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●「間違って認識されている日銀独立性」(EJ第3223号)
2012年01月23日 :{Electronic Journal}
国会召集前に野田首相のとんでもない二枚舌街頭演説が発覚。
その要旨は次の通りです。URLで動画を試聴できます。
マニフェスト──イギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです。それがルールです。消費税1%分は2兆5000億円です。(中略) 消費税5%分のみなさんの税金に、天下り法人がぶら下がってるんです。シロアリがたかってるんです。それなのに、シロアリ退治しないで、今度は消費税引き上げるんですか?消費税の税収が20兆円になるなら、またシロアリがたかるかもしれません。鳩山(由紀夫元首相)さんが4年間消費税を引き上げないといったのは、そこなんです。シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。そこから始めなければ消費税を引き上げる話はおかしいんです。
──高橋洋一著「『日本』の解き方/480」/夕刊フジ
http://www.youtube.com/watch?v=PmwJ0DrsXNw&feature=youtube_gdata
新聞では「野田首相はブレない男である」と書いていますが、これをブレといわずして、何をブレというのでしょうか。
それはさておき、日本は早急に税収を増やす必要があります。
何しろ税収よりも赤字国債の額の方が多いという状況が続いているからです。増税主義者は、だからこそ増税が必要だというのですが、それをやるとかえって税収が減る恐れがあるのです。その歴史的事実は後で述べることにします。
それでは、どうすればこの事態を解決できるのでしょうか。
それははっきりしているのです。添付ファイルのグラフを見てください。これは、1981年度から2010年度までの30年間の名目GDPと所得税・法人税の対前年比の伸び率を示しているのです。GDPには、物価変動を考慮しない「名目GDP」とそれを考慮する「実質GDP」の2つがありますが、税収は名目GDPに大きな影響を受けるのです。
グラフを見ると、一見してわかることは、名目GDPと税収には明らかな相関があることです。名目GDPが前年度比で伸びれば税収が増加し、落ち込めば税収が減っていくことが確認できると思います。
したがって、政府が税収を上げる最も効果的な方法は、積極的な景気対策──それも中途半端な政策ではなく、クルーグマン教授のいうようにアグレッシブな財政拡張政策を講じてデフレからの脱却を果たし、景気を浮揚させることによって、名目GDPを増加させることが必要なのです。
本当は、東日本大震災の復旧・復興を軸にして、大胆にして緻密な計画によって景気回復を果たし、デフレからの脱却を実現できるのですが、現在の民主党内閣にはそんな力量はなく、デフレ期に増税(財政黒字策)をするという真逆の政策を前のめりに進めようとしているのです。
こういうことをいうと、現在の日本の世論からすると「そんなバカなことを」と袋叩きに遭う可能性があります。もう聞き飽きましたが、日本にはGDPの2倍の過大な政府負債残高があり、そんなことをすれば国債破綻するというものです。本当の事情を知らない多くの国民は、財務省と記者クラブメディア上げての増税キャンペーンを通じて、そう思い込まされているのです。
しかし、ここで大幅な消費増税を行うと、デフレは一層深刻化し、企業収益が減少して失業者が増加し、消費が落ちみ、結果としてかえって税収が減少してしまうのです。
ポール・クルーグマン教授は、日本に対して次のようにアドバイスしているのです。
日本は国家債務についてヒステリカルになりすぎない、ということです。(中略)歴史をみれば、借金を大幅に減らした国を見つけることができます。イギリスがそうです。過去200年のイギリスの国家債務とGDPの割合を見てください。いまの日本よりも高いときが、一時的にしろあったのです。しかし、デフォルトはしなかった。その状況を頑張って、切り抜けたのです。
──『Voice』/2012年2月号
日本の財務省と日銀は、日本経済をデフレから脱却させる力がないわけではないのです。やろうと思えばできるはずです。それなら、なぜやらないのでしょうか。
バフル崩壊から15年も経つのに、依然としてデフレから脱却できないというのは異常です。リーマンショックや欧州危機のさい、バランスシートを倍増させてまで、デフレにならないよう手を打ったFRBのバーナンキ議長のようなマクロ経済運営の積極さが日銀にないのは確かです。
日銀は2000年以降、物価上昇率を1〜0%になるよう巧妙にマクロ経済運営を行ってきています。これはデフレを容認し、その状態を維持し、コントロールしているように見えます。
ポール・クルーグマン教授は、日本に対してインフレ目標を勧めているのに、日本では日銀が真逆のデフレ・ターゲッティングをやっているように見えるのです。まさか財務省とともに増税環境を整えているわけでもないでしょうが、とにかく金融緩和策を異常なほど嫌うのです。そのため、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)などの資産買入れによる金融緩和策をやってアリバイ作りをしているのです。日銀は自分の庭を汚したくないというか、思い切りの良さがないのです。
クルーグマン教授は「日銀のやり方をスポイトで水を数滴たらすようなやり方」と批判しています。もし、民主党がデフレを本気で克服することを望んでいるなら、日銀に対して成果目標を求めるべきです。
── [財務省の正体/49]
自ら数値目標を挙げるわけでもないので、日銀には政策の失敗も成功もない。したがって、失敗の責任を追及されることもない。日銀はいわば政府の子会社で、政府が子会社に目標を指示するのは世界の常識だ。現行の日銀法では具体的な数値目標を政府が指示できないというのであれば、日銀法を改正すればいいだけのことである。それが国会でまともに議論されないのでは、政権も国会議員も、日銀官僚と財務官僚にいいようにやられているとしかいいようがない。
≪画像および関連情報≫
●日銀の独立性に関する高橋洋一氏の意見
日本では中央銀行の「独立性」に関して長らく誤った認識が続いており、いまも正されていない。中央銀行の「独立性」といった場合、「手段の独立性」と「目的の独立性」の2つがある。細かい金利の上げ下げといったところにまでは踏み込んではならない、つまり中央銀行の「手段の独立性」を侵してはならないというのが世界の考え方だ。ところが日本では、中央銀行は「目的の独立性」をも有しており、政府が一切口出ししてはならないという誤った解釈がまかり通ってきた。そのため日銀は自分たちのやりたいようにやっている。
高橋洋一著
『財務省の隠す650兆円の国民資産』/講談社刊
名目GDPと税収の伸び率
元記事リンク:http://electronic-journal.seesaa.net/article/247850549.html
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