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2012/01/22 2066号 (転送紹介歓迎)
[JCJふらっしゅ]
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◎ 情報支配への飽くなき執念――不気味な秘密保全法 ◎
思想調査の第一歩 相互監視強まる恐れ
高田昌幸
秘密保全法案が1月召集の通常国会に上程される見通しになってきた。法案の具体
的な条文は明らかになっていない。しかし「秘密保全のための法制の在り方に関する
有識者会議」が昨年8月にまとめた報告書を一読すれば、「情報支配」にかける権力
者のあくなき執念に身震いするはずだ。
「平成の治安維持法」の問題点は、こんな小さなスペースでは書ききれない。それ
ほどの悪法である。ここでは二つだけ指摘しておきたい。一つは法案自体が抱える問
題点についてである。
報告書が示す秘密保全法制の問題点は多岐に及ぶ。細部には言及しないが、「特別
秘密」を扱うかどうかを調査する「適正評価制度」を挙げるだけで法制の不気味さは
十二分に伝わると思う。
「適正評価」の中核は人物調査であり、国による思想調査の第一歩といってよい。
報告書によると、調査項目は(1)人定事項(氏名、生年月日、住所歴、国籍(帰
化情報を含む)、本籍、親族等)(2)学歴・職歴(3)我が国の利益を害する活動
(暴力的な政府転覆活動、外国情報機関による情報収集活動、テロリズム等)への関
与(4)外国への渡航歴(5)犯罪歴(6)懲戒処分歴(7)信用状態(8)薬物・
アルコールの影響(9)精神の問題に係る通院歴(10)秘密情報の取扱いに係る非
達歴、などを想定している。国の委託などを受けた民間企業も対象になるので、公務
員だけの話ではない。対象者本人だけでなく、配偶者なども含まれる。そして平たく
いえば、調査の権限は上司が持つ。
一方、報告書によれば、故意・過失による漏洩だけでなく、教唆、未遂、煽動など
も処罰の対象だ。最高刑は懲役10年だから、令状なしの緊急逮捕も可能である。
「取材した途端に逮捕」も冗談の世界ではない。
いいたいことの二つ目。
こういう法律ができると、必ず、「取り締まる側」と「取り締まられる側」ができ
る。この点は強調しても過ぎることはない。「協力」という名の密告も始まり、相互
監視の傾向が強まるだろう。おそらく社会のありようが根底から変わる。警察・検察
を軸とした権力機構はより強固になり、個人はますます踏みつぶされていくだろう。
こんな法律を成立させてはいけない。それに法律は改正される。改正を重ねて当初
とは全く違った内容・運用になることも珍しくない。治安維持法が猛威を振るったの
も、制定数年後に改正された後のことだった。
「反対の声をあげよう」といった、生やさしい動きでは足りない。日本新聞協会な
ども反対意見を出しているが、紙面はいかにも生ぬるい。それでも私は、現場の記者
には期待する。特に若いジャーナリストの諸君。こんな悪法は諸君のプライドが許さ
ないだろう。しつこく、くどいほど取材して、法案の問題点を暴き出してほしい。
(ジャーナリスト)
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」1月25日号(1面)
http://www.jcj.gr.jp/20120101men.pdf
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