給を抑えることで生み出した原資を中心に賄われた」(関係者)という。主に恩恵を受けるのは50代の中高年だが、組合員が多いのはこの年代であり、若手には相対的に少ない。

 地方公務員給与についても、直接の指導ができない国は、国家公務員の給与を引き下げることで影響を及ぼそうとしているが、どこまで国の動きに沿うかは、地方自治体と労組次第。しかし、「経過措置維持には、地方の公務員労組の強い意志がある」(同)と言われる。

 公務員と民間給与の格差是正に目を光らせる人事院はどうか。2006年の構造改革初年には、公務員と給与を比較する民間企業の規模を従来の「100人以上」から「50人以上」の中小企業に広げ、地域の賃金水準の実態をより正確に反映させるようにしたと言われた。加えて、今回は経過措置廃止に切り込みもしたが、異論がないわけではない。

 公務員制度改革に取り組み、経産省を退職せざるを得なくなった古賀茂明氏は「『50人以上』といっても、実際には企業単位ではなく、事業所の人数。結局、地方の大企業の出先も含まれるから本当の地方の賃金の実情を反映し切れているか疑問がある」と指摘する。

 日本の将来に重大な影響があると言っても過言ではない一体改革を巡る対立を細部に向かって穿っていけばいくほど、外からは見えないものが浮かび上がる。それは、様々な関係者の安逸の連鎖である
 

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